148、魔法陣の内容は?
遺跡自体が魔法陣かもしれないという重大な発見から四日後。この四日間はハルカと共に迷いの古代遺跡に入ってみたり、一緒に本を読んだり、料理をしたり、楽しい時間を過ごしていた。
しかしそれと並行して、アレットたちが調査をしてくれる情報をまとめていき、マルティナが的確に必要な場所を皆に伝え、効率よく探索を進めていた。
その甲斐あって、本日の探索結果の反映と共に――マルティナは叫んだ。
「わ、わ、分かりました!!」
興奮の面持ちで目を見開くマルティナの肩を、アレットがガシッと掴んで前後に揺さぶる。
「何か重大な情報が分かったのか!? この魔法陣は何を示してるんだ! 貴重な情報に行き着いたのか!」
マルティナの興奮に合わせて、それよりも大興奮のアレットだ。アレットだけでなくその後ろには同じく鼻息を荒くしたギードたちが控えていて、マルティナは一瞬で冷静さを取り戻した。
「今から説明するので、肩から手を外してもらえますか?」
「もちろんだ!」
自由を取り戻したマルティナは、真剣な表情で遺跡の地図のある部分を指差す。
「一番大切なのはここです。ここには場所を示す座標が記されているのですが、それによると……」
そこで言葉を切ったマルティナは、今度はこの辺り周辺の地図を取り出した。そして迷いの古代遺跡から北西に少し進んだ辺りの草原を指差す。
「ここです。この魔法陣は、この場所を保護するようなものになっています。貴重な情報や巨石は、ここにある可能性が高いですね」
マルティナの思わぬ言葉に、全員がポカンと口を開く。
「え、そ、それって、貴重な情報ってやつは、迷いの古代遺跡の中にはないってことか……?」
恐る恐る確認したアレットに、マルティナはしっかりと頷いた。
「はい。迷いの古代遺跡はこの場所を保護するためだけのもののようです。足を踏み入れた者から勝手に魔力を取り込み、保護の魔法陣が発動するような仕組みですね」
「――――うわぁぁ、作製者にしてやられてるね!」
「まさか遺跡内に存在しないとは……」
「別の場所にあるなんて考えたこともなかった」
アレットが頭を抱え、ギードたちもガックリと肩を落とす。
複雑で意味深な作りの遺跡があれば、そちらに意識が向いてしまうのは仕方がないことだろう。遺跡を作った者が一枚上手だったということだ。
「私もさすがに想像すらしていなかったので、仕方がないと思います。それにこの場所ですが、ただの草原で何もないようなのですが……」
その言葉に少し復活したギードがこの辺一体の地図を覗き込み、眉間に皺を寄せた。
「この場所には何もなかったはずだ」
「やはりそうなのですか。では、地下ですね」
迷いの古代遺跡がそもそも地下にあるものなのだ。同じく地下に何かを作ることぐらい、造作もないことだったのだろう。
「地下か……とりあえず掘ってみるしかないね。どこかに入り口があるのか、遺跡が埋まってるのか」
アレットの言葉にマルティナも頷いた。
「それしかないと思います。とりあえず土魔法が使える人たちを総動員して、慎重に掘りましょう」
「わたしも手伝うよ。硬い地盤があったりしたら、割ることもできるし」
期待の眼差しで手を挙げたハルカに、マルティナは苦笑しつつ笑いかける。
「ありがとう。でもハルカの魔法は威力が強すぎるから、最後の手段にさせてね」
「うん。でも必要な時には言ってね」
「もちろん。――じゃあ皆さん、さっそく明日、この場所を調査するということで問題ないでしょうか。今夜中に準備を終わらせましょう」
マルティナが話をまとめると、全員異論なく頷いた。
「それでいいよ」
「すぐ準備に取り掛かる!」
そうして皆が慌ただしく動き出し、代官邸は日付が変わる頃まで賑やかだった。