第三話 戦争
「ぁあ〜風が気持ちいい」
小高い山の中腹で腹這いになって、私は周辺のサーチデータを読んでいた。
「うぅん?、今まで聞こえていた喧騒は戦闘音?だいたい1000人くらいの単位の歩兵部隊同士の戦闘か。」
私は隠蔽魔法はONにしたまま山の麓が良く見える場所まで移動して、魔法の詠唱を行なった。
私は両腕で羽ばたくポージングしつつ、大きな声で「鷹の目!!」(意訳:我に鷹の視力をあたえよ!!。)と大声で詠唱をした。
(ちなみにゲームエンカウンターでは、ポージング+大声で魔法の効果が3.5倍になる仕様だった。なので戦闘中は叫び声で凄くうるさかった。ちなみにポージング単独では2.5倍、大声単独は2倍に魔法の威力が上がる。また、無詠唱は通常の威力でポージング&大声は使用できない。)
「おぉ、良く見えるぞー。」
私は麓で行われている戦闘に目を向けた。
サーチデータでは、兵はだいたいレベル5〜6、指揮官たちがレベル7〜9。戦場から離れたところにいる商人らしき連中はレベル2〜3くらいのようだ。
もし、商人達のレベルが一般人の平均ならば兵は鍛えられた正規兵だろう。
(繰り返しになるが、ゲームエンカウンターはプロの格闘家なら1レベルでも最高値100レベルを瞬殺することも可能だった。たとえレベルが低くても居合、空手、拳法、ボクシングなど鍛えられた技と力がVR空間で当たり前に発揮出来れば拳法や剣法などやったことなどない一般人プレイヤーなどは瞬殺が当たり前のゲームだったのだ。なので、兵たちを侮ることなどできないのであった。)
「ふむ、山の麓が近いほうが赤揃えの兵で相手は青揃えか。旗印は見覚えがないな。...」
と、突如青の陣から銃声がきこえる。
「パン!パパパパン!!」
「ぶぶーー、ぶぶーー」
「おお、ほとんど発射煙が見えない上に、高レートな機関銃もあるのか。」
赤の軍は前衛の数十人が一挙に倒されたが、その後ろは大型の盾を立てて弾丸を弾いている。
「うーん。鷹の目で見ると、赤の兵士達は落ち着いた表情だけど、青の兵士は必死な表情だな。赤の兵士が大型の盾を出すまではかなり好戦的な表情だったんだけど...。」
「ジャンジャンジャーン」
「ジャンジャンジャーン」
「ジャンジャンジャーン」
赤の陣営から銅羅の音が三度鳴ると、陣の中層の兵士から私のいる山に向かって走り出した。
「ふむ、威力偵察が成功したってことか。」
私は、駆け登って来る赤の兵士達を見詰めながら、この後どうするか思案しはじめた。