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146、盛り上がる話

「皆さんはどうですか?」


 ハルカの近況を問いかけるような漠然とした問いかけに、まず答えたのはナディアだ。


「わたくしに大きな変化はないかしら。ただハーディ王国の美容品は色々と調べたわ」

「え、それ興味あるかも。ラクサリア王国とは違うの?」

「基本的には同じなのだけれど、やはり植生などが全て同じではないから、用途は同じでも原料が違う物は多いわ。いくつかこちらのものの方がわたくしの肌に合っているものがあって、定期的に輸入ができないか、こちらにきている外交官と相談中よ」


 美容分野に関しては饒舌になるナディアだ。ちゃっかりお気に入りの化粧品を仕入れる目処を立てようとしていた。


「凄いね。わたしも色々と使ってみようかな」

「それが良いわ。自分の肌に合うものを探すのがとても大切よ」


 そんなナディアの話を隣で呆れながら聞いていたシルヴァンが、なんでもないことのように、しかし少しだけ自慢げに告げる。


「私は乗馬を克服した」


 シルヴァンはマルティナとハルカと共にした乗馬訓練での悔しさを胸に、暇さえあれば乗馬の練習をしていたのだ。

 その成果もあって、一人で自由自在に乗りこなすことはできないまでも、見た目の違和感なく馬を歩かせることぐらいはできるようになった。


 本を読む時間が減るからと早々に諦めてしまったマルティナとは違い、勤勉で負けず嫌いなシルヴァンだ。


「え、凄いですね。高いところが苦手そうだったのに」

「別にそんなことはない。あの時は慣れていなかっただけだ」


 見栄を張るシルヴァンに、ハルカは苦笑を浮かべながら問いかける。


「一つ疑問に思ったのですが、ラクサリア王国では乗馬って貴族の必須技能ではないのですか? なんとなくそういうイメージがあるのですが」


 日本人的なハルカの疑問に、今度はシルヴァンが首を傾げた。


「なぜそのようなイメージがあるのだろうか。貴族の中でも剣を習い、少しでも騎士を目指した者ならば乗馬の訓練もしているだろうが、そうでなければ乗馬の経験はないのが普通だな」


 ラクサリア王国で乗馬というのは、あくまでも騎士の必須技能なのだ。基本的に貴族は優雅に馬車で移動するため、乗馬をする機会はない。


「そうなのですね……ではソフィアンさんは、剣を習っていたのですか?」


 最初から乗馬をできたソフィアンへの問いかけに、ソフィアンは笑顔で頷いた。


「そうだね。ほら、私は第二王子だろう? さらに風魔法で攻撃も可能だ。そこまで揃っていれば将来的には騎士として国を支える道に進んでほしいと、剣や乗馬を習うのは必須だったんだ。ただ私に戦いの才能はあまりなくて、結局は外交方面と司書業務をしていたのだけど」


 あまり才能がないと言っているが、これは正しくない。ソフィアンの実力は一般的な騎士と比べれば、むしろ高い方なのだ。


 しかし確かに特出するような才能はなく、頭脳面、特に外交方面では明らかに他から頭一つ分以上は抜きん出た才能を持っていたため、そちらに進むことになった。


「何かきっかけがなければ、乗馬は習わないということですね」

「そうだな。俺もマルティナの護衛なのに、乗馬は苦手なんだ。というよりも護衛となってからほぼ初めて馬に乗って、まだまだ乗りこなせないって感じだな」


 ロランが苦笑しつつ頬を掻くと、サシャが爽やかな笑顔で拳を握る。


「大丈夫っすよ! マルティナさんを運ぶ時は俺に任せてくださいっす」

「ありがとな、心強いよ。でも俺もマルティナを運べるように頑張るさ」


 そう言ってロランがマルティナの顔を覗き込むようにすると、マルティナはなんの躊躇いもなく頷いた。


「頑張ってください。応援しています!」


 自分で馬に乗れるようになろうとする気持ちはゼロのマルティナに、ロランは歯を見せて笑う。そしてマルティナの頭を手を伸ばそうとして……一瞬止まり、背中を少し強めに叩いた。


「マルティナも楽な運ばれ方の研究ぐらいはしとけよな」

「大丈夫です。最近は乗馬に関する本を見つけ次第、優先して読んでますから」


 これで完璧という表情のマルティナに、部屋の空気が緩んだ。


「乗馬についての知識なら、フローランに聞くのも良いと思うよ。フローランは馬に乗るのが本当に上手いんだ。どの馬も器用に乗りこなす」


 ソフィアンの推薦に、それまで静かに座っていたフローランが少し眉を上げた。


「私でしょうか。特別な技能を有しているわけではないのですが……」

「いえ、フローランさんは上手だと思います。馬たちがとても心地良さそうに走っていますし」


 ハルカからも褒められて、いつも真面目な表情を崩さないフローランの口元が、ほんの僅かに緩んだ。しかしすぐ元に戻り、マルティナに向き直る。


「マルティナさん、私でよければお話しいたします」

「本当ですか! ぜひお願いします」

「分かりました。では――」


 それからも食堂には楽しい空気が満ち、いつまでも会話が途切れず、幸せな時間が過ぎていった。

皆様、『図書館の天才少女』書籍3巻のカバーイラストが公式サイトやAmazonなどで公開されております!

今回も本当に本当に素敵な表紙なので、ぜひご覧ください!

マルティナが可愛いです。とっても可愛いです……!


すでに予約等もできますのでぜひ。発売日は6/10です!

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