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図書館の天才少女〜本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!〜  作者: 蒼井美紗
第7章 ハーディ王国編

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132、幸せすぎる時間

 謁見が終わって部屋を出たところで、ハーディ王国の薬師たちとは別れて、ラクサリア王国の面々だけが残った。

 

 そこでロランが、マルティナの頭に軽く手刀を落とす。


「お前なぁ、他国の国王陛下だってこと忘れてなかったか?」

「いたっ」


 少し大袈裟に頭を押さえたマルティナは、そのまま首をすくめて口を開く。


「すみませんでした……つい、欲望に勝てなくて」

「まあ、好意的に受け止めてもらえてたから良かったけどな。これからは気をつけろよ」


 呆れ混じりの苦笑を浮かべたロランを見上げ、マルティナは強く決意した。


「はいっ、頑張ります」


 周囲から見れば全く信じられない決意だろうが、マルティナは真剣だ。どうすれば新たな本という誘惑に勝てるのか、真面目に考えている。


 やはり未読本が数え切れないほど手の届く場所にあるという状態を、常に維持するべきかもしれない。そんな斜め上の結論に達したところで、ハーディ国王の側近である男がやってきた。


「マルティナ様、国王陛下から王宮図書館の案内をせよと命を受け、こちらに参りました」


 さっそく案内人を手配してくれたらしい。


「来てくださって、ありがとうございます」

「いえ、これからすぐ図書館へ行かれますか?」

 

 その問いかけに、マルティナはロランや外交官たちに視線を向けた。


「今日は何か予定があるでしょうか。とりあえず赤点病のことが落ち着くまでは、ここで身動きが取れないかなと思うのですが……」

「そうですね。ギードさんの娘さんも赤点病に感染しているお一人ですし、薬が調合されて症状が改善するまで、具体的には五日ほどでしょうか。そのぐらいはここで待機となると思います」

「その間に迷いの古代遺跡探索に対して話し合いが行われるとは思いますが、早くても明日以降になるはずです。昨日は忙しい一日でしたし、今日は休息日にしましょう」


 二人の外交官の言葉を聞いて、マルティナの瞳はキラキラと輝く。少し前のめりになりながら、期待を込めて聞いた。


「では、これから王宮図書館に向かってもいいですか!」

「はい。そのように他の皆さんにも伝えておきます」

「ありがとうございます……!」

「サシャにも伝言をお願いします。マルティナは王宮図書館にいるが、護衛には俺が付くから休んでいてもいいと」

「かしこまりました」

 

 そうして、王宮図書館へ行くことが決まった。


 護衛として同行するロランと共に、マルティナがハーディ国王の側近に付いていくこと数分。

 

 目の前に、豪華で大きな扉が現れた。


「も、もしかして!」

「はい。ここが王宮図書館でございます。ではどうぞ、中へお入りください」


 これでもかと瞳を輝かせたマルティナがワクワクと待機する中、大きな扉はあっけなく開く。


 見えてきた内装は……とても豪華で歴史を感じる、荘厳なものだった。

 ラクサリア王国の王宮図書館は木造の部分も多いのだが、ハーディ王国の王宮図書館は本棚まで石造りだ。さらに図書館の中に石像がいくつもあって、歴史的な遺産になるような建物である。


 マルティナはそんな図書館の様子をさらっと確認してから、存在感のある石造の本棚に所狭しと並べられた本を目を向けた。


 近くにある本のタイトルを見るだけで、読んだことがないものばかりだ。やはり国が違うと残っている本も異なるらしい。


(また楽園を見つけちゃった……!)


 ラクサリア王国の王宮図書館に初めて入った時のように、マルティナの胸は大きく高鳴っていた。


「素晴らしい図書館ですね!!」


 大興奮を必死に押し隠しているマルティナを見て、ロランが話を進めるために問いかける。


「ここはどんな人が入れる場所なんですか?」

「基本的には王宮に入れる者ならば、自由に出入り可能です。ただ奥に第二開架がありまして、そちらは官吏や騎士など、決められた身分を持つ者のみです。さらに奥には書庫があり、そちらには陛下が許可を出された人しか入れません」


 ラクサリア王国の図書館には一つの広い開架があり、そこに入れるのは官吏など決められた地位を持つ者のみだ。そう考えると、ハーディ王国の方が王宮図書館の間口を大きく開いているらしい。


「では、私たちが入れるのは今いる開架のみでしょうか」

「はい。第一開架と呼ばれています。ここにある本ならば、自由にお読みください」

「ここの中なら自由でいいんですか!?」

「もちろんでございます」


 マルティナの予想では、王宮図書館の入り口付近にある椅子を勧められ、マルティナが読んでもいい本をいくつか手渡されるイメージだった。


 まさか自由行動を許されるなど、嬉しすぎる誤算だ。


「ありがとうございますっ! ではさっそく!」


 スキップしながら近くの棚に直行したマルティナを、苦笑しながらロランが追いかけた。ハーディ国王の側近も微笑ましそうにマルティナを見守り、穏やかな空気が流れる。


「わぁ、ハーディ王国に関する本がたくさんあります。こっちは言語、こっちは歴史ですね。あっ、もしかしてその辺は食文化に関することでしょうか」


 まずは本の背表紙を楽しみながら、入れる場所をぐるりと一周したマルティナは、大満足でほくほくしながら途中で手にしていた数冊の本をギュッと抱きしめた。


「今日はこの本を読もうと思います」


 マルティナが選んだのは、ハーディ王国の歴史に関する本と、人間ドラマが主題である物語本、それからハーディ王国の伝統食に関する知識がまとめられた本だ。


 まずはどの本から読もうかと幸せすぎる悩みを経由して、マルティナは一冊の本を選ぶ。そしてその本を開く前に、ロランに伝えた。


「ロランさん、私はしばらく本の世界から帰ってこなくなると思いますので、お好きな本を読まれたり、自由にしていてください」

「分かった。適度に楽しみつつ護衛をしてるから、心配するな」


 その言葉に安心したマルティナは、意気揚々と最初に選んだ本を開く。そして存分に本へとのめり込める、幸せな時間を過ごした。

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