3.1
昔の悪ガキたちは、首謀者を喪ってから、加速的にバラバラになっていった。
伊吹が死んだ次の年、夏子は駐在先のイランに発ち、私は勤務地のある隣の県に引越し、ひとり、またひとりと地元の町を去っていった。
私たちは、伊吹の葬式には参列できなかった。
年若い息子を突然亡くした親族の悲しみは深く、私たちも状況は十分理解していたから、線香をあげに行くのも控えようという暗黙の了解になっていた。
「俺たちじゃ、頼りなかったんだろうな」
数ヶ月ぶりに会った寛太がぼそっと呟いた。
「何も話してくれなかったよねー。伊吹。」
小学生の頃の寛太はぽっちゃりと背の低く、伊吹の意地悪によりしばしば買い物のパシリをさせられていた、風采のあがらない男の子だった。
今でこそ外資系コンサルに勤める、スーツの似合う青年になっているのだから、時の流れは残酷とよくいうけれど、一種の歪みを解決してくれることもあるように見える。
伊吹の周りでだけ、いつからか時が凍りついて止まって居た。
卓に運ばれてきた焼鳥串には手をつけずに、寛太がiQOSの煙を吐く。
私は指に挟んだ自分のVAPEを見つめる。なんだか今日は、ニコチンでくらくらして頭が痛い。少しだけで辞めようと思いながらも、もやもやと散らかる思考を鎮めたくなって、指が自然と口元へと運んでしまう。
「人に相談とかするような感じじゃなかったし。うちらも伊吹はどうせなんとかなる、って思ってたし。弱音吐く相手とか、いたのかな……?」
寛太が苦笑いで応えた。
「本当の伊吹のこと、誰も知らないままだったよね。不思議だね。あんなに長く一緒にいたのに」