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第十二話 手紙

「うーん、まいったなぁ……」


 タクト様が邸に来てから数日が経った。レオ様との婚約から救って下さったお礼にと、ハンカチに刺繍を施してはみたものの……プレゼントなんて渡していいのだろうか悩む。出来は悪くないとは思うけど……。


 それに、今の現状はわたしが前世の記憶を取り戻した当初の目標とはかけ離れて来てしまっている。モブとして遠くから楽しむつもりだったのが、何故か推しからプロポーズされてしまう始末。どこをどう間違ったのだろうか……。


「うう……好きすぎて辛い」


 タクト様の事を考えるだけで胸がいっぱいになる。ゲームとして向き合っていたあの頃は二次元のタクト様にキャーキャー言ってはいたけど、ファンの域からは出てはいなかった。


 今は同じ世界で生きているからか、タクト様をキャラクターではなく一人の男性として見てしまっている。ましてや、熱烈なアプローチ迄受けてしまっているのだ。意識するなというのが無理な話。


「何であんなにカッコイイんだろう。まだ入学前でアレなのよ? 卒業する頃には鍛え抜かれてガッシリとした身体が程良い筋肉も付いて……きゃー!」


 想像しただけで鼻血吹きそうだ。頭に血がのぼったのかクラクラしたので、座っていたソファーに横になる。あぁ、タクト様尊いわ。


「お嬢様、お手紙が届いておりますが」


 廊下からスワンの声がした。入室を促すと、一通の手紙を渡される。机からペーパーナイフを持ってきて、開封しようと封筒の裏を見た。


「こ、これって、王家の家紋じゃ……」


 封蝋の印を見て驚愕する。え、何で王宮から手紙が来るの? 少し震えながら丁寧に封を開けて、中の便箋を取り出す。メチャクチャ高級な便箋だわ。


「…………なっ⁉︎」

「どうされました、お嬢様?」


 心配そうにスワンが問いかける。わたしは大きく息を吐くと、スワンに向き合った。


「何か……アルスト殿下に呼び出されたんだけど」


 わたしの言葉にスワンが青ざめる。何? 何、何なの? キラキラ王子に呼び出される様な事なんてしてないわよね? モブらしく地味に目立たない様に生きて来た筈だしって、あっ……。


 一つだけ思い当たる節がある事に気が付く。そうだ、タクト様だわ……。キラキラ王子とタクト様は親友同士だ。きっとタクト様にわたしなんかは相応しく無いって忠告されるんだわ。


 筆頭公爵家の嫡男と、伯爵家とはいえ末端に程なく近い伯爵家の令嬢――――。釣り合う筈もない。そんなのわたしが一番分かってるわよ〜。


 タクト様があんまりにも真っ直ぐ想いを伝えて下さるから、身の丈以上の夢をついつい見てしまった。キラキラ王子と接点持つ事なんて無いと思ってただけに、不意打ち喰らったみたいでキッツイわ。


 わたしは窓から遠い空を見上げながら、ため息を一つついた。

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