クラス対抗戦③
第1章
24話
『これで、終わりだ「です!!』
ズゥゥゥィィィーーーーーーーーーキュュューーーン!!!!!!
影をも貫く光の柱が空を破り天から降り注ぐ。それはアレイスター目がけ一直線に落ちてくるのだった。
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「これくらいの攻撃で魔特待首席なんて、名乗れ無いですよねやっぱ!!」
光の柱の中から何事も無かったかのようにアレイスターが姿を現す。魔力兵装を纏い光り輝いている。次第に光の柱も小さく縮小していきアレイスターの体に集まっていく。
「マギオン・ドレイン、魔法や魔力を吸収する。それを!!」
吸収した魔力が手に集まっていく。魔力量が膨大なアレイスターは自身の魔力として吸収する事は難しい。しかしその魔力を媒介に神器を生成する。
「な、なにが!!」
「私たち全員の魔法が、、」
魔力が大きな鍵の形へと変わっていく。それは黄金の輝きを放ち一目でこの世の物ではないと理解出来る。
「神鍵:アニマ!!!!」
叫んだ瞬間にアレイスターの魔力兵装は解けその魔力は鍵に集まる。色は段々と黒く暗く沈んでいき輝きを放っていた黄金の輝きは地獄の門へと続く闇の道のように陰る。
「な、なにが、何が起こってる?」
アレイスターは鍵を地面に向け落とす。すると地面が黒く染まり鍵はどんどんと沈んでいく。
『ワ、ワレヲ、ツ、ツカウノカ』
その深淵の囁きに俺は答える。
「神獣:デル・アニマ!!!」
地面に巨大な穴が空きその穴を基準に円環の様なものが広がっていく。空は夜よりも黒く染まり世界が深淵を覗く。
「ア、アレイスター!!何をしようとしているんだ!!」
異様性を感じとったメリナ先生が声を上げる。爆心地とも言える漆黒の大穴の近くに居る生徒達は放心状態で立ったまま失神している。
『マ、マス、ター、ワレ、ハ、カエルゾ』
「あぁ、その方が良さそうだな。ありがとう!」
門は閉じていき闇は晴れ明るくなっていく。元の空の色に元の大地。何もかもが嘘だったように修練場は始まりと同じ岩石地帯に変わる。
この一瞬、何が起きたか誰も理解が出来なかった。デル・アニマという神獣を呼び出す迄の異様な過程と魔力。そして召喚した際の世界に及ぼす影響。本体はその姿を見せる事無く去って行ったがその禍々しさは神とは程遠く正に言葉にするなら絶望そのもの。これは普通の神獣を召喚するのとは訳が違う。アレイスターの莫大な魔力と多種多様な魔力を織り交ぜて固く固く混ぜ合わせ無理矢理に融合させる事で『鍵』へと変貌させる。この形になればアレイスターと他の魔力はもう既にそこには無く『鍵』そのものの魔力に変わっている。これはただ『鍵』を召喚するのに必要な過程であり謂わば儀式とも言える。そしてその『鍵」を使用することで初めて召喚できる神獣。それがデル・アニマなのだ。
「(俺の能力だけじゃ押し切れなかった流石12年生と言うべきか。試しにアヴァロニアで召喚できない神獣を召喚してみたけどやり過ぎたかもしれないな。)」
「アレイスター!き、きみはいっ、いったい!」
「メリナ先生は距離も離れてらから意識があるんですね!」
俺はメリナ先生の方に飛んでいく。修練場の広さは〇〇ドーム2つ〜3つ分はある。しかしメリナ先生の声は魔法がなくても優にこの広さに響き渡る。
「な、何をしたんだ!さっきのは!」
メリナ先生が飛び込んでくる。顔を近付けて来るが興味津々という訳ではなく恐る恐るといった感じだ。何が起こっていたのか理解できなかったのはメリナ先生も例外では無かった。俺は先程起きた事の顛末を出来うる限り詳しく説明した。因みにこの1件以来俺はクラス対抗戦の出場禁止と緊急時以外の『鍵』の使用禁止を言い渡されるのであった。
〜1時間後〜
取り敢えず対抗戦を終えた俺は先生達の説教を受け大分絞られたのと対抗戦で動き回った事が重なって凄くお腹が空いていた。なので今はメリナ先生と2人で少し遅めの昼食に来ていた。俺にも何故メリナ先生と2人きりでご飯を食べに来ているのか分からない。学園にも勿論食堂はあるがメリナ先生もヴィヴィー・ランチに行った事が無いらしく今日は魔特待首席の特権を使いご飯デートという訳だ。
「アレイスター!ここがヴィヴィー・ランチか!確かに場所は分かりにくいが入り口付近まで長蛇の列だったな!それに凄く良い匂いだ!」
「ええ!僕も来るのは久々な気がしますし早く食べましょ!」
「そうだな!」
前回フィオラと来た時とは違う料理にしようとメニュー表を睨む。色々な種類の料理があるこのお店は本当に全て美味しい。だからこそ何を頼むか迷ってしまう、メリナ先生も初めてきた事もあり何を頼べばいいか分からずメニュー表と睨めっこしている。
「迷いますよね」
「あ、ああ。どれも美味しそうだ。」
「僕が前に来た時はこれ食べましたよ」
「ほう、確かに美味しそうだ。では私はこれにしよう!」
メリナ先生は前回俺が頼んだ「色香るヒゥーティング・シチュー」にするそうだ。まぁ所謂クリームシチューだが魔法世界の料理は一味違う。色香るとは正に言葉どうりで入ってる野菜やシチューまでも匂いという名の味がする。匂いでもお腹一杯になりそうなのだが料理を口に運ぶと先程まで感じていた満腹感は再び空腹感に支配される。つまり犯罪級の美味しさなのだ。
「アレイスターはどれにするんだ?」
「そうですね、僕はこの「煌びやかな摩天楼歩く貴婦人達のパルスズ・ビーフェ」ってやつにします!」
「す、すごい名前だな」
「気になってしょうがなくて笑」
ここの料理名は面白く更に美味しいときた。メニュー表は魔法を駆使した技術でどんな料理なのか見ることができる。しかもこのメニュー表から注文もできるのだ魔法って便利。
「じゃ、頼みますね!」
俺はメリナ先生と自分の分を頼むと少し談笑しながら料理を待った。
暫も経たない内に料理は目の前に出現する。運ばれて来る訳ではなく料理が完成した時点で転送されてくる。これは特殊な魔法陣を使いヴィヴィー・ランチ内限定で使える転送魔法らしくここでしか味わえない。
「うわぁ〜!何だこれは!すごくいい匂いだ!」
「これも見てくださいよ!先生!貴婦人が踊ってますよ!」
出てきた料理は本当にいい匂いで美味しそう。そして今回初めて頼んだ料理は視覚にも訴えてくるタイプらしく目に実際見えているのだ。
「早速、」
「はい、、頂きましょう」
俺たちの静かで盛大な昼食は食器が当たる音だけが歌うように混ざり合い言葉を使わなくてもソレが美味ある事を証明しているのであった。




