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図書館の天才少女〜本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!〜  作者: 蒼井美紗
第10章 サディール王国編

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177、仕事開始

 サディール王国に到着した翌日からは、さっそく仕事を開始した。外交官たちと官吏であるナディアやシルヴァンなどは、サディール王国側の外交官や大臣などと連日のように会談や会議の予定が入っている。


 しかしマルティナはそちらには参加せず、ひたすら王宮図書館で霊峰研究だ。自分ばかりこんなに幸せで良いのかと少し申し訳なく思いつつも、これが仕事であるし、こんな機会を逃すことはできないため、マルティナは朝から意気揚々と王宮図書館に向かった。


 護衛のロランとサシャは一緒で、ルイシュ王子は忙しいようで、朝にチラッと顔を出しただけだ。


(霊峰って興味深い場所なんだね……)


 マルティナは準備してもらった書物を端から読み進めながら、霊峰に関する知識をぐんぐんと吸収していた。


 特に気になるのは霊峰に関する言い伝えのようなものだ。その中には『何人たりとも奥には行けない』『悪い心を持つ者は永遠に森の中を彷徨う』など、霊峰探索に重要かもしれないものがいくつもある。


 それらの言い伝えが少しずつ言葉を変えて、何度も本に載っているので、どうしても気になってしまうのだ。


(本当にそんな側面があるのかな。でも悪い心を持つと森の中を永遠に彷徨うなんて、よくある子供に聞かせる脅し文句のようなものだ。子供の躾のためや、危ない森に入らないようにそんな言い伝えが広まったのかもしれない。こういうのは真実を選び取るのが難しいよね……)


 言い伝えを検証してみた話がどこかに載っていないかと期待して読み進めるが、まだその書物には当たっていなかった。


(日記とかも事実確認には有効だったりするんだけど)


 ただ霊峰という場所は、そもそも何百年もほとんど手付かずだったようなのだ。神の住む場所と思われており、たくさんの言い伝えも相まって、中に入ると祟られるなんて言説が根強く支持されていた地域もあるらしい。


 そんな状況では、霊峰に関する情報が多く残っているとは考えにくい。


 今の時代はそれほど霊峰が神聖視されていたりしないようだが、やはり霊峰に積極的に入る人はほとんどいないらしく、最近の情報というのも期待できないだろう。


 浅い場所だけは瘴気溜まりへの警戒、そして発生した瘴気溜まりへの対処のために騎士団などが入っているそうだが、それは本当に霊峰の入り口だけだ。霊峰全体や奥の情報は何も分からない。


「霊峰探索軍って、少しは探索が進んだのかな」


 マルティナが思わずそう呟くと、近くで護衛をしていたサシャが小声で答えた。


「昨日聞いたんすけど、かなり苦戦してるみたいっすよ。まあ、まだ探索を始めたばかりで手探り状態だと思うっすから、これから進むかもしれないっすけど」

「そうなんですね」


 サシャの言う通りまだこれからだろうが、マルティナは苦戦しているという話に眉間に皺を寄せた。


 すでに霊峰の専門家などが霊峰探索軍に助力はしているのだろうから、それで苦戦しているのであれば時間が解決してくれるか、もしくはマルティナが何か突破口を見つけるか、可能性はそれぐらいなのだ。


「やはり奥に行けないのでしょうか。浅い場所でも結構成長した瘴気溜まりが見つかったらしいですし、奥に巨大な瘴気溜まりがあって魔物があまりにも多いとか……」


 マルティナの予想に、サシャは首を横に振った。


「聞いた話では、魔物の数はそこまで多くないらしいっす。理由は分からないっすけど、霊峰の奥には瘴気溜まりがないんじゃないかって。ただそれなのに、奥に行けないらしくて。方向感覚がおかしくなるとかなんとか……」


 サシャの言葉はマルティナにとって予想外だった。方向感覚がおかしくなるというのは、どういう意味なのか気になる。


(永遠に森の中を彷徨う。みたいな言い伝えは、実際に森で起きる事象を示してるのかな。でもプロが慎重に行ってる探索で、方向が分からなくなるってどういうことだろう。また魔法陣……? でも今回は自然の中だ。さすがに魔法陣は考えにくいよね)


 色々な考えが浮かぶが、結論は出なかった。マルティナはまだ自分の持つ知識では結論が出せないと早々に諦めて、別のことを考える。


(霊峰の奥に瘴気溜まりがないっていうのは、もしかしたら竜の棲家に近いからなのかな。自分の棲家の周囲からは浄化石を取らなかったというのは容易に考えられることだ。ただそうなると、竜の棲家は霊峰の奥深く。山を登ったあたりの可能性が高くなるってことだよね……)


 マルティナはそこで思考を打ち切り、今はとにかく霊峰に関する書物を読み進めることに決めた。


「サシャさん、教えてくださってありがとうございます。また霊峰探索軍の状況が入ったら教えてください」

「もちろんっす。意外と騎士繋がりの方が情報が早かったりするっすからね」


 笑顔で答えてくれたサシャを頼もしく思いながら、マルティナは次こそ朗報が聞けたら良いなと思いつつ、また目の前の書物に視線を落とした。

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