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「いえ、魔女様がおっしゃられてました。勇者様はきっと謙遜されるだろうけど頼み込んで来てもらえと。勇者様には魔女様が『ちーとのうりょく』を付与されているから絶対大丈夫だと」
「いやっ、いやいや、僕に『チート能力』なんてないですよ。そんな自覚ないし」
「「勇者様」」
それまで壮年の男性の陰にいた若い女の子二人が前に出てくる。わあっ!
「「どうかどうか、村をお救いください。村を救って私たち二人と結婚してください」」
(ぶっ、何それ。若い女の子二人にうるうるした目で上目遣いに見られるなんて、前世じゃ一回もなかったぞ。ドギマギする。いやいやいや、いかん。ほだされてはいかん)
「何とかしてやりたいのはやまやまだけど、僕は本当に『勇者』じゃないんで」
その僕の言葉に若い女の子二人は顔を見合わせる。あ、やっと分かってくれたのかな?
「「勇者様」」
何と二人の女の子は僕に抱き着いて来た! おおお、おっぷぁーいが当たるうっ!
「魔女様の言われた通りですっ! 勇者様は『ふぇみにすと』だから、私たち二人がそう言ったら絶対そう言うって」
「それを言ったら『本物の』勇者だから、村長は土下座して、私たちは色仕掛けをしてでも連れて来いと、そうすれば村は救われると」
サーティーン。なんつーことを吹き込んでくれたんだー。気が付けばさっきの壮年の男性が土下座してるし、これじゃあもう断れないじゃないかー。
「わっ、分かりましたよー。村に行きます。でも、僕が守れるかどうか分かりませんよ」
「「大丈夫です。魔女様が言われてました。勇者様の『ちーとのうりょく』は無敵だと」」
「……」
かくて、僕は女の子たちにおっぷぁーいを押し付けられながら、村に向かったのである。
だけど、サーティンはどんな「チート能力」を僕に付与したんだろう。ぱっと見、何も変わってないようなんだけど。本当に大丈夫なのかなあ。
◇◇◇
村に着くと、あっ!
木の陰に隠れているつもりなんだろうけど、僕には分かるぞ。サーティン。
「サーティンさん。なんでそんなところに隠れているんです?」
「うふ。うふ。うふふふ。隠れてるんじゃないの。暗くて狭いところが好きなの」
「あなた猫ですか? それにあなた女神なのに僕の転生先について来ちゃったんですか?」
「うふ。うふ。うふふふ。あなたが『チート能力』を発揮するところを直で見たいの。だって、あなたは私の『最高傑作』なんですもの」
(物凄く嫌な予感がするけど、ここは聞いておかないと……)
「サーティンさん。僕の『チート能力』って何なんです? それが分からないと村も守れませんよ」
「うふ。うふ。うふふふ。大丈夫。私に任せておけばいいの。大活躍させてあげるから」
「いやそう言われても『チート能力』が何か分からない……「ガーハッハッハッ!」
うわ、何だ? いきなり笑い声に会話を遮られたぞ。
「おうっ、村の者どもっ! 金と食い物と女の用意は出来てんだろうなっ?」
え? 盗賊が来ちゃったのー?
◇◇◇
「何だ何だ何だっ! 見たところ用意出来てねえじゃないかって、おっ?」
わあっ、盗賊の親分らしき男と目が合った。しかも、何か髪の毛を逆立てて、体を震わせてるぞ。
「あー、貴様ーっ!」
盗賊の親分らしき男の脇にいた男たちが騒ぎだす。
「若い女、二人もはべらせやがってっ!」
あ、そうだった。今の僕には女の子二人がくっついてたんだっけ。「勇者」にまつり上げられた上に、何の「チート能力」か教えてもらえないもんだから、気持ちがそれどころじゃなかったよ。
「知らねえぞーっ。てめえ。兄貴は『リア充』と『ゴ〇ブリ』が大嫌いなんだからなっ!」
「そうだぞっ! こないだなんかなあ、『ひのきの棒』で『キャーッ』って言いながら、『ゴ〇ブリ』を叩き潰したんだからなっ!」
「ちなみにこれがその『ひのきの棒』だっ! 見ろっ! 『ゴ〇ブリ』が潰れたまま張り付いてるぞっ! ハッハッハッ、どうだっ! 恐れ入ったかっ!」
えーっ、その「ゴ〇ブリ」張り付けたままなの? 取って捨てた方がいいと思うんだけど。
◇◇◇
相変わらず「兄貴」と呼ばれた盗賊は僕を睨みつけてる。そして、気が付けば僕にくっついている女の子二人が睨み返しているし、うわあ。
「へっへーん。おまえなんか怖くないよーだ。この『勇者様』にかかれば、イチコロだもんねー」
「そうそう。この『勇者様』は『ちーとのうりょく』を持ってるんだからね。おまえたちをぶちのめしたら、私たち二人と結婚するの」
バキッ
「兄貴」が握りしめていたらしい石が粉々に砕けた。
「許さんっ! 貴様だけは絶対に許さんっ! 『リア充』撲滅すべしっ! この『ひのきの棒・ゴ〇ブリ殺し』で駆除してくれるわあっ!」
やだっ、そんな死に方。「チート能力」もらって転生したはずが何でこうなるの?
「ぬおおおっ!」
「ひのきの棒・ゴ〇ブリ殺し」を振りかざし、僕に向かって突進してくる「兄貴」。僕の周りから素早く逃げる女の子たち。ええっ?
その時、僕の意思とは関係なく、両拳が握られたまま、腕が真っ直ぐ前に伸びて……




