第四話 赤の将軍⓵
次々と山を駆け登って来る赤の兵士達。彼らの足元をよく見ると草に隠れてキチンと整備された馬と人が通れる程度の道が続いている。この様な道は、山全体で50本以上あり、攻撃や休憩が出来そうな小さな平地が無数にあった。これらは雑木などの自然を巧妙に使い麓からは見えない様になっている。
「ふむぅ?...。」
私は山の頂を見上げながら、サーチデータで、山の情報を見ると180mと割と低いが急勾配で、東西が予想値で6Kmと横に長い山だった。
「ひょっとして敵の足止めのためだけの山か?」
私は、裏山方向に向いて距離30Kmまで90度角の扇状にサーチした。
「サアリリングサーチサーティナインティー!」(意訳:周辺を距離30km、90度角の扇状に探査せよ!)
直ちに頭の中にサーチデータが表示される。
裏山から15km先の地点で三つの小規模な砦と、周りに無数の大型テントがあり、赤の兵士56000人が待機していた。
また、青揃いの軍方向に50kmのサーチを掛けると50Km先ギリギリの所に四斤山砲似の砲200門と25000人の兵士がゆっくりとロバに砲を引かせながら進軍してきていた。
「そう言えば、ここの通貨の単位がわからなかったな。」唐突に思い出したが、サーチデータに貨幣単位のデータが無かったのだ。
「まさか鉄砲や大砲を持ち出す様な連中が物々交換が主流な社会な訳はないよね。」
彼女にはわからなかったが、両軍は本当にお金は所持していなかった。じゃあ従軍商人や軍について来るエロいお姉さん達への支払いはどうなるの?と問えば、軍の主計さん達が、その都度ごとに購入した証明に、証書を発行し、定期的に商人達の本拠地に送り、そこで現金化され支払いにあてられていた。
また、兵士達が所持していたビタ銭や割銭は、サーチ魔法から金銭とは認識されなかったのだった。
「むむぅ...どうしようかなぁ」この後何処かの街に行きたい彼女は現地通貨が無いのは不安だったが、最悪ゲーム内通貨を遠国の通貨と偽って両替商に換金させるのも一つの手だなと、思い付くと最早気にしない事にした。
「さて、次は何をするか...。」
出来れば赤の軍の有力者と縁をつなぐとおもしろそうなのだが。
しばらく考えたが良い案が浮かばない。が、赤の兵士達を観察していると、皆汗まみれで水筒から水をがぶがぶ飲みながら走っている。
「ふむ、無料の給水所とか良さそうだな。」
私は赤の兵士達登る道先に丁度良い道沿いの平地を見つけ、隠蔽魔法をONにしたまま「フライ!!」(意訳:我が身を目的地まで飛ばせ。)と詠唱をして飛翔し平地に降り立ち、早速木質魔法で頑丈な大型のテーブルを五つ作成してならべ、更に土魔法で素焼きの大壺を30個作成して各個のテーブルの中央に1列3個づつを2列ならべた。また、テーブルの四方の空いた所に大量の素焼きのコップならべて、魔法で清水を生成しすべての大壺を清水でみたした。
そして、「ミミックイメージファイブフロントオート!!」(意訳:私の姿を写し取った擬像を5メート先に置き自動で活動させよ。)「セット6ディフェンス!!」(意訳:我が身に対する火水土電毒物理の攻撃を遮断せよ。)と大声で詠唱をして、魔法の発動確認してから背後の木々の中に身を隠した。