6(完結)
(! えっ? 何それ?)
止まらなくなった僕の「目からビーム」は次々に村人たちを「全裸アフロ」にし、遂には家に火をつけ始めた。
「うわっ!」
「何をするっ!」
「止めろっ! 勇者っ!」
そう言われても僕の体は止まらない。サーティンはと見れば、リモコンをああでもないこうでもないと操作しているけど、あっ、手を滑らせたっ!
ガシャーン プシュー
サーティンの手から離れたリモコンは岩に激突。白い煙を出して動かなくなった。
これで僕の体が止まるかと思いきや、「目からビーム」は止まらず、暴走したままだった。
「どうすんの、これ? サーティンさーん」
「ごめんなさい」
「いや、謝ってもらわなくてもいいから止めて下さい」
「こうなると止まらないんですよ」
「そっ、そんなあ」
パカラパカラ パカラパカラ
そんな僕の耳に入って来たのは多数の蹄の音。
「遅れてすまなかった。騎士団、ただいま参上。盗賊はどこだ?」
「おまわりさん。いえ、騎士団長。あいつです」
村長がためらいなく指差した先には僕が。
「むむむ。怪しい奴め。いいかみんな。あの光線を避けて、遠距離から一斉に矢を放て」
騎士団長の命令一下、矢が一斉に放たれ、僕は倒れた。
そして、そのまま僕は騎士団長に止めを刺されたのである。
…… ……
…… ……
…… ……
また真っ暗なところで目を覚ました。
今度は二回目だから当惑する気持ちはない。
このままここにいても時間切れで地獄堕ちなんだろうから、小さな光を目指して歩く。
今回は僕一人だけみたいだ。
そして、前回同様明るいところに出ると……
いた。パイプ椅子にかけたフォーティンがテーブルに突っ伏して体を震わせている。
くそっ、一連の経緯を聞いていて笑ってやがるな。
「タクシ・タナカです」
「ぷっくくくく。お早いお帰りで。あなたもサーティン姉さんも大活躍だったようで。ぎゃはははは」
「まあともかく」
僕は咳払いをした。
「前回のことはともかく今回の僕の死因はサーティンさんがリモコンを壊したことにあるわけで、今度は『13』以外のドアでまともな『チート能力』を付与してもらって転生させてほしいのですが」
「いやー。それなんですけどねえ」
フォーティン、そう言いながら満面の笑顔。うわ、嫌な予感。
「サーティン姉さん。あなたに惚れ込んじゃったようで、『次も自分が担当する』と言って聞かないそうなんですよ。ぷっくく。父なる大神も十四人の姉妹のうち一番心配していたサーティン姉さんが初めてこういうことを言ったと大喜びで、一も二もなく認めました。あはははは」
「え?」
「そう言うわけであなたの『13番ドア行き』は自動的に決定しました。憎いよ。この『リア充』。くぬっ、くぬくぬ」
「ちょっ、それ。酷くないですか。今回のこと、僕に非はないでしょう」
「ええい。ごちゃごちゃと。筋肉中年隊。『13番』までお連れして」
ウース
その声と共にこれでもかと筋肉を盛ったスキンヘッドにビキニパンツ一丁の親父が四人登場。
僕を担ぎ上げると「えいほえいほ」の掛け声と共に運び、「せーのっ!」で「13番」のドアの向こうに放り込んだ。
そして、真っ暗な部屋の向こう側から、か細い声がした。
「いらっしゃい。私のあ・な・た」
「十三番目の女神」 おしまい




