第六話 婚約話が来た
「……は? レオ様と婚約……ですか?」
数日後――――お父様とお母様に応接室に呼ばれたわたしは、お父様からの発言にキョトンとなる。
「えーと、誰がですか?」
「だからゼフィー、お前だよ」
「誰と誰が婚約?」
「あなたとレオ様よ、ゼフィー」
再び沈黙が流れる。…………え、どういう事。待って待って、何でわたしがあのレオ様と婚約なんてしなきゃいけないの?
「シャロン家から直々に婚約の打診があってな。お前とレオ様は仲も良いし、レオ様は次期伯爵。これ以上にない良縁だぞ。ちょっとお顔は残念だけど」
「良かったわねゼフィー。大好きなレオ様と結婚出来るわよ。お顔は残念ですけど」
ちょっと待てぇええええええええ! いや、何を血迷った勘違いをしてるの、お父様もお母様も! 大好きって、誰がいつそんな事言ったの。何処が仲良しなのよ、会えばいつもギスギスした空気になってるのに何故気付いて貰えてないの! というか、今なにげにレオ様の顔ディスってましたよね? その通りだから、そこは問題ないですけど。
「待って下さいっ! ダメです、絶対それはダメ!」
激しく抗議の声を上げるわたしに両親は首を傾げる。
「どうしたの、何がダメなの?」
「照れる事はないんだぞ、ゼフィー」
「ちっがぁあああああああああう! 全然、仲良くなんてないです! あんな人と結婚するくらいなら修道院に入った方がマシです! ヤダー、絶対無理ぃ!」
「「えー!?」」
あまりにも全否定して声を荒げるわたしに、おろおろし始める両親。冗談じゃない、なんであんなのと結婚しなきゃいけないのよ。レオ様のやつぅ~! 親を使って強硬手段に出てくるなんて卑怯だわ。
「どうしましょう……てっきり喜ぶかと思ってたのに、まさかこんなに嫌がるなんて」
「そうだな。だが同じ伯爵家とはいえ、シャロン家の方が我が家より格上……断るにも相当な理由が必要だ」
眉を下げて考え込む両親。お願い、何とかして断って下さいお父様! 祈る思いでお父様達を見つめる。
「……ゼフィー。すまない、これも家の為と思ってレオ様と婚約しておくれ」
「そんな…………」
目の前が真っ暗になる。あのレオ様と婚約……。いくらモブだからって、これはあんまりだわ。
わたしは久々に数日寝込んだのであった。




