1.1
彼が、死んだと聞いた。自殺だそうだ。
小学校の同級生だった。
楽器を弾き、煙草を吸い、八重歯を見せて笑う、綺麗な顔と手をしたひとだった。
冷たくなった身体をこの手で触ったとしても、私はもしかしたら信じられなかったかもしれない。
彼の身体は、生きている時から本当に冷たかったのだから。
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初めて出会った頃の彼は、妙に老成した小学5年生だった。
こけた頬には既に幼さの面影はなく、肩幅は広く引き締まった胴体から脚がすっと長く伸びていた。
声がわりが終わりかけのかすれたテノールで喋り、身長はクラスで2番目に高かった。
真冬にも履いていた膝丈の短パンと、年相応に背負った黒ランドセルまでもが、彼という存在のアンバランスさを却って強調しているように見えたのだから、不思議なものだった。
彼は穏やかで、天性の器用さを持っており、信じられないほど頭の回転が速かった。
運動会のリレーでは必ずアンカーを走り、学芸会でも卒業式でも合唱の伴奏を弾いていた。
気紛れにとてつもない意地の悪さを見せることもあったけれど、周りに人だかりは絶えず、男女問わず会う人全員に慕われていた。