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「ぐふぉおっ!」
何と僕の両拳は腕から離れて飛んでいき、「兄貴」の顔面を直撃!
「兄貴」はその場に倒れ込んだ。
「うふ。うふ。うふふふ。『ロケットパンチ』」
「わあっ! 『兄貴』がやられたっ!」
「逃げろおっ!」
「アジトに戻ったら、『兄貴』の形見分けだあっ!」
「『兄貴』が床下に隠している『エルフちゃんエロエロ写真集』は俺がもらうっ!」
「ずるいぞっ! 俺だってあれ欲しかったんだっ!」
「馬鹿野郎っ! 俺は死んじゃいねえっ!」
「兄貴」はおもむろに立ち上がるとまた僕を睨みつけた。
「飛び道具たあ汚ねえ真似してくれるじゃねえか。だが、もう手の内は分かったぜ。てめえの拳よーく見ながら、ぶちのめしてやる」
「いよっ! 『兄貴』」
「男の中の男」
「『リア充』ぶっ殺せっ!」
「『ゴ〇ブリ』ぶっ殺せっ!」
「エロいぜ。エルフちゃんっ!」
声援を送る他の盗賊たち。君たち、さっき「兄貴」見捨てて逃げようとしてなかった?
「死ねいっ! 『リア充』」
「兄貴」は弟分たちの「手のひら返し」を気にすることもなく、また突進してきた。わあ。
「うふふふ。私に任せて」
サーティンは木の陰に隠れたままリモコンらしきものを操作。
僕の胸部がパカリと開き、中からコマとひもらしきものが出現。またもや僕の意思とは関係なく、左手にコマ。右手にひも。
「うふ。うふ。うふふふ。『超電磁コマ』」
コマは強烈な回転をし、「兄貴」のむこうずねを直撃した!
「うぐおおっ」
「兄貴」は前方に倒れ込んだ。
「わあっ! 『兄貴』がやられたっ!」
「逃げろおっ!」
「アジトに戻ったら、『兄貴』の形見分けだあっ!」
「『兄貴』が天井裏に隠している薄い本『可愛い聖女ちゃんがあんなことやこんなことをしちゃう』は俺がもらうっ!」
「ずるいぞっ! 俺だってあれ欲しかったんだっ!」
「馬鹿野郎っ! だから俺は死んじゃいねえっての!」
◇◇◇
「さすがは勇者。勝つためには手段を選ばねえってか。だが、こうなっちゃあ俺も引っ込みがつかねえ。野郎どもやっちまえっ!」
「兄貴」の命令に弟分たちは顔を見合わせる。
「えーっ、『兄貴』がやってよー」
「『兄貴』。さっきから『勇者』にやられっぱなしじゃん」
「『兄貴』。『勇者』やべえよー」
「『勇者』。陰キャに見えて、後で『ひみつどうぐ』で仕返ししてくるタイプだぜ」
「可愛いぜ。聖女ちゃん」
「ああっ、もう分かったっ! おまえらこの村、自由に略奪していいから『勇者』含めて皆殺しにしろっ!」
「「「「「やりぃー」」」」」
弟分たちは僕には目もくれず、村の略奪に向かった。
いや、でもこれはやばい状況だよ。
「どうしょう。サーティンさん」
「うふ。うふ。うふふふ。言ったでしょう。私は『特級人体改造士』。その私が『大量破壊兵器』の装備を忘れるわけがないのです。行きます。『目からビーム』」
言うが早いか。僕の両目からビームがほとばしり、次々に盗賊たちを直撃した。
「うわっ」
「ぎゃっ」
「わあっ」
「きゃー」
「いやーん」
全然自分では自由に使えない僕の「チート能力・目からビーム」は「兄貴」を含めた盗賊たちの武器を破壊し、装備を蒸発させ、髪の毛をアフロにした。
かくて全員「全裸アフロ」になった盗賊たちは散り散りばらばらになって逃げだしたのである。
「兄貴」の「こんな村、すっぱいに決まっている」という言葉を最後に。
◇◇◇
「キャーッ、やったー」
「『勇者様』素敵ーっ。結婚しましょー」
盗賊たちを追っ払った僕に飛び付いてくる二人の女の子たち。しかしっ!
「キャー、何するのー」
「『勇者様』。それはちょっと早過ぎますー」
何故か僕の「目からビーム」は女の子たちも直撃! 彼女たちの服は蒸発した。
「ちょっ、サーティンさん。もう盗賊たちはいなくなったので、『目からビーム』止めてくださいっ!」
「あ、ごめんなさい。実はさっきから止めようとしてるんだけど、リモコンが壊れたみたい」




