第一話 死と転移
拙い文章ですが、宜しくお願いします。なお、さきざきで、R15の表現が入ってくるとおもいます。
初夏のさわやかな風に洗濯物が揺れている。
いま、両親と俺の洗濯物を干した所だが、あとは便所の床にある汚物を始末しないと便所を使用することができない。
「疲れたなあ」パーソナルモビリティ(ホンダのuni_oneや、セグウェイがカテゴリにはいります。)を使用している下半身麻痺の俺にとって床の掃除は身体に負荷が掛かる嫌な作業だ。俯き腰を曲げながら、作業に集中する。パーソナルモビリティオプションの義手と、自分が手に持つ棒たわしと、塵取りで乾いてこびり付いた汚物を丁寧に取っていく。
同居の両親がボケ始めたのは、3年前からだっただろうか。20代の頃バイクで事故り下半身に麻痺が残った俺を仕事を出来るようになるまで支えてくれた両親。いまはもう、俺が誰かわかってないようで、両親が好感を持っていた親兄弟、友達や知人の名前で呼ばれ、60才近い一人息子の名前や存在はもう覚えていないように感じる。
「俺が下半身麻痺で散々苦労させたからなぁ」
思わず目頭が熱くなる。やはり苦労した事は早く忘れたいだろう?。
掃除を終えて、台所にもどる。
「あはは」「わはは」と、椅子の背もたれに身体あずけた母とテーブルに肘を付いた父がバラエティ番組を見て笑っている。
その様子を横目で見て「意味がわかって笑っているのかなぁ」と小声で呟きながら裏口に入り、ゴミ収集袋に汚物の入った袋をつめて、仕分けている燃えるゴミの段ボール箱に入れた。...
あとは、一、二階の掃除機がけで午前中の作業は終わりかな?鼻歌まじりに、さっさと終えて昼食の準備のために一階に戻った。
台所に入り食事の用意を始める。まあ、高齢者向けの宅食をチンするだけど。
振り返って父に声を掛ける。
「父さん、今日はひさびさぶりに風呂入るか。」
「ぁあん、昨日入った」
くっ!半年も風呂に入っていない癖に。また、風呂に入るか入らないかで喧嘩になるのか。今回は、便所で粗相をして手足が臭いから風呂に入って欲しいのだがなぁ。
「ま、今日は夕方には風呂を沸かすから入ってな。」
「へんっ!」
などと会話をしつつ食卓に昼めしをおいて、両親が座る椅子を食卓に向け直す。と、そのときだった、
「うん?なんか物が見にくい...」
急に動かなくなる両腕、ゆらめく視界と身体、そのままパーソナルモビリティの制御限界を超えて、まるで土下座をするような格好で前のめり倒れた。
ガツンとした衝撃、額と膝に痛みがはしる。
「うおったいうおにあ(いったいなにが)」
霞む思考の中でハッキリとした発語が出来ないことに加え、"脳内出血"のワードが頭の中を駆け巡る。
「おめえ、なにしてんだ。がははは。」
父さんの声が聞こえる。
たぶん、声を掛けるだけで何もできないだろう。たしかきょうのごごにケアマネさんが...
薄れゆく思考のなかで、ふと視線が下がると足元から光り輝く輪っかが身体を覆いつつ登ってくる。
まるで「VRMMORPG エンカウター」のキャラクターローディングのエフェクトみたいだなと思いながら暫く後、俺は息を引き取った。