表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cold cigarette kiss  作者: 煙 うみ
4/14

2.1

高校2年生の冬、彼とふたりきりで夜の散歩に行ったことがある。



私は私立の女子校に通っていて、6年間で恋をする機会も度胸もなく、俗世から逃げるように受験勉強に没頭していた。


iPhoneが中高生間ではやり始めていた頃だった。

まだ買い換えてもらえないガラケーを苛々と操作しながら、塾の教室で授業が始まるのを待っていたとき、前のドアから入ってきた男子生徒にふと目が留まった。


どこの子だろう、と思った。


チェスターコートを羽織った下にタートルネックのニット。グレンチェックのテーパードパンツに黒の細身のローファーを合わせていた。


この辺によくいる男子校の生徒じゃなさそうだ。洒落た高校生もいるもんだな、と考えたところで、彼が顔を上げて視線が合った。


「松永じゃん」「伊吹くんじゃん」


外界との膜を破って、彼が近づいてくる。


私の机の前まで来ると、口元に髭がうっすらと生えているのが見えた。元々落ち着いていた声音が前よりも低くざらついていて、その変化に一瞬怯えてしまっていた私は、彼の顔に浮かぶ人懐こい笑みに安堵した。


「びっくりした!今日からいるの?」


「いや、今日は見学だけ。文化祭も終わったし、そろそろ塾通おうと思って」


講師が部屋に入ってくるのが彼の肩越しに見えた。チャイムが鳴る。


じゃあまた、と手を軽く挙げて伊吹は自分の席に戻っていった。


久しぶりに男の子と話したな、と思う。同級生だった彼が、《今日話した男の子》というよそよそしいカテゴリにふと入ってしまったのが、そこはかとなく侘しかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ