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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第2章 蒼天大瀑布編
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第39話【この決戦の地に立つ】

 

 俺達『前線連合隊(フロント・ユナイツ)』は島の(ふち)にある湖畔に次々と飛空艇を着水していった。

 この島は真上から見れば円形で、地形はシャンパンタワーのように階段状に隆起した階層構造になっており、島の中央に行く程土地は隆起し標高が高くなっている。

 つまり、今俺達がいる島の縁は最も標高の低い場所にあたる。

 ちなみに島の縁からも空中に向かって水が流れ落ちており、飛空艇の上から見た時には島の外周がまるで水のカーテンに覆われているように見受けられ、何とも幻想的な光景だった。

 空中に向かって流れ落ちている水は、この島を包む球体状の雲の層まで届いており、それ以降は内部からは観測する事が出来なかったし、雲の層の外部からもそれによる目立った変化は見られなかった。

 そのため、流れ落ちた水はおそらく雲の層辺りで水蒸気に変わっているのだろう。


「やっと着いたー!」

「これで大地に足をつけるぜ」

 飛空艇も無事着水し、波乱万丈の空路の旅路も一旦は終焉を迎えて少しだけ気持ちが楽になった俺は手を組んで大きく背伸びをした。


「本番はここからだぞ」

 しばらく羽を休めていると悠貴と共にフィオナがこてこてとやって来た。

 飛空艇は湖畔の岸に限りなく近づけてある為、飛空艇から陸地に向かって足場をかけようと傍らにいた悠貴は全長3〜4メートル程の長いはしごを肩に乗せ両手で担いでいる。


 飛空艇からはしごをかけ俺たちは次々とはしごを降りて陸地に足を踏み入れ始める。

 と言ってもフィオナとブリューゲルさんは浮遊魔法で優雅に降り、悠貴は卓越した身体能力を使って岸までジャンプした為、結果的にミアと俺だけがはしごをせかせかと降りている。

 他の飛空艇の面々はお粗末なはしごでは無く、しっかりとした足場を用意し次々と足を地に着けていく。


「それじゃ各隊集合してくれ」

 ブリューゲルさんの呼びかけに応じ、各隊の6名の代表者を先頭に彼に相対する形で縦列に整列する。

 先遣隊から更に絞られたメンバーとは言え、『七星樹(セブンズスター)』の軍や隊を中心に数百名と言う人数がこの『前線連合隊(フロント・ユナイツ)』に参加している。

 他のメンバー達を間近で見るのは前線浮遊都市レコードグラムを発つ僅かな時間のみで、選抜された先遣隊の中の更に選りすぐりなだけあって、どの隊のメンバーを見渡しても猛者の雰囲気を孕んだ面構えをしている。


「それじゃ、これからの事なんだけど…」

「僕達の任された任務はあくまでも、後から合流する本隊と残りの先遣隊の安全を確保する為に今の『蒼天大瀑布』の状況を偵察する事だ」

「魔物やハイドラとの戦闘は残りの人員が揃ってからと言う事になる」

「と言う訳で、この『前線連合隊』を島の頂上にある大沼を付近を目指す探索組と飛空艇を始めとした物資などを守り後続との連絡などを取る防衛組に分けなきゃ行けないんだけど…」


「防衛組は私のパーティーが引き受けよう」

 ブリューゲルが一文を言い終える前にイージス=アイギスが挙手をする。


「それなら専守防衛を理念に掲げる我々『平原近衛隊』も防衛組に適任だろう」

 アイギスの作った流れに乗るように丁度よい間合いでシン=ギスタンが挙手をする。


 でも真の実力を発揮した時のシン=ギスタンさんってどちらかと言うと防衛派ってよりも特攻派なんだよな。

 性格も荒れ狂う猛獣みたいになってたし。

 まぁ…そんな事思ってもこのそうそうたる面子(めんつ)の中で発言をすることができる勇気を俺は持ち合わせていないんだがな。


「それと一つ…」

 シン=ギスタンの挙手から少し時間を置いてゼスタがもぞもぞと相変わらず覇気の雰囲気で挙手をする。


「どうぞ…」

 ブリューゲルさんは軽く顎を引いて、発言の許可を出す。


「探索組に有事があった場合に必要な最低限の人数以外の支援系魔法の使い手はこちらに残留させて良いかと…」


「そうだね… それじゃフィオナとアイギス、フロンティア以外の隊は支援系魔法の使い手を数名置いていってくれ」


「というわけで、この2チームと各隊の支援系魔法の使える者が防衛組で決定だ」

「異論は無いね?」

 ブリューゲルの問に対して誰も反論を投げかける者はいなかった。


「よし、1時間後探索組は再び此処に集合だ一旦解散」

 ブリューゲルが言葉が切れるのと同時に手を叩くと各隊隊列を崩し、それぞれの飛空艇に戻っていった。

 無論、俺達も身支度の為に一旦船内へ戻っていく。


 その後、フィオナの指示に従い倉庫やら何やらに必要な物資を取り出し荷物を整理しているとあっという間に1時間が経過した。


 その間に俺達のパーティーの役割も再確認した。

 近接戦闘を得意とする悠貴が前衛、オールラウンダーのフィオナが中衛、遠距離攻撃を得意とするミアと荷物持ちの俺が後衛だ。

 今回は特別に前衛にはブリューゲルさんも付く事となった。

 これは飽くまでも戦闘時の陣形と役割で、何も移動する時もこの陣形のままと言うわけでは無い。

 そんな事してたらドット絵時代のドラクエ方式で進む事になってしまう。



 ♢ ♢ ♢



「目的地はこの島の頂上、ハイドランの巣食う大沼に行き奴の様子を偵察する事だ」

「今此処が標高4000メートル付近で頂上は5000メートル付近にまで達し約半日、つまり今日の昼下がりには到達する予定だ」

「それともう一つ、先の戦いで飛来してきた魔物の大群がこの島から来ていたとしても流石にこの島の魔物の数が少な過ぎる、寧ろ不自然なくらいに一匹の魔物の気配も感じ取れなかった」

「何かこの島全体に異常が発せしてるのかも知れない」

「ただ今回は飽くまで探索、戦闘が目的では無い」

「無駄な戦闘は避け、存命する事を第一に考えてくれ」


「それじゃ出発だ!」

 真剣な表情で説明していたブリューゲルさんは一転し、まるでピクニック前の小学生のように元気よく拳を天に突き上げた。

 しかし誰もノリに乗ってくれ無かったご様子で一人寂しそうに拳を下ろす。


 かくして数多の滝の音と常緑広葉樹林が支配する『蒼天大瀑布』の頂上を目指して歩みを進める事となった。


 この探索組の布陣はこうだ。

 前方はブリューゲルさんを含むフィオナのパーティー、右翼をセルギウス=ベルドハイム率いる『漆黒の暴牛』、左翼をアメン=アンク=フィン王子率いるオリエント聖王国軍、後方をゼスタさん率いるルーペスト帝国軍が担っていて、真上からみたらひし形のような陣形だ。


「なんで俺までこんな前方に」

 俺はブリューゲルさんを筆頭に歩む探索組の最前列、ブリューゲルさんの傍らに布陣してしまった。

 荷物を大量に持ち、他力本願な俺にとっては危険な位置だ。

 近くにはフィオナを始めとしたパーティーメンバーが多くいるので、もしもの事があればきっと助けてくるだろろうが。


「そう気負わないでくれよ」

「適当に雑談でもしながら、道中を楽しもうじゃないか」

 ブリューゲルさんはわくわくした表情で俺と視線を合わせる。


「それじゃ、早速質問を…」


「なんだい?」


「この『蒼天大瀑布』って雲の層に覆われていて外界と遮断されているのに、なんで外と変わらずこんなにも明るいんですか?」

 そう俺はこの島に来てからこの事がずっとこのことが疑問で仕方がなかったのだ。


「それは僕にも分から無い、今だこの世界の人類が解明できていない未知の事案だね」

 ブリューゲルさんは更に弾んだ声で返答した。


「君はこんな言葉を知っているかい?」

「『計画の無い目標はただの妄想に過ぎず、根拠を欠いた迷信はただの幻想のままだ。だから僕達、フロンティアは鮮明な計画を以て妄想を現実に昇華させる。まだ見ぬ未知に挑み、迷信が真実か幻想かを世界に示す』」


「そうやって幾月も幾年もの時を重ねて、世界の常識はここバベリアから一新されてきた」

「そうしてこの世界の人類は確実に歩みを進めた、その人類史の歩みの糧は何だと思う?」

「今、僕たちがまさに今やっている『冒険』さ!」

 何となく言わんとしようとしている事は分かるがその言葉の真意が分からず、俺は思わず首を傾げてしまう。


「つまり何が言いたいかと言うと、この世界はフロンティアと言う職業が時代を創って来たと言うことだ」

「だから、そう重く考えずこの瞬間に君自身が時代の先端に立っているこの状況を最楽しんで欲しい」

 俺のいつもはやる気が無さそうで腐った目の奥に潜んだ眼光を少しだけ光らせた。

 柄にもなく少年漫画の主人公のような彼の希望に満ちた声色と表情に少しだけ刺激を受けてしまったのだ。


 俺は少し頬を緩ませて視線を合わせてきた彼に向かって頷いた。


 この島に点在する滝壺や湖は人類が到達出来ていない、自然の神秘の深さを示すように深々とした色彩を放ち、島を包む雲の層がまるで嘘じゃないかと感じる程、まばゆい光を水面に受け反射させ輝きを放っている。

 そんな未知に満ちた最前線を世界最強のロクでなしと、何だかんだいい関係を気づいてきた仲間達と、各国の最高戦力の猛者たちと共に歩んでいる。


 御一読していただき、ありがとうございました。

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