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46、ロランの魔法

 敵が戦闘不能になったところで、ロランはどんな顔をすれば良いのか分からないような、困った表情でマルティナを振り返った。


「……とりあえず、縄を解くな」

「ありがとうございます」


 二人の間には沈黙が流れ、マルティナの手足を縛る縄が解かれ立ち上がったところで、ロランが首の後ろに手を当てて自嘲の笑みを浮かべる。


「今まで隠してて悪かった。闇魔法を使うやつが近くにいたなんて……気持ち悪いだろ。ごめんな」


 それだけを伝えてマルティナから視線を逸らしたロランに、マルティナは慌てて声を掛けた。


「そんなこと全く思ってません! ただ驚いたというか、書物からの知識しかなかった闇魔法を初めて見て少し興奮していたというか、ただそれだけで……」


 いかにもマルティナらしいその言葉にロランは呆気にとられ、少ししてから吹き出した。


「お、お前……っ、やっぱりマルティナだなっ」

「……それは褒めてますか?」

「ああ、褒めてる褒めてる」


 笑いすぎて目尻に滲んだ涙を指先で拭ったロランは、嬉しそうに頬を緩めるとマルティナの頭を軽く撫でた。


「ありがとな」

「いえ、私は何もしてません。こちらこそ助けてくださって、本当にありがとうございました」

「それは当然だろ。仲間が攫われたんだからな。初めて闇魔法を使えて良かったと思ったぞ」


 悲しげに微笑んだロランの表情を見て、マルティナは眉を下げて口を開いた。


「……闇属性は希少属性で強くて有用なのに、なぜ嫌われているのでしょうか」

「それはまあ、使える能力の内容じゃないか? 今回俺が使ったのだって……」


 そこで言葉を切ったロランは、少しだけ躊躇いながらも小さく口を開いた。


「今回マルティナの居場所を探るために、マルティナの魔力の形を探させてもらった。つまり……そのだな、元々何かに使えるんじゃないかと思って、マルティナの魔力を記憶させてもらってた。勝手にごめんな」

「そういえば、闇魔法にはそんな魔法がありましたね。私は今回そのおかげで助かりましたし、全く気にしませんよ」


 マルティナのその言葉に、ロランは安心したように大きく息を吐き出す。


「はぁ……そうか、そう言ってもらえて良かった」

「別に魔力の形を覚えるのは問題ないと思います。問題になるのは……例えばそれを使って誰かのストーカーをするとか、そういう犯罪に使った場合ではないでしょうか。ロランさんはそんなことしないでしょうから、問題ありません」


 魔法を使っただけでは問題ではないというマルティナの言葉に、ロランは目から鱗が落ちたような表情でしばらく固まった。

 しかし次第に表情を緩めていき、嬉しそうに口角を上げる。


「確かにそうかもしれないな」

「はい。それで……これからどうしますか? この人たちを連れて王宮に戻らないとですよね」


 二人のことを睨みつけている三人にマルティナが視線を向けると、ロランは途端に冷たい瞳になり、三人を睨み返した。


「ああ、そうだな。早くマルティナの無事も伝えないと、今頃は皆が心配してるだろう。とりあえず……外門までこいつらを運んで、兵士に騎士へと連絡してもらうか」

「確かにそれが一番ですね。ロランさんの闇魔法は……公にするしかないですよね。今までずっと隠されてきたのに、私のせいで明かすことになってしまってすみません」

「それは気にしなくていい。俺は魔法を使ったことを後悔してないしな。ただ今の仕事を続けられるかどうかは、ちょっと分からないな」


 希少属性でありさらに忌避される属性であることから、今まで闇属性を明かした者が王宮に雇われたという事例は存在しないのだ。

 したがってロランが闇属性だと明かした時に、どんな決定を下されるのかは誰にも分からない。


「もしロランさんが官吏を辞めなければならないなんてことになったら、私が精一杯抗議します。そんなのおかしいですよ」

「ははっ、ありがとな。じゃあ戻ろう。全ては戻ってからの話だ」

「そうですね。……あっ! 魔法陣を描いた紙は馬車にありましたか!? 確かあれを持ってる時に攫われたので、一緒にあるはず……」


 慌てたマルティナが壊れ掛けである馬車の中を確認すると、中には折れ曲ったりもせずに無事な紙が端に置かれていた。


「良かったぁ」

「じゃあマルティナはそれを持て。俺はこの馬に三人を乗せて拘束して運ぶ」

「分かりました」


 それからロランが影を操り三人を馬の上に移動させたところで、二人は王都の外門に向かって歩みを進めた。

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