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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第1章 異世界来訪編
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第7話【平原の旅路①】


 バッカスの鍛冶屋で冒険に行く向けての装備を整えてから4日後、ついにその日が訪れた。

 そう、今日はバベリアに向かう馬車がこの町から出る日だ。

 

 俺達はフィオナに言われた通り、早朝にモンゼン北部の町の端に来ていた。


 「いよいよバベリアに行くんだな、陽凪(かげなぎ)

 新天地へ行くのが待ちきれないのか、悠貴の放つ言葉にはとても弾みがある。


 「それにしても、町の端なのに大した賑わいだな」

 俺の周りを見渡すと、新米のフロンティアやフロンティアとして復帰を果たすもの、それを見送る家族や町の人々で賑わっていた。


 「おはよう、二人とも」

 「今日はしっかり時刻通りに来たな、カゲナギも少しは紳士としての振る舞いを覚えたか」

 普段の服装とは違い、赤を基調としたローブを羽織ったフィオナがニコッとしながら俺の方を向いてきた。


 「俺はもとから女は苦手だが、マナーを守らない人間じゃねぇーよ」

 「そんなに無作法な奴に見えるか?」


 「いいや、お前の猫背気味の弱々しい姿勢からはそんなワイルドさは感じられないさ」


 「そうですか」

 俺は張りの無い声で適当に返事を返した。


 「じゃ二人とも馬車に乗り込んでくれ」

 そう言われて俺達は近くにあった馬車に乗り込んだ。

 周りには俺達以外にも他のフロンティアを乗せた馬車が6台あった。


 一つの馬車には俺達以外にもう一つ別のパーティーが乗り込んでいた。


 「おぉ、ギルド長もこの馬車でしたか」

 「しばらくの間、お供させていただきますぜ」

 別パーティーの中のごつい体つきの若い男がフィオナに挨拶をした。

 「てことは、隣のが期待のルーキーか」

 挨拶した後、若い男が悠貴を見て小声で呟いた。


 「あぁこちらこそ、よろしく頼む」


 それにつられ俺達も別パーティーの人達と挨拶を交わした。


 その後程なくして馬車がここからは、ばかでかい壁にしか見えない巨塔バベリアへ出発した。


 「フィオナ様、お気をつけて」

 「ギルド長、早く帰って来てくださいね」

 「お前らフィオナの嬢ちゃんを頼んだぜ」

 町の群衆からはフィオナに対する声援が沢山聞こえてきた。

 その中にはギルドの職員や鍛冶屋の親父の姿もあった。


 「皆、しばらく留守にする」

 「また元気な皆の顔を見られるを楽しみにしておく」

 そう言ってフィオナは笑顔で町の群衆に手を振る。

 流石(さすが)は元大領主の家のご令嬢、群衆に手を振る姿は実にたくましい。


 それからフィオナは町が見えなくなるまで手を振り続けていた。


 「フィオナは大人気だな…」

 悠貴は和気藹々(あいあい)とした雰囲気でフィオナに話かけた。


 「まぁ、一応これでもモンゼンのギルド長兼行政府長だからな」


 今俺の前では人気者陽キャのお二人が長い間、自らが属していた集団について楽しそうに会話をし続けている。

 現実世界では集団に属していなかった俺にはその会話に入る余地はない。

 なぜ集団に属さないかって、それは俺がリアリストで客観性がある捻くれ者のボッチだったからだ。

 

  これは自論だが「私的な集団とは体外的な物に囚われた人々が作る欺瞞(ぎまん)に満ちた実にくだらない組織だ。そいつらは皆集団の中でしか自分の価値を証明できないし、集団に属し仲良しリア充感を出すことで自らの空虚な心を満たし体外的な自らのブランドイメージを示す。そんな集団に属する為ならそいつらは自分の心情や信念を殺し、無理にでも周りと足並みを揃えようとする」と俺は高校生活を送りながら思っていた。


 承認欲求や体外的なイメージの為に自らの心情や信念を曲げ周りと足並みを揃える事は、小野田陽凪(おのだかげなぎ)にとってはどこか自由を奪われるようで虫酸(むしず)が走る程気持ち悪いものなのだ。


 「何をそんなに思い詰めた顔をしているんだ?」

 フィオナが先程悠貴と話していた時とは違い落ち着いた声で問いかけてきた。


 「別にどうもしないよ」


 俺は現実世界の高校生が作る集団が嫌いだ、あんな欺瞞に満ちた組織など本質は(から)だからだ。

 だからこの異世界でも、そんな関係を俺は築きたくない。

 少なくとも今から一緒に冒険をするこいつらとはな。

 

 「魔物だー、ジャイアント・オークだ!」

 御者の親父が大声を上げると、車内の雰囲気は騒然とした。


 「こいつは運が悪い、初心者殺しに出くわすとわな」

 同じ馬車に乗っていた若い男が深刻な表情で言葉を放った。

 

 「君達は車内にいてくれ私が倒してくる」

 フィオナは慌てて、馬車を飛び出していった。

 

 俺達は馬車の隙間から外を様子を伺った。


 そこには既に大きな金棒が落ちており、4メートル程の大きさの緑色の獣が倒れていた。


 どうやら他の馬車に乗っていたフロンティアが、俺達よりいち早くジャイアント・オークの接近に気づき討伐したようだ。


 「アッハッハ、こんなん雑魚に『衛星の戦姫(サテライトプリンセス)』がわざわざ出て貰うまでもねぇー」


 「すまんな、君達」


 「いいんですよ、これぐらいは朝飯前ですよ」

 そう言って他の馬車に乗っていたフロンティアは自らの乗っていた馬車に戻っていった。


 程なくして馬車が再び進み始めた。


 「フィオナさっきの魔物について教えてくれ」

 俺は昼食を取りながら、弱キャラなりに知識だけはとフィオナに聞き込みをする事にした。


 「あぁー、あいつはジャイアント・オーク、二つ名は初心者殺し」

 「そこそこのパワーとタフさ、少しばかりの知性を持った新米フロンティア5人いても苦戦する相手だ」

 「この平原の魔物の中でも抜きん出て強い、通常は人気(ひとけ)の少ない夜に出没するんだがな」


 「そんな奴をあのフロンティア達は倒したのか」


 「まぁー、私なら一人で秒殺できるけどな」

 フィオナは自慢げに自らの胸に手を添えて話してきた。


 「そういえばあの人達、フィオナのこと『衛星の戦姫(サテライトプリンセス)』って呼んでなかったか?」


 「それは気にしなくていい、時期に分かるはずだ…」

 フィオナは照れくさそうにして、話を曖昧にした。


 「そうか、じゃ俺は眠くなってきたから、少し寝るわ」

 昼食を丁度食べ終えて俺は、午後の一番気持ちの良い時間帯に突入したため、本能のままに眠ることにした。

 俺達が進んでいる平原から吹き込んでくる風が馬車の中を駆け抜け、俺をさらなる快眠へと誘った。


御一読していただき、ありがとうございました。

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