招かれざる客⑤
第1章
15話
「ハハハ!追い詰められてるのは果たしてどちらでしょうか!分かりませんね!そんな体でいつまで持つでしょう?」
戦闘がはじまり街中を飛び回る。フェイジーは魔法で攻撃しアレイスターがそれを躱す、避けるしている防戦一方状態。
フェイジーの魔法は大きな木の根っこや枝を鞭のよう使う植物の魔法と炎系の魔法。範囲も広く炎で植物を燃す事による弊害もあり非常に厄介だ。
「(確かにアイツの言う通り満身創痍もいいところ。左半身を魔力で補ってる分ゼニスアルマがあっても魔力がダダ漏れ状態。しかも、こっちに戻ってきてから痛覚が戻り始めてきた痛みで意識が飛びそうだ!)」
アレイスターは召喚門から戻ってきた事により痛覚を感じるようになっていた。その為左半身が無い痛みは想像もできない。
「私を逃がした方が懸命だったでしょうに!!」
フェイジーの攻撃は更に苛烈さを増し、広がる。幸いな事にディシディアダイアルの中では2人の時は止まっている為外部と遮断されている状態に近く街や人に被害が及ぶことは無い。しかしアレイスターの状態は非常に危険であった。左半身の欠損に加え召喚獣を召喚せずに能力を同時に2つ使用している今の状況に敵の予想外な強さ。彼は迷っていた。アレイスターは現在、召喚獣の能力を同時に3つまで使うことができる。1つは浮遊、2つ目はディシディア、そして3つ目に何を使うか。
「召喚獣を出してる暇はなさそうだな。オーディンの斬撃は時間停止が消える可能性があるし、エリュシオンは今の状態じゃ使えない。」
召喚獣が顕現し能力を使用する際、魔力は召喚獣から消費される。即ち召喚者が使用する魔力は召喚する時のみである。しかし、アレイスターの使う顕現させずに能力を使用する場合は術者本人の魔力が消費される。幾ら莫大な魔力といえど消滅魔法や左半身の欠損、そして能力の同時使用など大量の魔力を消費し続けながら戦闘するのには限界があった。
「一切魔力を使っていない私に対して虫の息で逃げ回るだけのハエ!こんなもの勝負にもなりません!」
「1発も攻撃当たってないのに?勝負にもなって無いのは俺のセリフな!」
負け惜しみのいい返しをしたところ突如として手に持もっていた神杖が光り始める。先程まであった痛みが嘘のように消え、体が凄く楽になる。その光は辺りを照らしフェイジーの魔法をも消し去っていく。
「きゅ、急に何が!!」
「ん?なんだ?これ?」
ゼニスアルマと俺の魔力が融合し魔力漏れが無くなり体の形が安定していく。杖は依然白く光り輝き止まっているはずの世界を照らす。
「そ、その!その杖はなんなんですか!!その杖が光出してから魔法が発動しない!なぜ!」
フェイジーはどうやら魔法を使えなくなっているらしく身振り手振りだけ大きく非常な滑稽に見える。静かな街並みは本当の意味で今、時が止まったのかもしれない。
「ん?そういえば力が...」
身体が楽になったと思いきや魔力が全て回復しているようだ。しかも神杖を持っているので今は全開放といえる。
「あ、なるほど。」
魔力が全開放されている今の現状、フェイジーは俺の放つ魔力の中に居る。だから魔法は使えないし消えたってことみたいだ。俺の帯びている魔力の中に居るという事は云わば水中でグラスに水を注ぐが如く無理な話。
「もう、終わりにしよう。お前だけじゃないみたいだしな」
魔力は全て戻ってきても体力が回復する訳ではない。それにもう1人の敵も居る。本当は体力を温存したかったが流石に生半可な相手ではなかった。俺よりも戦闘経験が圧倒的に豊富で洗練された魔法。こうなるともう1人の敵も同じくらいかそれ以上と考えた方が良いだろう。
「ユリオン様万歳!ユリオン様万歳!」
フェイジーは既に戦闘不能であった。壊れた機械のようにただひたすら同じ言葉を連呼する。
「グングニル!!!!」
俺は躊躇う事無くフェイジーの首をはねた。斬撃と首が飛ぶと同時にディシディア・ダイアルが解除される。時間は動き始めた。
バタッン!
首が消え胴体だけになったフェイジーの体が地面に伏せる。
止まっていた時間は再び動きだし人は居ないが喧騒が聞こえてきそうな雰囲気だ。
「あともう1人、ソイツは捕らえたい。」
フェイジーが口にしたゲィーターというのが恐らくもう1人の仲間の名前だろう。この学園都市内に潜んでいる事は間違いないだろうが問題は何処にどうやって隠れているかだ。
この学園都市内には結界が張られている為侵入者に普通なら気付かない筈がない。しかし現状フェイジー含めそのゲィーターという奴もこの学園都市内に潜んでいる。
コンッ
俺は杖の下で地面を小突き思い切り後ろへと振り払う様な動きをする。
「リュシリオン!!」
そう叫ぶと魔法陣が出現し中から光り輝く美しい竜が出現する。
「マスター、大丈夫ですか!」
「あぁ何とか。杖のお陰で魔力は全快したし左半身もこの通り安定してる」
「そうですか それは良かったです!で、どう致しましょう」
「あぁ。少し待ってくれ、今の状態なら多分、、、」
俺はそう言うと空に杖を掲げ魔力を注ぎ込む。
「開け!!!」
空に巨大な魔法陣が形成された次の瞬間アレイスターの周りに複数の魔法陣が出現する。
「リュシリオン!」
「はい、マスター!」
リュシリオンの魔力とゼニスアルマの魔力が共鳴し俺の魔力と融合していく。リュシリオンは光り輝き巨大な魔法陣と複数ある魔法陣も同時に光り輝く。
『神結界魔法:エルディオス・フロンテラ!!!』
リュシリオンが空に一気に駆け上がり大きく翼を開く。すると学園都市全体に大きな光の結界が出現した。出現といっても目で見えるものではなく魔力で感じ取れる。学園都市全体を包み込む光は全てを退け拒絶し否定する結界魔法。そしてアレイスターは自身の魔力をリュシリオンと融合する事によりその結界内に居る全ての人間を把握。自分に向けられる敵意や悪意、学園都市外からの異物感 違和感などを察知し敵を感知した。それと同時にアレイスターの契約している全ての召喚獣達が姿を現す。
「「「「「「マスター、何なりとご指示を」」」」」
「ああ、みんないつもありがとう!全召喚できる機会も滅多に無いし久々にみんなでド派手やろう!」
「「「「「「はい!畏まりましたマスター!」」」」」」
リュシリオン含め計6体。今契約している召喚獣達と今から敵を殲滅する。
「さぁ、いこうか!」




