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47、転移魔法陣と外門へ

「外門まで意外と距離がありそうですね……そういえば、どうやってこの場所まで私は運ばれたんですか? 王宮から脱出するのって、相当難易度が高いと思うのですが」


 王都近くの森を歩きながら不思議そうに首を傾げたマルティナに、ロランも同じような表情を浮かべる。


「それは俺も疑問に思ってたんだ。マルティナがいないことに気づいて魔法を使ったら、もう街の外にいたぞ」


 二人が顔を見合わせてからガザル王国の三人に視線を向けると、第三王子であるアディティア・ガザルが二人を見下すように口を開いた。


「お前らなんかに教えてやるわけねぇだろ」

「――そうか」


 するとロランが影を操って、ガザルの腕をぐいっと普通なら曲がらない方向に引っ張る。


「痛っ、ちょっ、や、止めろ! おい!」

「いや、お前が自分の立場を分かってないようだったからな」

「……くそっ、くそくそくそがっ!」


 それから何度か同じようなやり取りを繰り返し、ガザルは転移魔法陣のことを吐いた。そして付き人の内ポケットから出てきた折り畳まれた丈夫な布を開き、そこに描かれた転移魔法陣にマルティナが瞳を輝かせる。


「これがあれば、聖女召喚の魔法陣を復元できる可能性が高まります。……足りないのは、闇魔法だったのかもしれません」

「闇魔法、なのか?」


 マルティナが呟いた言葉に瞳を見開いたロランは、信じられない様子で口を開いた。


「はい。転移や召喚など別の場所と繋がりを作るような魔法は、闇属性の魔力によって実現できる探査のような魔法が必要みたいです」

「そうなのか……いや、でもそもそも魔法陣って、属性が関係ないんじゃなかったか?」

「それは魔法陣に込める魔力の属性は、なんでも問題ないという意味です。魔法陣はごく少量の魔力を人が流し込むと、後は自然魔力と呼ばれる空気中にあるエネルギーを使用して発動するんですが、その自然魔力を各種属性に変換するような仕組みになっているんです。その変換を、闇魔法に変換させる必要があるということですね」


 聖女召喚の魔法陣を完成させる突破口が見えたことでマルティナは興奮しているのか、早口でそう告げるとまた魔法陣をじっと見つめ始めた。


 そんなマルティナをじっと見つめながら、ロランは感慨深いような、僅かな嬉しさが滲んでいるような声音でポツリと呟く。


「……とりあえず、闇属性も役立つってことだな」


 少し頼りないその声音を聞いたマルティナは、顔を上げて力強く頷いた。


「はい。やっぱり闇属性が冷遇されている現状は、おかしいと思います」


 その言葉にふっと表情を緩めたロランはいつも通りの表情に戻り、マルティナの頭をぐしゃっと軽く撫でると歩く足を早めた。


「よしっ、早く戻るぞ」


 

 それからしばらく森を歩き、マルティナとロラン、そして捕えられているガザル王国の代表団三名は、問題なく王都の外門に辿り着いた。


 夜なので門は閉められているため、小さな通用口をノックする。基本的には夜の街への出入りは禁止されているのだが、大きな罰則などはなく、兵士に頼めば通用口を開けてもらえるのが暗黙の了解だ。


「すみません。通用口を開けてもらえますか?」


 ロランが声を掛けると中から兵士の応えがあり、すぐに通用口の鍵は開かれた。そして扉が開いた先には、夜勤である兵士が数名いる。

 そして現在は兵士だけでなく、国王の指示によって配備された騎士も数名待機していた。


「あれ、騎士さんたちがいますね」

「……っ、マルティナさん!!」


 扉から中を覗き込んだマルティナの顔を見て、騎士たちは衝撃に瞳を見開き、慌てて通用口から外に駆け出てきた。


「お怪我はありませんか……!」

「だ、大丈夫です。ロランさんが助けてくれたので」


 騎士の勢いに少し体を反らしながらマルティナがロランを示すと、騎士たちの視界に馬に乗せられたガザル王国の三人も入ったらしい。途端に厳しい表情になり、マルティナに視線を戻す。


「詳しいお話をお聞かせください」


 それからマルティナとロランが知ってる限りの経緯を説明すると、騎士の一人が報告のため王宮に向かった。マルティナたちには、馬車の迎えを手配するようだ。

 ちなみにガザル王国の代表団三名は、すでにロランの魔法ではなく頑丈な縄でガチガチに縛られ、別の部屋に拘束されている。

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