私の寝室
私は今、マルファスに連れられて大きなお城の中を歩いている。全体がレンガ調の作りの建物なので廊下もそれに漏れる事なく灰色の一本道が続いている。蝋燭は等間隔に廊下を照らしているが元々が暗いので先は良く見えない。
「お前の部屋まで案内するからついて来い」
そう言われて随分と彼の後にくっついているのだが、目的の部屋は遠いのか中々辿りつかない。
「けっこう広いですよね、このお城」
「ほとんどが空き部屋だ。今ここにいるのは先程会った四天王とごく少数の配下たちだけ。近くの部屋はお前に分け与えるほどキレイではないからこうしてついて来てもらっている」
一応私のことを考えてくれてるのかな。汚いところには案内出来ないって意味だろうし……優しい一面が垣間見れた気がする。
「着いたぞ。ここがお前の部屋だ」
彼が扉を開いたその先には広さは十分だけどやはり灰色レンガ作りの部屋が広がっていた。その中は木で出来た机が一対あるのみで、余計に寒々しさを感じさせる。
「これが、部屋?」
「そうだが、何か不満でもあるのか?」
「不満と言うか……机とイスだけよ。家具までとは言わないけど、ベッドはないの?これじゃ眠れないわ」
「眠るとはなんだ?ベッドと言う物はそれを行うのに必要なのか?」
「!?……本気で言ってるの?」
「事実しか言っていない。」
これには本当に驚かされたわ。悪魔は睡眠を必要としないのね。二十四時間丸々動けるなんてタフすぎるでしょ。
「人間には睡眠が必要なの。一日八時間、疲れてるときはそれ以上に必要な場合もあるわ。寝ないと私たちは死んでしまうの。あなたたちは疲れを知らないの?」
「我らは魔界に満ちている魔力を糧に生きている。魔力が満ちている限り疲れる事もなければ傷付くこともない。」
「それって不死身ってこと?」
「魔界にいる限りはそう言うことになるな。老衰以外で死ぬことはないだろう」
「あなたたちが人間とは違うってことがよく分かったわ……」
不死の事実を突きつけられて頭が真っ白になってしまった。そんな超常の存在がこの世にいるなんて思ってもみなかったわ。
「それでどうするのだ?ベッドとやらがないとお前は満足に休むことも出来ないのだろう?」
そうだ、衝撃の事実をカミングアウトされたことですっかり頭から抜けていたが、この部屋では人間の私は休む事が出来ない。欲を言えばベッドの他にも収納や鏡台なんかも必要だ。家具以外では服は絶対欲しい。今着ているものは薄汚れて破れているし……
「そうだけど、ベッドなんかこのお城にはないのでしょう?それとも買ってきてくれたりするのかしら?」
「よかろう」
―――――えっ?彼は今なんて言ったのかしら。聞き間違いでなければよかろうって……冗談のつもりで言ったのに。
「いいの?と言うか分かるの?見たこともないのでしょう?」
「見たことはない。だからお前も共に来るのだ。それは人間界にしかないのだろう?丁度良い機会だからそちらの世界の事も学べるしな」
そんなこんなでマルファスと一緒に人間界に行くことになりました。寝具を探しに……
こんにちは。ぱたたです。
前回投稿から大分間が開いてしまって申し訳ないです。
ブクマ、評価を頂いている方、楽しみにして頂いている方へ早く読んでもらえるように
更新していきますのでお付き合いください。