第九話 鏖殺
日付が変わり、大遅刻での投稿になってしまいました。
読んで頂いている皆様にお詫びいたします。
申し訳ありませんでした。
主人公が2番目に選んだスキンは、動物の造形に定評のある造形職人の、ゲーム「エンカウンター」に最適化をした有償モデルで、南米の猫科の猛獣を模した「ジャガー」というスキンだった。サイズは頭胴長190cm、肩高80cm、尾長95cm、体重140kgで観測された最大の大きさのジャガーに概ね合わせてあった。因みに販売価格は35万円と高額モデルの先駆けとなっただけではなく、誰がゲームに登録しても本来ランダムに生えるはずの個有スキルが「隠蔽-極み-」「爪牙」「咆哮」が必ず生えるという高い精度を持つ初めてのモデルでもあり、高額でありながら、その高い隠蔽性能から購入するプレイヤーは少なく無かった。
スキンを「ジャガー」にチェンジした主人公は、スキル「隠蔽-極み-」の恩恵で誰にも見えず悟られない姿になりながらも、慎重に匍匐前進しながら接近して、易々と中央の棒火矢もどきの四角い塹壕陣地へと忍びこみ、早速攻撃を仕掛けてある者は噛み殺し、あるいは爪で切り裂きながら陣地内の兵士を蹂躙した。
兵士達は、つぎつぎと仲間が斃れるなか、この目に見えない敵に太刀打ちできず、陣地内の兵士200名と残り2つの円形塹壕陣地から増援で送り込まれていた2個ライフル小隊120名は、1時間と掛からず全員殺された。
そして、主人公は大きく咆哮すると、残りの2つの円形塹壕陣地に籠る兵士達は咆哮を聞くなり金縛りあったように動けなくなり、正気に戻る前に皆殺しにされたのだった。
山頂から、麓の陣地の異変に気付いた旅団長は、急遽、4個のライフル小隊と、1個の機関銃小隊の300名を麓に向かわせると、すぐに報告があり、四つの陣地は誰一人生き残りが無く、ひとつの陣地は全員刃物で殺され、残りの3つ陣地は噛み殺されたり、爪で切り裂かれたような死体が多く、まるで多数の猛獣に襲われたように見えると状況を伝えられた。
報告を受けた旅団長は、すぐに麓に降りた部隊に臨戦体制に入るように指示した後、後方で野営中の第3師団に報告すると同時に異常事態に落ちいっており、至急の増援を要請した。
麓に降りた部隊は、戦友達の遺体回収や清掃も出来ないままに、3個の円形塹壕陣地に入り攻撃体制をとった。(念の為に書くと、中央は2個ライフル小隊と2個機関銃分隊。左右はそれぞれ1個ライフル小隊に2個機関銃分隊に分かれた。)そして、前方6時方向の上空からバタバタバタと重い音とフィーンという甲高い音を周りに響かせながら何者かが現れた。
「ドラゴンだ!!」と言う叫びと同時に3つ陣地から銃撃が始まり、集中射撃を受けながらも平然とすべての弾丸を弾くその物体は、機首のターレット辺りにシャークマウスが描かれ、縦に並んだ2つのコクピットの中には人ではなく巨大な目玉がひとつずつ浮かび周りを睥睨し、胴体にはドラゴンの手足と鱗が全体にびっしりと描かれ、左右のスタブウイングにはコウモリの様な翼まで描かれた、1970年代にソ連で開発された攻撃ヘリコプター、ハインドDがホバリングしていた。
第3のスキンは航空機を得意とする造形職人がゲーム「エンカウンター」向けに最適化した有償モデルで、「弾薬類無限」「チタニウムの守り」「梟の目」と、3つの固有スキルを持っており、諸元はコクピットを除き実機と変わりなく、スタブウイングには片翼あたり3箇所のハードポイントがあり、今は57mm32連装ロケットランチャー×4(合計128発)と無線誘導型対戦車ミサイル4機を搭載していたが別途爆弾(最大500kg×2)などに変更も可能だった。
あっといまに3箇所の陣地は、機首ターレットの12.7mmガトリン砲とロケット弾数発で沈黙させられ、あとはゆったりと移動しながら山の表側に展開している部隊と山頂の砲兵陣地を麓の陣地と同様に殲滅すると山中のあちこちに潜伏している部隊も潰し、南に向けて飛び去っていった。
静かになった山中のあちらこちらで呻き声が微かに聞こえていたが、夜が明ける頃にはそれも聞こえなくなり、鳥達の盛んな鳴き声に取って代わっていった。
次回の投稿は「第10話 皇帝」となります。
今度は大遅刻しないよう明日の午後には投稿で出来るように頑張ります。