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162、王宮で報告

 浄化石が本物であると確認できた日の翌日。マルティナは大陸会議の場にいた。今回は昨日の検証の責任者として、浄化石の真偽を説明するという役を担っている。


「昨日行いました検証の結果、ハーディ王国の地下研究室から持ち帰った巨石は、まさに浄化石であると明らかになりました。浄化石を設置したことで還元石と浄化石の間には特殊な魔法陣が現れ、正常に作動を始めたようです」


 マルティナのそんな説明を聞いて、各国の代表者たちは一気に盛り上がった。


「それは本当か!」

「では浄化石があるという霊峰を探せば、もう瘴気溜まりに悩まされることはないのだな」

「しかし、それが難しいのでしょう? 竜の話も少し気になりますし……」

「確かにそうだが……いや、皆で戦力を出し合えば問題ないだろう。竜だって、残っていたとしても骨だけだ」

「同感だな。霊峰探索軍を作るという話が出ていたはずだが、それを実現させるのが良いのではないか?」


 過去に竜という脅威が存在しており、その死亡が確認されたわけではない。そんな話に各国の代表者たちは不安を抱いていたが、やはり遠い過去の話であるという認識が強く、皆の表情には不安よりも期待の方が大きいようだった。


 マルティナも竜という存在への不安はあまり感じていなく、それよりも霊峰という人類が足を踏み入れることを躊躇してきた場所の探索に、どれほどの時間がかかるのか。そちらを心配していた。


(瘴気溜まりの根本原因を解決する方向性は見えたけど、解決までにどれぐらいの時間がかかるのかな……ハルカの負担を減らすためにも、できる限り早く浄化石を取り戻したいけど)


 霊峰というとにかく広く過酷な場所から竜の棲家を見つけ出すのには、下手したら何年も探索をしなければいけないかもしれない。さらに竜の棲家を見つけ出せたところで、そこに確実に浄化石があるとは限らない。また別の場所に保管されている可能性もあるのだ。


 また竜の棲家というのが、現在までその形を保たせているのか。もしくは、そもそも人が入れるような場所なのか。


 マルティナの脳内には、様々な懸念が駆け巡っていた。しかしそれらの懸念点は、各国の代表者たちも考えているだろう。


 しかし、現状では浄化石を奪った竜の棲家が霊峰にある。これしか情報がないのだから、霊峰探索に乗り出すしか選択肢はないのだ。


「霊峰とはどのような場所なのだ? 我が国は距離があって、あまり情報がないのだが」

「探索は可能なのか?」

「どの程度の戦力が必要なのかも知りたいわ」


 そうして各国の代表者たちが好き勝手に話すのを、ラクサリア王国の国王が止めた。


「皆、まずはサディール王国の意見を聞くべきではないか?」


 サディール王国とは霊峰と広く接している国の名で、霊峰を探索するならば協力を得ることが必須の国だ。ラクサリア国王の言葉には誰からも反論がなく、皆の視線がサディール王国の代表者に集まる。


 サディール王国から大陸会議に参加しているのは、第二王子であるルイシュ・サディールだ。年齢は二十代半ばほどだろう。


「ルイシュ王子。どうだろうか」


 その問いかけに、とても見目が良く本心を悟らせない笑みを浮かべたルイシュ王子は、居住まいを正すと告げた。


「我が国としては世界的な危機に協力しないわけがない。もちろん霊峰探索軍を受け入れよう。しかし、それには多くの負担が伴う。そこで霊峰探索が問題なく行えるよう、ぜひ我が国を次の聖女様が訪れる国としていただきたい。今回のことで貢献度も上がるだろうし、大きな問題はないと思うのだが、どうだろうか」


 こういう場で若者は侮られるものだが、ルイシュ王子につけ込む隙はない。そんな王子に苦々しげな表情を浮かべている者もいたが、王子の提案はもっともなものであり、最終的には受け入れられた。


「ではサディール王国の貢献度を上げて、聖女ハルカには今いる国の浄化が終わり次第、サディール王国へと向かってもらうよう通達しよう。それで問題ないか?」

「ああ、それなら我が国は霊峰探索に全力で協力する」


 そうしてサディール王国が霊峰探索軍を受け入れることが決定したところで、話はまた霊峰という場所の詳細に戻った。

 ルイシュ王子によって霊峰の過酷さが共有されたところで、話は軍の編成に移る。


 基本的には各国から騎士団を派遣することになったが、国内の浄化が済んでいる国と済んでいない国では、どうしても投入できる戦力に差が出てしまう。


 そこで霊峰探索軍はラクサリア王国やハーディ王国など、すでにハルカによる浄化が完了した国の騎士団が中心となることが決定された。


 ラクサリア王国の騎士団を率いるのは、ランバートだ。


 霊峰探索軍の編成方針が決まれば、次は軍が駐留するサディール王国内の街の選定、さらには食料確保の方法や、サディール王国へと向かうために通過する国々の関所等についてなど。大陸会議での議論はどんどん進んだ。


 やはり瘴気溜まりという脅威の排除、その大きな目標が各国間で一致していたことが話をスムーズに進めたのだろう。


 最後に霊峰を実際に探索する際の作戦にまで話が及んだところで、ラクサリア国王が口を開いた。


「本日はここまでとしよう。あとは実際に霊峰探索軍が現地に向かってから、臨機応変に問題への対処をした方が早いと思われる」


 その言葉には、皆が賛成する。


「そうね。私はそれで構わないわ」

「これ以上、ここで話していても時間の無駄か」

「まずは霊峰探索軍の活動を始めてみて、どうなるかだな」


 賛成の言葉を聞いて、ラクサリア国王は鷹揚に頷いた。


「ひとまず各国で騎士たちを動かし、サディール王国で霊峰探索軍の活動が始められる段階になったところで、また今後について大陸会議を開こう」

「異論ないわ」

「私もだ。しかし先ほどマルティナ嬢が言っていた、還元石と浄化石を繋げるような魔法陣。こちらに関する情報共有も頼みたい」

「もちろんだ。そちらはマルティナが内容を読み解け次第、また大陸会議を招集させてもらう。その他にも何か進展等あれば、皆も大陸会議を招集してくれ」


 初期の頃はそれぞれが権利を主張したり、自国の利益を優先したり、対立したり、何かと問題も多かった大陸会議だが、過激な国や個人が様々な理由で姿を消したこと、さらには世界が少しずつ良い方向に向かっていることを実感しているからか、とても有意義で平和な会議へと成長している。


「では皆様、本日の大陸会議は終了となります。最後に何かご報告されたいことなどはありますか?」


 今回も司会として参加していた宰相ロートレックの問いかけに誰も口を開かず、大陸会議はとても平和なまま終わりとなった。

『図書館の天才少女』コミックス1巻が本日発売となりました。最高に面白いので、皆様ぜひお手に取ってみてください。よろしくお願いいたします!


活動報告にはコミックスの詳細や特典情報などまとめてありますので、よろしければご覧ください。

特典たくさんあります!


そして本日はコミックス以外にもう一つ嬉しいお知らせがありまして、実は本作の小説1〜3巻がこの度全巻重版となりました!

応援してくださっている皆様のおかげです。本当にありがとうございます。

まだ書籍の方は読んでないという方がいらっしゃいましたら、この機会にぜひお手に取ってみてください!


小説とコミカライズ、どちらもよろしくお願いします。


蒼井美紗

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― 新着の感想 ―
また変態王子出現か〜? コミックス早速買いました。おもしろかった〜❢ 小説の次巻も楽しみに待ってます(笑)
 胡散臭ぇ、王子様だな…(*´・д・)
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