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cold cigarette kiss  作者: 煙 うみ
7/14

2.4

街灯に照らされた桜の樹の下にベンチを見つけると、伊吹はすとんと座って長い脚を組んだ。


夜にも木漏れ日ってあるんだ。蛍光灯で出来た、人工の木漏れ日。枝の隙間からキラキラして綺麗、とかくだらないことを考えて立って居たら、伊吹がリュックから黒と紫の小さな箱を取り出すのが見えた。


「伊吹くん、それタバコ?」


「ん?うん、タバコ。兄貴がリビングに置いてたから、家族の共有財産かと思って」


冗談めかしながら、彼はトンとカートンを叩いて1本煙草を取り出し、薄い唇の間に咥えてライターで火を点けた。


初めてのことではなさそうだった。


私は感心しながら、伊吹が旨そうに吐いた煙が、薄靄のかかった暗闇に浮かんで消えていくのを見送っていた。


「松永も、吸う?」


そう訊かれるのを待っていたような気がした。


「吸う〜」


そう答えて、伊吹の隣に腰を下ろす。


私が手を差し出していると、伊吹がもう1本箱から出して説明してくれた。


「暗くて見えづらいな。この色ついてる方がフィルター。咥えて、火を近づけたら、一気にすうっと吸い込んで。…松永、もしかしてライター初心者?」


手渡されたライターを扱いかねているのを目敏く見つけられ、取り上げられる。


「いや力要るくない?これ。火傷しそうで怖いし。火だよ」


「石器時代のヒト?じゃあこうしよう」


煙草を、口先で控えめに咥えさせられる。


顔が近づき、伊吹の煙草の火のついてるところが私の煙草にくっついて、ああシガーキスって言うんだっけ、と思いながら言われるままに息を強めに吸い込んだ。


伊吹の睫毛の先まで見える距離で、火がつくまで同じことを繰り返す。


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