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第一話 なんでこうなった

新連載です。

前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」https://ncode.syosetu.com/n7256gy/

のスピンオフ的な作品になりますが、前作を読んでなくても楽しんで頂けます☆

 ま、まずいわ……。何でこんな事になったのかしら。


 今年十歳になったばかりのわたしアスチルゼフィラ・ピスケリーは、とある公爵家で開かれたお茶会に参加していた。ガタガタとお茶を持つ手が震えている。何故震えているかって?そりゃ、わたしの目の前で前世での推しキャラだったお方が、一緒にテーブルを囲んでいるからよっ!


 そう、わたしには日本という国で暮らしていた前世がある。当時OLだったわたしは、ブラック企業に就職してしまっていて。毎日毎日、残業に追われて恋愛も結婚も縁遠い日々……そんなわたしの唯一の癒しが、帰宅してから少しずつ楽しむ乙女ゲームタイムだった。


 一番ハマっていたのは「虹色の奇跡をあなたと」シリーズで、とある王侯貴族学園を舞台にした恋愛ゲームだ。一作目のヒロインは天真爛漫な男爵令嬢で、七人の攻略対象者達との甘いラブロマンスを楽しむのだ。


 攻略対象者はオルプルート王国の第一王子であるキラキラ王太子、騎士見習いの公爵家令息、次期宰相候補の公爵家令息、魔導士見習いの侯爵家令息、大商人の侯爵家令息、学園の教師兼研究員、そして隠しキャラの第二王子の七人だ。


 そして今わたしが来ているお茶会は、キラキラ王太子の婚約者である悪役令嬢の公爵家で開かれたお茶会だった。実は騎士見習いと宰相候補の二人は双子で、悪役令嬢はその二人の妹だったりする。なのでキラキラ王太子ルート以外でも、この双子のどちらかのルートを選ぶとライバルキャラとして悪役令嬢が登場するのだ。因みにこの双子は通称タクスクコンビと呼ばれ、このゲームで一、二を争う人気キャラだ。


「ピスケリー嬢、どうかした? レモン水は好きじゃなかったかな」

「い、いえ! 好きです! (あなたの事も)」


 キラキラ王子程では無いけど、わたしの目にはあなたのお姿がそれはもう眩しくキラキラして見えております〜! 生タクト様、マジやばい。そうなのです。目の前に居るのは、わたしの推しキャラである騎士見習いのタクト・ローゼン様です。はぁ……こうして生ボイス迄聞けるなんて、天にも昇る気持ちです。で、でも、でもですね。


 こんなに近くなくて良いんですよぉ! 推しは遠くからコッソリ眺めるのが一番なのです。会話を交わすなんて畏れ多くていけません。そもそも何でこんな状態になったのかと言うと……。


 ヒロインでもなく悪役令嬢でもなく、わたしが転生したのはその辺に転がってるモブ令嬢だったんです。自分がゲームの世界に転生した事に気付いたのは、このお茶会への招待状を頂いた時でした。主催者である悪役令嬢……ティアナ・ローゼン様のお名前を招待状で目にした時、頭の中に前世の記憶が怒涛の様に押し寄せて来ました。


 キャパオーバーで頭から煙を出したわたしは、それから三日程知恵熱を出して寝込んだのですが……記憶を整理して、改めて現状を考えてみるとある考えに辿り着きました。これって、美味しいんじゃね? って。


 物語の主要人物だったら色々と大変そうですけど、わたしは名前も作品に出てこないモブ令嬢です! 遠くから主要人物達の織り成す物語を鑑賞出来ちゃうんじゃない? あの学園には、しがない伯爵令嬢であるわたしも入学するんです。しかも、ヒロインと悪役令嬢は同級生! なんて素敵な巡り合せなんでしょう。


 思いっきりモブ人生楽しんじゃいましょう! と意気込んで、このお茶会に参加したのだけど。何を間違ったのか、張り切りすぎて酔ったのか…………馬車から降り立った途端に公爵邸の入口でリバース……。


 あぁ…………誰かわたしを穴に埋めて欲しい。


 たまたま近くを歩いておられたローゼン公爵家嫡男であるタクト様に介抱される羽目になり、客間にこうして二人きりで向き合っているのです。まさか推しに、淑女らしからぬ汚物を見られるなんて最悪な出会いです。いや、出会ってしまいたくはないのに。陰から見る喜びは何処へ――――。

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