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転生したのでとりあえず腹筋を割ろうと思う。  作者: 砂臥 環
学園入学直前編

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拗れてしまった


悩んでいても、身悶えていても、同様に時は進む。


「レディ・リヴォニア。 イーサン・シュヴァリエ卿から連絡を承りました」

「──! ありがとうございますっ」


イーサンと繋いで貰ったが、私は場所の確認だけすると『待ってて』と言ってすぐ通話を切った。

場所はハンコック領第五分社だそう。


とりあえず戻ることにする。

あまりにこの場で話せない内容ばかりだし。





──だが、私を待っていたイーサンの話の方が、更に『この場で話せない内容』だったようだ。

侯爵家からお借りして馬車を呼んだ、とだけ言い続きを話さない。気まずそうに俯いて、口を開いた。


「先に言っておく……割と言いづらい」

「あ、ヒューゴー様がレナのこと好きってこと?」

「なんか……平気そうだな?」

「ん~……割と」


ヒューゴー様のことは好きだ。

ドキドキしたし、これが恋だと思った。


──でも何故か、あまり傷付いてはいなかった。


「どうしてだろう、それよりヒューゴー様の気持ちが切な過ぎてバグったのかな? ドキドキしないけど、考えるとギュンギュンするわ……」

「バグ? なんだそれ。 まあ平気ならいいが……呼ぼうか迷ってたけど、さっさと呼べば良かったな」

「えっ、レナは見つかったの?!」

()()()()()()()()()()()()。 多分、賢者様のところだと思う。 そう踏んで、ヒューゴー様は出掛けた」

「……なるほど」


灯台もと暗し。

確かにハンコック領でヒューゴー様が総力を上げて探しても見つからないなら、賢者様のところしかない。


賢者様……リア充嫌いだしな。

……ヒューゴー様、無事辿り着けんのかな?


私達も森へ向かうことにし、その道中の馬車の中でイーサンにヒューゴー様からなにを聞いたのかを尋ねた。


わざわざ借りた侯爵家の馬車は、防音仕様らしい。

一応未婚の男女なので、代わりにカーテンをガッツリ開けてある。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【イーサンの話】※イーサン視点でお送りします。


俺は馬車を帰し、神殿からハンコック領の神殿に直接行く事にした。その方が速い。


その後自警団に行くと表向きは変わらなかったが……自警団の数人にだけは『侍女殿を個人的理由から探しているから、見掛けたら秘密裏に伝えて欲しい』と、ヒューゴー卿から言われているとのこと。


彼等も口が軽い訳ではない。

俺が教えて貰えたのは、ひとえにヒューゴー卿への信頼が買われたからだろう。(ドヤァ)


卿は真面目な方だ。公私混同をなるべくしたくなかったに違いない。自警団にはいらっしゃらないので、屋敷の方に向かった。


ヒューゴー卿は連絡待ちをしなければならない身だ。どこへ行くにしても拠点を置く必要があり、自警団でないなら屋敷に戻ってくる。

ヒューゴー卿はいなかったので待たせて貰うことにした。

どこに行ったかは案の定屋敷の者が知っていた。


卿が赴かれたのは南西部の港街、ドゥルジ。

ルルシェ・モンドワールの墓のある場所だ。


モンドワール子爵はこの地に、邸宅を持っていた。

隣国とやりとりをするのに、うってつけだったのだろう。


戻られた卿にその事を指摘し、彼女と侍女殿との関係を尋ねると、やはり妹だという。


何故俺の姉がそれを知らなかったのか不思議に思い聞いてみると、侍女殿は学園では普段『レイ』と名乗り、男装して騎士科にいたからだそうだ。


『レイ』と名乗るのが高いプライドからならば、家名や繋がりをひけらかしたりはしない。

『レイ』は男装の麗人としてそれなりに有名だったようだが、騎士科には平民も多い。家名を名乗らなくても、あまり気にされなかったのだろう。


それに『レイ』は退学になっている。

……ああ、聞いたのか。なら話は早いな。


退学の話を聞いて婚約破棄と同じ意図だと感じた俺は、推測が正しかったと思い、卿に考えを告げた。


その上で、こう言ったんだ。


「もし俺の推測が正しいのなら、おふたりを守ったのはヒューゴー卿ではありませんか。 不幸にもルルシェ嬢は亡くなってしまわれましたが、それは……」

「違う」


『貴方のせいではない』──そう言い切る前に、卿は否定した。

だから俺はそれが、ルルシェ嬢の死への後悔からだと思った。だが──


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼



そこまで言って、イーサンは、防音なのに更に声を潜めた。


「『ルルシェは生きている』……卿はそう仰った」

「!?」


『生きている』?

……『生きていた』、じゃなくて?


先が気になるが……森に着いてしまった。

少し中まで入った後、歩きながら話を続けることにした。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


その時、それ以上は答えてくれなかったが「では何故お墓に?」と聞くと「確認をしに」と。


「墓はとても寂れていた。 何年も放置されていたのだろう。 レナがルルシェを『死んでいる』ものと思っていれば、あそこまで寂れはしない。 ……彼女はここにルルシェがいないことを、既に知っていたんだ」


そう言って、卿は頭を抱えた。

「何故今まで確かめようとしなかったのか」と小さく呟きながら。


「『生きている』、のですか?」

「……イーサン卿、君を信頼している。 だから言えることだ」

「御心には添えるつもりです」

「──死んだ。 ルルシェも、妹『テスラ』も。 ……だが『生きている』」


どうやってかわからないが、逃がしたのだろう。別人として、ルルシェは生きているのだ。


「……なら」

「殺したことになっている。 この俺自身が、だ。 ……テスラとルルシェの仲は良かった。 ──なにをどう、確かめたらいい? 俺は彼女にとって家を潰し、姉を虐げ、屠った男だ。 それに彼女はもうレナとして生きている。 蒸し返すのは正しいことか? 俺にはわからない」


卿は早口で吐き捨てる様に言った。


どうしてそうなるのかがわからなかったが、順を追って話を聞いて、漸く理解することができた。


ルルシェは侍女殿が消えたことで、彼女の身代わりに『テスラ』として隣国に嫁がされた。


それを救ったのは、ヒューゴー卿じゃない。

──バルドラ・トロイアだ。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


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― 新着の感想 ―
[良い点] えっ? バルドラ・トロイアってルルシェが不貞を働いたって事になっているあの? 一体どうなっているんだ?
[一言] おっ!!? これは…… どう転ぶか分からなくなってきましたっ! (わくわく)
[良い点] うおう、頭が追いつかなくなってきました…… つまりイーサンは実はイケメンだったということですね。 [気になる点] ルルシェとテスラが秘密裏に逃がされ生き延びたという事でしょうか?
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