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私の気持ち 5


 「どうしたん大島」と、カズミ君がニッコリ笑って聞く。

「ふん?」カズミ君に小首をかしげる私。

「うちに遊びに来れて嬉しいん?」

「うん…嬉しいよ?」

「大島ニコニコしてる!」

え!やっぱりしっかりニヤニヤしてしまってた!?

「なあなあ大島!兄ちゃんもな、今日ニコニコしてた!」

あ、今ズキュンと来た。


 でも相手が年少さんなので、もちろん体裁を整えるために、「そっか~~」と当たり前のことを受け止める風を装う。

「ボクもすげえ嬉しいよ!大島来てくれて。そいで丸焼きも」

ズキュン、ズキュン、と重ねて来た。恐ろしいなカズミ君。

「うん」と、今度はちゃんとうなずいて見せる。「私も嬉しいよ!カズミ君にも会いたかったんだ」

「…」

じっと私を見つめるカズミ君。

 ふん?て感じでちょっと笑ってみせるとカズミ君は「なんかなぁ~」と言った。

「なんか女の子ってなそういうことばっか言うけど、よくすげえみんなに言ってる」

「え、なに?」

「女の子はみんなにそういうことたくさん言うよな。ボクにも言うけどダイちゃんにも、ユウキにも、リクちゃんにも言う」

「…そんな事ないと思うよ?」

幼稚園児の女子はそんな感じか?…いや、JKもそうかもだけど。

「いやぜってえみんなに言ってる」と断言するカズミ君。「ユウミちゃんもアンリちゃんもマイちゃんも…みんなに言ってる」

マジか…すごいな幼稚園児女子の世の中への対応力。

「そっかぁ…でもほんとにみんなにそう思ってどうしても言いたくなって言ったのかもよ?」

JKの場合そうではないことも多いけど、一応私も女子っぽく取り繕って女子の味方をしてみる。

 だって今更なんだけど、カズミ君には優しくていいお姉ちゃんなんだとちょっと思われていたいんだよね。


 「ふ~~ん…」納得しない顔で私を見上げるカズミ君。「ま、いいけど」

『ま、いいけど』だって。可愛いな。ニコニコしながら私も「うん」とうなずく。

「ユズルはさ、もっといつでも遊びに来たらいいのに」

「…う~~ん。ありがと」

でもなかなかそう簡単にはね…。曖昧に笑ってごまかすとカズミ君は少し口をとがらせて言った。

「ほんとに会いたいなら遊びに来たらいいじゃん」

またまたズキュンと来た!


 「兄ちゃんが『ユズルともちょっと、だんだんなかよくなったらいっしょに家で勉強する』って言ってたけど、大島が来ないからあんま仲良くなってねえんかと思ってた!」

「…え…そうなの?」と言いながら顔が赤くなってしまうのがわかる。

「あ、でもなボク、この前お母さんと幼稚園から帰ってきてたら高校生の女の人にイズミ君の弟!って言われた」

え?それはどういう事?うちの学校のJKがこの辺りをうろうろしてたって事?タダの家を探してたって事?

 恐ろしいな!

「そのこと、お兄ちゃんに教えた?なんか言ってた?」

「なんか、『ちっ!』ってしてた」と、舌打ちのまねをするカズミ君。

そっか…

 なんかちょっとほっとしている私だ。

 でもつい小さなカズミ君に聞いてしまう。「他にも高校生のお姉ちゃんたち、来た事あった?」

「あったよ」

あったのか~~~…

「お兄ちゃんその時どうしてた?」

「見てない」

「そっかそうだよね。お兄ちゃんは…え、と、…その…他の女の子の事とかもカズミ君に話したりする?」

「ふん?」

きょとん、とするカズミ君。



 ヤバい。調子に乗ってマズい事聞いちゃったかも!これは後でカズミ君がタダに話したらすごく恥ずかしいヤツだ。

「あ、うそうそ。…いやウソじゃないけど、あの、カズミ君のお兄ちゃん学校ですごいモテてるから、おうち帰ってから学校の話とかもするかなあってちょっと思っただけだから。ほんとちょっと、ほんとのほんとにちょっと気になっただけだから。恥ずかしいから私が聞いたこと絶対お兄ちゃんに言っちゃダメだよ。ね?絶対秘密!」

「秘密なん?」

「うん!秘密秘密。いい?ちゃんと秘密にしてくれる?大丈夫?」

「いいよ!大島ってかわいいな!」

 は?

「なんか先生が」とカズミ君がニコニコしながら言う。「秘密のお話は好きな人にするんだって言ってた。だから秘密のお話されたらみんなには言わないでちゃんと秘密にしなきゃなんだってー」

「そっか~」

「あのな、兄ちゃん、ユズルの事はお母さんとかには話さないけど、ボクが大島の事どんくらい好きかって聞いたら、すげえ好きって言ってた」

「え!?」

 どうして今そんな事言い出した?

 ビックリしたけど…ニヤニヤが止まらなくなるじゃん!


 が、「ぅああっっ!!」とカズミ君が急に大声を出したのでビクっとした。

「なに?どうしたの?」

「…なんでもない」と答えたカズミ君の声は急に小さい。

「どうしたの?大丈夫?」

「…」

「カズミ君?」

「大島!兄ちゃんが大島のこと言ったやつ、兄ちゃんに秘密って言われてたんだった!大島!ボクから聞いたこと、兄ちゃんに秘密!」

え、ちょっと待って!「マジで」

「マジで!秘密秘密!兄ちゃんに言わないで!」

「カズミ君…マズいじゃん。私はそれ秘密に出来るけど、私がさっき秘密にしてって言ったやつのことちゃんと秘密に出来るの?」

「出来る」

もう~~~!

 絶対出来なさそうなんだけど。

 カズミ君を見つめるとカズミ君は目を反らした。

 もう~~~~~!!


 「じゃあさ大島!」ぱあっと目を輝かせたカズミ君だ。「指切りしとく?」

「指切り?」

「指切り!大島指切り知らないん?」

「知ってるけど」

「はい」と言ってカズミ君が小さい小指をちょこんと出す。「大島、指切りげんまん、歌ってみ?」

「私が?」

「指切りげんまんの歌知らないん?」

「知ってるけど」

「じゃあ歌ってみ?」

「…」

それで約束守れるのかな。絶対しゃべっちゃうよねカズミ君。

 もうバカだな私…絶対あんなこと聞くんじゃなかった。


 「大島、早くしないと兄ちゃん帰ってくる」

「わかった」私は厳しい顔をして見せる。「げんまんしたら絶対約束守ってよカズミ君。わかった?」

「わかったあ!」

思い切り嬉しそうにするカズミ君に不安を覚えるが、私も同じようにカズミ君の目の前に小指を出すと、カズミ君がそれに自分の小指を絡めてた。…可愛いな。

「じゃあ一緒に!さんはい!ゆ~~びきりげんまん…」

カズミ君が歌い出したので、私も声を合わせる。

「「うぅそついたらはりせんぼ~~んの~~~ま…」」


 「お前らすげえ仲いいじゃん!」

急にヒロちゃんが大声を出しながらリビングに入って来たので、私とカズミ君は小指を結んだまま「「うぎゃっ!」」と変な声をあげて驚いた。

 「ギャハハハハ!」と笑うヒロちゃん。

「ちょっともうヒロト、なんでそんな大声…」と言いながらユキちゃんもコンビニの袋を持って入って来た。

「きゃ~~~指切り可愛い~~~」とユキちゃんも騒いだので、やっと私とカズミ君は結んだまま驚いて固まっていた小指をぱっと離した。

「おいおいおいおい~~~~」と悪い笑いを浮かべるヒロちゃん。「何の約束してたんだよカズミぃ。カズミがユズの彼氏みてえじゃん。カズミ~~。お前の兄ちゃん泣くぞ」

「ヒロトなに騒いで…」とタダもリビングに入って来た。

「今カズミとユズがな、」と面白がって話すヒロちゃん。「兄ちゃんがいない間に楽しそうに指切りしてたから。なんか兄ちゃんに言えない秘密かなあと思ってな」

 何でヒロちゃんはいつでも余計な事しか言わないんだろ。

 へへっと笑うカズミ君を見て、そして次に秘密の事を深堀されたくない私をじぃっと見つめて来るタダ。

 



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