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150、ついに発見!?

 皆が全力で作業に当たったため、十分ほどで石が地上に上げられる。一人では持ち上げられないほどの大きさであるその石が穴から完全に取り出された瞬間、アレットがぐっと地中を睨んだ。


「ん? 石があった場所の下に、何かないか?」


 皆がなんだかんだ取り出された石に視線を向けていたため、この言葉を聞いた者は少なかった。その少ないうちの一人だったマルティナは、ハルカたちと共にアレットの下へ向かう。


「まだ何かありますか?」


 その問いかけに、アレットは顔を上げた。


「マルティナ。さっき取り出した石の下に、さらに何かがある気がするんだよね。ただちょっと土を被ってて分かりづらいから……」


 周囲を見回して手持ち無沙汰な土魔法使いの騎士を見つけたアレットは、軽く手を上げてその者を呼んだ。


「なんでしょうか」

「あの底にある土を退かして欲しいんだ。ほら、あの下に何かがあるのが見えるだろう?」

「うーーん、確かに、ある気がします」


 期待した上でただの石だったこともあり、騎士はあまり期待していない様子で穴の傍らにしゃがみ込む。そして魔法を発動した。


 土魔法によって余計な土が地上に取り出され、姿を見せたそれは――。


「遺跡と同じ模様です!」


 マルティナは思わず叫んでしまった。穴の底で一部が露出した石造りの何かには装飾が施されていて、それが迷いの古代遺跡内の通路と全く同じだったのだ。


「本当だね!?」


 マルティナの叫びに、アレットが一気に興奮を取り戻す。石の検分をしていたギードも、転びそうな勢いでこちらに戻ってきた。


「そ、それは本当か!?」


 しっかりと穴の底を照らして皆で覗き込むと、誰が見てもそれは迷いの古代遺跡内と同じ装飾だ。


「本当にここに何かがあるんだね……!」

「早く掘り出すぞ! おいっ、その石はもういい! こちらを掘り出すのに力を貸してくれ!」


 ギードが指示を出したことで、取り出された石は即座に遠くへと追いやられ、総動員で地下にある建造物らしきものを掘り出すことになった。


「凄い勢いだね」


 ハルカは少し驚いてる様子だ。


「探検家の皆さんは、遺跡関係については熱量が凄いよね。頼もしいよ」


 マルティナの言葉にハルカが微笑んでいると、アレットが大きく手を上げてハルカを呼んだ。


「ハルカ様! ここに邪魔な固い層があって、魔法で砕けるかい? ここなら真下に遺跡はないはずだから、強い魔法でも大丈夫だよ」


 アレットは聖女であるハルカさえも戦力に含んでいるようだ。マルティナはそんな扱いをしていいのかと少し不安に思ったが、頼られたハルカが嬉しそうなのを見て、口を挟むのは止める。


(ハルカだって聖女様って敬われてばかりじゃなくて、同じ目線で仲間に入りたい時もあるよね)


 誰にでもフレンドリーなアレットの性格を、マルティナは改めてありがたく思った。


「マルティナ、わたしはちょっと手伝ってくるね」

「うん、頑張ってね。やりすぎだけは注意だよ」

「それはもちろん。最近はコントロールも抜群だよ?」


 自慢ありげに笑ったハルカは、ソフィアンやフローランを連れてさっそくアレットの下へ向かってしまう。そんなハルカを見送ってから、マルティナは全体に目を向けた。


「この調子で発掘が進めば、とりあえず上部の全容が把握できるまで数時間ぐらいですね」

「そうだな。もし本当に貴重な情報がここに眠ってるなら、今日中にも対面できるかもしれないぞ」

「楽しみですね……! 情報は本の形でしょうか」


 知りたい情報がたくさん載っている分厚くて豪華な本を思い浮かべて、マルティナはうっとりと頬を緩める。


 ロランはもはや見慣れてきたのだろうマルティナのそんな表情に、呆れを滲ませながら言った。


「期待しすぎない方がいいんじゃないか?」

「そうっすよね。もしかしたら何もない可能性もあるっすよ。それにマルティナさんが言うにはかなり昔の遺跡らしいっすけど、本って綺麗に残ってるんすか?」


 サシャの冷静な指摘にうっと動きを止めたマルティナだったが、すぐに迷いの古代遺跡の魔法陣を思い出す。


「この下にある何かは、迷いの古代遺跡の魔法陣によって守られてたので、情報が残された媒体も綺麗に残ってる可能性は高いはずです。なので、この下には誰も読んだことのない未知の本が……!」

 

 マルティナが期待をひたすら高めていると、発掘している皆から歓声が上がった。


「もしかして、中に入れるんじゃないか!」

「おい、あそこを見ろ」

「魔法陣だ!」

「凄いぞ!」


 皆の興奮の声が耳に届き、マルティナは慌てて歓声が上がっている場所に向かう。焦りながらも何があったのかと問いかけると、騎士の一人がかなり広くなった穴の下を指差した。


 そこには――。


「入り口……?」


 同じ装飾がずっと続く石造りの遺跡の中に、模様も色も違う場所が存在していたのだ。しかもその中には、小さな魔法陣が見える。


 しかし扉には必ずある取手などは確認できず、本当に入り口なのかどうかは不明だ。


「なんだどうした!」

「何か発見したのか!?」


 すぐにアレット、ギード、そしてハルカたちも集まり、皆で穴の底を覗き込む。


「おおっ、確かに他とは違うね!」

「まずは、あの魔法陣を読み解いてみるべきじゃないか? それで本当に入り口なのかどうかも判明するだろう」

「私もそうすべきだと思います」


 ギードの提案にマルティナが賛成し、さっそく入り口らしき場所まで危険なく人が降りて行けるように、地面を整えることになった。

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― 新着の感想 ―
>「楽しみですね……! 情報は本の形でしょうか」 ……いやぁ、隠匿され密閉した空間じゃ、本だったら腐って駄目になるでしょw 普通に考えれば、石板に彫るか魔法石にメッセージを録音する形でしょw
 本、はあるかなぁ?(笑) 良くて石板では?
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