特訓の日々①
第1章
18話
身体の調子もすっかり良くなった俺は元の生活へと戻っていた。目覚めてから初めの方はフィオラや先生達が看病やお見舞い、身の回りの事を色々してくれていたが流石にずっと寝たきりで動かずに居るのも不安なので早急に1人の生活に戻り体を慣らしていた。
チュンチュンチュン
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜んあ」
大きな欠伸と伸びをして起床する。最近寝付きが良いのか悪いのかきまった鳥の鳴き声で目を覚ます事が多くなった。俺は顔を洗いまだ朝日が登り始める街を窓から見渡しながら服を着替える。
ガサガサガサ...バッ!
「よし、今日もいくか」
服を着替え俺は神杖ゼニスアルマを呼び出した。
「開け!召喚門!」
俺が声を出すと部屋の中に収まる普通の大きさの扉が出現する。それは丁度いいサイズ感ではあるが魔力が溢れ黄金の輝きを放っていて正しくいつもの召喚門である。
ギィィィ
黄金の扉が開く。中は白く光りその先に何があるか全く見る事ができない。俺はそこに躊躇うことなく足を踏み入れる。
シュ
~神獣達の住む世界:アヴァロニア~
ここは神獣達の住む世界アヴァロニア。召喚門を通らない限り決して来ることのできない神達の箱庭。その召喚門も普通の人間では絶対に通る事はできない。だが、ここに1人。理を超越した人間がいた。そうアレイスター・マグナである。彼は目覚めてすぐ新たな神獣と契約するべくあの時の経験を活かしこの世界に到達したのである。以前までは御伽噺や書物等で知った神獣を召喚門を使い新たに契約していたがそれには神獣の知識が必要になる。神獣達の名称や外見といった情報を知っていなければ新たに呼び出す事は出来ず契約には至れない。逆に言うと知ってさえいればどんな神獣とも契約できるということだ。そこで彼はこの世界に来る事を考えついた。神獣達が住んでいる世界にいけば契約し放題なのでは無いかと。そして現在.....
「ふぅ〜。何度来ても綺麗な場所だな〜。周りも魔力に満ちてるし空気もサイコー!」
ここに来るようになってもう1週間。あれから新たに6体の神獣と契約し計12体になった。俺の年齢では限界魔力総量的に後1.2体が限度らしくそれ以降は成長次第らしい。でも、日に日に魔力が増えていってる俺にその心配は無さそうだ。
「マスター、今日はどうなさいますか?」
リュシリオンが訊ねてくる。この世界の基本的なルールや常識は全てリュシリオンに頼っている。
「今日は昨日と同じで皆との連携、共有をやろう」
「了解しました」
アヴァロニアでは現実世界と違い魔力で世界が構築されているので魔力での攻撃では壊しても意味が無くやりたい放題できる。もちろん常識的な限度は弁えてるつもりだ。しかし、現実世界で特訓するよりは格段に良い。それに契約したばかりの神獣達を含め全召喚獣との連携、共有は外の世界では地図を書き換えないといけない可能性もあり更には街や人に影響がでる場合もあるので中々難しい。
「マスター、我々一同集結いたしました。」
「うん、みんないつもありがとう!今日もよろしく!」
召喚獣達との特訓は主にそれぞれの固有能力を俺自身が扱えるようになる事だ。外の世界に戻った時に召喚せずに召喚獣達の能力を全て使用したい。今のところ普通の状態なら1つ、魔力が服みたいになる(ここからは魔力兵装という)状態の時で最大3つ、魔力兵装+ゼニスアルマで5つといったところだ。これらの同時使用数の増加と能力の熟練度を上げることが今の最優先事項としている。
「あれから1週間程経ちましたが、マスターの成長速度はやはり異常ですね」
「皆の教え方が上手いんだよ」
体質のお陰もあってか召喚獣達の能力が体に馴染むのは早く完璧とまではいかなくてもある程度なら既に扱える。だが神獣クラスの魔法や能力は基本的な負担が通常魔法の非にならず集中力も保てずすぐにスタミナ切れするのが現状。この世界に溢れる一般的な魔法を使えた事がないので比較は出来ないが感じる体への倦怠感は半端じゃない。
「正直、私たち神獣の能力を同時に複数使用するなんて普通なら絶対できません。体も脳も普通の人間なら1つ能力を使うだけでも後の人生を棒に振る可能性さえあります」
「これもマスターが人外な魔力を保持しているからこそですね!」
「褒められてるのか貶されてるのか...ハハハ」
召喚獣達も増えてきて以前より賑やかになった気がする。最近はこっちの世界に入り浸る事も増え、みんなとも交流を深めることができている。
「よし、今朝はこれくらいでいいでしょう!」
「マスター学園に行かれるのですか?」
「あぁ!そろそろ時間だし」
学園に行く前にアヴァロニアに来るのが最近の日課である。だがこの世界には時計がないのと時間の進みが外より遅い事もありいつも何時なのか分からなくなる。だから気付いた時には帰るようにしている。一応直近でフィオラとの集合に2回遅れているのと学園も3回ほど遅刻している。しかし魔特待首席は授業に出なくても問題ないのでそちらの遅刻に関しては何の心配もない。
「じゃ、そろそろ行ってくるわ!」
「はい、マスターまた後ほど!」
俺は再び召喚門を開くと神獣達に見守られながら白い光の中へと入っていった。
一方その頃
〜アレイスターの部屋〜
「・・・・・・・・」
フィオラは1人アレイスターの帰りを待っているのだった。体調が良くなってから遅刻が増えたアレイスターを心配した彼女は部屋まで迎えにきてくれたのだ。しかし呼び出しても返事がないので中に入ったところ部屋には誰も居らず今こうして部屋の中で待っているのだ。
「アレイスター、何処に行ったのかしら?」
スゥゥ
「!!!!!」
突如として黄金に輝く扉が出現する。
「な、何これ!いや、コレってアレイスターの...」
ギィィィ
「あれ、フィオラどうしてここに?」
「ア、アレイスター!最近遅いなっと思って来てみたら何してるのよ!」
「ちょっとした朝練だよ、もっと強くなりたいからさ」
「だからって遅刻はダメじゃない!それに、教えてくれても良かったじゃない!」
「それは、ごめん。確かにそうだったね」
「もう!まぁ別にいいんだけど!」
「迎えに来てくれてありがとうフィオラ行こうか!」
「ちょ、ちょっとアレイスター!待ちなさいよ〜!」
俺はフィオラを抱え窓から飛びだし学園の方に向けて飛んでいくのだった。




