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cold cigarette kiss  作者: 煙 うみ
9/14

3.1

昔の悪ガキたちは、首謀者を喪ってから、加速的にバラバラになっていった。


伊吹が死んだ次の年、夏子は駐在先のイランに発ち、私は勤務地のある隣の県に引越し、ひとり、またひとりと地元の町を去っていった。


私たちは、伊吹の葬式には参列できなかった。


年若い息子を突然亡くした親族の悲しみは深く、私たちも状況は十分理解していたから、線香をあげに行くのも控えようという暗黙の了解になっていた。



「俺たちじゃ、頼りなかったんだろうな」


数ヶ月ぶりに会った寛太がぼそっと呟いた。


「何も話してくれなかったよねー。伊吹。」


小学生の頃の寛太はぽっちゃりと背の低く、伊吹の意地悪によりしばしば買い物のパシリをさせられていた、風采のあがらない男の子だった。

今でこそ外資系コンサルに勤める、スーツの似合う青年になっているのだから、時の流れは残酷とよくいうけれど、一種の歪みを解決してくれることもあるように見える。


伊吹の周りでだけ、いつからか時が凍りついて止まって居た。


卓に運ばれてきた焼鳥串には手をつけずに、寛太がiQOSの煙を吐く。


私は指に挟んだ自分のVAPEを見つめる。なんだか今日は、ニコチンでくらくらして頭が痛い。少しだけで辞めようと思いながらも、もやもやと散らかる思考を鎮めたくなって、指が自然と口元へと運んでしまう。


「人に相談とかするような感じじゃなかったし。うちらも伊吹はどうせなんとかなる、って思ってたし。弱音吐く相手とか、いたのかな……?」


寛太が苦笑いで応えた。


「本当の伊吹のこと、誰も知らないままだったよね。不思議だね。あんなに長く一緒にいたのに」





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