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cold cigarette kiss  作者: 煙 うみ
11/14

3.3

伊吹が死んでからしばらくして、悪ガキグループの中の1人と寝た。


6年生の頃バレンタインにチョコをあげて、近所のゲームセンターで何回かデートをした相手だった。


「身体、熱いね」


「松永のこと、ずっと忘れられなかったからね」


私の背中に回された両腕が暖かくて、その悲しい現実味に涙が浮かんできた。

甘い言葉を囁く目の前の彼よりも、何も言葉にしてくれなかった伊吹が恋しかった。


終わってから口寂しくて、水を飲みながらVAPEを吸った。


あまりに物憂げだったのか、苦笑いしながら言われた。


「松永って、生きづらそうにしてるよね。小学校の頃から。」


「君もそこはかとなく生きづらそうにしてたよ。だから好きになったんだもん」


ふと聞きたい気がして、脈絡のまるで無い質問を投げかける。


「伊吹くんは……生きづらかったかな…?」


彼は私の布団の中で、一瞬固まった。


目を細めて考えている。この子の、問いかけに真剣に答える誠実さと不器用さが好きだった。


「変な言い方するね。俺、松永が初恋だと思うけど、伊吹くんのことは…」


「……伊吹くんのことも初恋だった?」


うん、と彼は頷いた。


「松永もそう?」


「もしかしたら、ね」


もしかしたら彼は、永遠に私たち皆の初恋で居続けたくて、自分の時を止めたのかもしれない。


夏子の、寛太の、この子の、私の。そして、私たちが知らない、彼が出会った誰か達の。


なんて、狂っているけれど、いかにも伊吹らしい浪漫を感じる。



生きながら少しずつ死んでいくひとの手は、冷たいのかもしれない。


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