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図書館の天才少女〜本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!〜  作者: 蒼井美紗
第8章 迷いの古代遺跡編

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152、過去からのメッセージ

 懐からメモとペンを取り出したギードを確認してから、マルティナは最初の文章を口にした。


「この部屋に入った誰かへ。まず、この石碑に書かれた文を最初に読んでほしい。神に誓って嘘偽りない内容だ」


 そんな前置きから始まった文章は、とても長いものだ。


「発展し過ぎた魔法陣という技術はついに異界からの召喚を達成したが、それは禁忌だった。異界から現れたのはまさに化け物であり、怒り狂った化け物は我らを虫ケラのように蹂躙しながら世界を統べる王となったのだ」


 最初から衝撃的な内容で始まり、マルティナの声が一度止まる。前に中古本屋で見つけた朽ちる寸前だった紙束の内容。そこには世界を統べる王がいて、その王が世界のエネルギー源を奪ったと書かれていた。


 この石碑の内容を加味すると、あの紙束の内容も真実である可能性がグッと高まる。


 マルティナは深呼吸をしてから、続きを訳した。


「その化け物は自らを竜と名乗り、祖国から見知らぬ世界へと閉じ込めた我々のことを、一生苦しめてやると宣言した。そして竜は、大陸中から透明な巨石を奪っていったのだ。それがどのようなものか我々には分からなかったが、巨石を奪われたことでこれからの世界に悪影響を及ぼす可能性が高い。そこで一つだけこっそりと取り返すことができた巨石を、ここに保管しておく」


 やはりこの竜と名乗ったらしい世界の王となった存在が、世界中から浄化石を奪ったのだ。マルティナはそう確信した。

 そして懸念されている通り、その影響で瘴気溜まりによって人類は絶滅の危機に瀕している。


 異界から聖女という存在を召喚する技術によって一千年前も今も人類は助かろうとしているが、その根本的な原因もまた異界からの召喚であることが判明し、マルティナはなんとも言い難い気持ちになった。


(やっぱり異界からの召喚なんて、やっちゃいけない禁忌だったんだね)


 その事実を心に刻み込みつつ、また別のことを考える。


 暗黒時代が一千年前と現在に訪れていることから考えるに、還元石に溜まった澱みが瘴気溜まりとなって噴き出すのは、千年に一度のことかもしれないと推測できるのだ。


 ならば――この石碑が刻まれたのは、約二千年前なのかもしれない。


 少し読み進めるだけさまざまなことが判明する石碑の先を、マルティナはもう一度深呼吸をして自分を落ち着かせてから、改めて読み進めた。


「我らは自らが召喚した化け物を、総力を持って討伐する計画を立てたのだが、その作戦は多大な犠牲を生みながらも、一応の成功となった。大怪我を負った竜は棲家としていた霊峰に向かい、もう何ヶ月も姿を表していない。今の我らに霊峰にある竜の棲家を確認に行く余力はないため、上層部は竜を倒したと断定するらしい。そしてあのような化け物を召喚できる技術はすぐに破棄すべきだと、魔法陣に関する情報の全てを消し去ろうとしている」


 だから魔法陣に関する技術は、断片的なものしか残っていないのか。マルティナは改めて納得できた。


「しかし、私は思うのだ。竜がまだ死んでいなかったら? 盗まれた巨石の影響は? 魔法陣による影響がここまで大きくなっている以上、今その技術を手放すことは悪手だと思う。そこで私は、この場所に魔法陣の全てを残すことにした。後世の誰かに、この場所が役立ったら嬉しい」


 この文章を読んで、マルティナは迷いの古代遺跡とこの研究室を作った過去の誰かに、心から感謝した。


 少なくとも二千年前のこの時代に魔法陣に関する情報の完全破棄が目論まれ、この場所は今まで誰にも見つかっていなかったにも拘らず、マルティナは魔法陣に関するおおまかな情報を入手できたのだ。


 さらに一千年前の世界浄化の際にも、聖女召喚に成功している。つまり、それだけの情報が残っていたということだ。


 一度広まった情報を完全に破棄するなんてことは不可能なのだから、破棄してなかったことにするよりも、その管理体制を必死に議論するべきだろう。


 この石碑の筆者と同じ考えのマルティナは、大きく頷きながら続きに目を向けた。


「そして、一つだけ頼みがある。もしこの文章を読んでいるその時、魔法陣などカケラも後世に伝わっていなく、さらには世界になんの憂いもなければ、この部屋からは一切の情報も取り出さずに全てを破棄してほしい。しかし万が一何か問題が起きていて、それがここにある情報によって解消できるならば、遠慮なく使ってくれ。ただその場合も、魔法陣に関する技術は厳重な管理をしてほしい。この技術は安易に広めるべきものではない」


 マルティナはここにある情報を適切に管理して平和のために使おうと、固く決意する。


「私の望む形で、望む正義感を持つ者がここを活用してくれたら嬉しい。最後になるが、一番大きな本棚の横にある魔法陣を起動させると、入り口がさらに大きく開く。巨石を運び出すときなどに活用してくれ」


 そこで石碑の文章は終わっていた。最後まで訳したマルティナはふぅ……と息を吐き出してから、その場にいる皆に視線を向けた。

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― 新着の感想 ―
地球の最終兵器、核の炎に包むべき?
 『竜』がどうなったのか不明なのか…。ワイバーンとは関係ないのかな? 一応、下位の竜扱いのはずだけど。
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