お兄様と私、そしてプリン(191120 プリン)
水色のクロスの上に可愛らしいレースを敷くの。空に浮かぶ雲のようで綺麗でしょ?陶器のお皿は空の船。木製スプーンのオールを添えて、プルンと震える濃い黄色いの小山を乗せて進んでいく。小山の頂上には赤みを帯びたソース。それは山肌に甘く染み込み、麓にほろ苦い池を作ってこちらを誘うの。
「あぁん、今日もとっても美味しそう!」
「そう?喜んでもらえてよかった!」
目の前には榛色の目を優しく細めて微笑む美しい青年。彼は私の5つ上のお兄様。
お兄様ったらいつもと同じで極上の笑顔ね。彼の魔法の手で作られるもの達よりも甘い笑みだわ。でもその甘さはとっても危険。一度はまったら抜け出せなくなるんだから。私知っているのよ?女の人達が毎日しつこくお兄様を追いかけまわしているのを。勿論お兄様が彼女達を相手にしないのもね。
私はお兄様の甘い笑顔に優越感を覚えながら、大空に見立てたテーブルに頬杖をついて彼の作品を眺める。
「サリはいつもそうやってうっとりと眺めているね。食べないの?」
「だってこんなに綺麗なんだもの。すぐに食べちゃったらもったいないわ」
写真を撮ったりはしないわ。バシャバシャ撮ったらみんなが見たがるもの。私の為だけに作られた天国のスイーツ。私の脳裏にだけしっかりと保存よ。
どこの角度からみても完璧なフォルム。卵と砂糖と牛乳でできたそれは、自然で余計なものが何一つ入っていない。卵の自然な黄色にかかるカラメルソースは綺麗な赤色。焦げすぎないちょうどいいほろ苦さに留められたそれは、きっと優しい甘さに素晴らしいアクセントをつけてくれるはず。
木製スプーンのオールを手に取って、黄色い小山のどこから崩そうかとクルクルとお皿の船を回すと、そんな私の様子をお兄様がクスクスと笑いながら見守ってるわ。
子供っぽいって思ってる?そんなことないわ。お兄様は私に甘えられるのが好きなのよ?ほら今日もまるでお姫様みたいに私を扱ってくれる。お兄様の大きな優しい手が頭を撫でてから私の頬に触れて……。ふわりとバニラが香った。
いつまでも食べ始めない私を見て優しく笑ったお兄様は、私からスプーンを取るとお皿の上の黄色いそれをひとさじ掬う。
「さぁ、召し上がれ」
頬に熱を感じながら差し出されたスプーンを口に含むと、天使の柔肌のようにそれは甘くホロリと蕩けていった。
「んん~っ!!」
「美味しい?」
「美味しい!!」
私の返事を聞いたお兄様は目の前のプリンよりも甘い極上の笑顔で微笑んだ。
優しくて甘い、だけどちょっとほろ苦いプリン。
まるで私のお兄様。どんなに想ってもこの恋心が叶うことは無いから。
だから今だけは独り占めさせてね?
「お兄様大好き!」
プリンが描きたかっただけ、ただそれだけの作品w
このイラストを描いている最中は、某やんごとなきお子様が出てくるアニメのテーマ曲『プリン賛歌』を脳内再生しながら描いてました。
プリン食べたいw