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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第2章 蒼天大瀑布編
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第37話【大戦の真相】

 

 時刻は昼下がりになり、幾千もの魔物との大戦を終え自らの飛空艇を防衛をしきった俺達は空腹と疲労を回復する為、船内で昼食を取る準備をしていた。


「お疲れ様、皆無事だったかい?」

 フィオナと悠貴はすでに着席し、俺とミアも昼食の乗ったプレートを運んび終えようとし、まさに今から昼食を取ろうと言う時に扉が開き、気さくなオーラと共に銀髪の青年が入室してきた。


「ブリューゲルさんおかえりなさい」

「こちらは大した怪我をした人はいませんでした」

 フィオナは彼が俺達の身を案じてくれた事に謝意を伝えるように誠実な返答をする。


「それは良かった」


「ブリューゲルさんの分の昼食もありますから座って下さい」

 プレートを両手で持ったまま、テーブルの前で直立していたミアは水色の髪を横に揺らしブリューゲルさんに疲労を癒やして下さいと言わんばかりの、はにかんだ笑顔を見せた。


 なんだよ、今の仕草と表情天使じゃん。

 たまには俺にもそんな感じで振る舞って欲しいな。


「ありがとう、それじゃ頂こうかな」

 ブリューゲルさんはミアの誘いに笑顔で答え着席した。


 テーブルの上に食事が揃ったのを見計らって、悠貴は無口になりすぐさま食事に取り掛かり始める。


 最近は余り気にしていなかったけど、神海磯悠貴(かみがそゆうき)と言う人間は大の食事好きで、彼は食事をする時だけは漫画の主人公のように大食らいで、食事に集中する余り他の事に意識が向かず知力が少しだけ欠け、いつもの完璧超人感が喪失してしまうのだ。


「とりあえず、今回の大戦は皆のおかげで無事切り抜ける事が出来た」

「ありがとう」

 ブリューゲルさんは手を止め、軽く俺達に頭を下げた。


「いえいえ、私達はただ自らの飛空艇の防衛に努めただけですよ」

「この大戦の一番の功労者はセルギウスさんやアイギスさん、シン=ギスタンさんを始めとした、あなた達『漆黒の暴牛』で先陣を切ったメンバーですよ」

 謙遜の意が籠もっているのだろう、フィオナはブリューゲルの謝礼におどおどと控えめな感じで返答する。


「それにしても、シン=ギスタンさんの引き起こした嵐で飛空艇の操舵が出来なくなった時はどうしようかと思いましたよ…」

 フィオナから飛空艇の操舵を任されいた、ミアからすればあの暴風は大変な障害だっただろう。

 甲板にいた俺はあの暴風で飛空艇から投げだされそうになり、間一髪の所を悠貴が俺の手を捕まえ助かったのだ。

 今回は『銀翼竜』を討伐し少し気が大きくなっていたが、あの時にはすでに、やはりEランクフロンティアの俺がこの場にいるのは場違いだと思い直していた。


「よく頑張った、ミア」

 フィオナはミアを(ねぎら)うようにそっと頭を撫でた。


「ありがとうございます!」

 ミアは幸せそうに満面の笑みを浮かべた。


 なんて可愛いロリなんだろう。


「君達の活躍は聞いているよ」

「フィオナはもちろんの事、ユウキは魔法をイメージした物に具現化する事で灼熱の龍を生み出し、敵を焼滅したとか、そしてカゲナギは遂に魔剣を使いこなし氷刃と化すことで氷塊を生み出し敵を殲滅したと」

 ブリューゲルは向かいに座っていた俺と悠貴の方に前のめりになり熱く語ってくる。


 それでも悠貴はブリューゲルさんに対して見向きもせずもの凄いスピードで食事を平らげている。


「いえ、俺は別に魔剣を使いこなした訳では無いんですけどね…」

 そう俺は確かに魔剣の力を使い氷刃と化す事で敵を討った。

 しかし、その過程にはやや難がありその事を誇らしげに自慢できる程、俺は恥知らずでは無かった。

 俺の必殺他力本願戦法には実質的に俺自身の力は一切関係なく、その事に背徳感を覚え苦笑しながら返答してしまった。


「どう言う事だい?」

 ブリューゲルさんは少しだけ身を引き、首をかしげる。


「カゲナギは『魔蔵石』と魔剣の性質を使って無理やり氷塊を生成したんですよ」

「まぁ…カゲナギらしい他力本願の捻くれた考えが今回は功を奏した点については今回は良かったと思いますが…」

 フィオナは少しだけ頬を膨らませ、そっぽを向いている。


 いつから彼女にツンデレ属性が付与されたのかな?

 俺は一時の気の迷いから抜け出し、再び正常な思考で考え直してみた。

 別に彼女にツンデレ属性が付与された訳では無い、俺がした事が結果的には成功した為、『魔蔵石』と言う貴重な産物を大量に消費した事を叱ろうにも叱れない反応だ。


「アッハハハ… 詳しく説明しますね」

 俺はむくれるているフィオナを見ながら苦笑しブリューゲルさんに俺が魔剣を使って何を引き起こしたのかを事細かに説明した。


「なるほどね、魔力をストックする性質を応用して魔力の飽和状態を作り出したと言う事か」

「やはりカゲナギはカゲナギらしいな…」

 ブリューゲルさんは俺の説明を聞き終えると感嘆した後に、どこか神妙な面持ちで俺を見てきた。


「今回は運良く理屈屋で捻くれている俺の考えが的中しただけですけどね…」

 俺は再び手を食事に運び直した。


「さて、今日一番話したいのはこれからの事だ」

「目的地である『蒼天大瀑布』は目前だが、先の大戦の影響で当初の予定とは違い明日の早朝に到着する予定になった」

「だから今晩も空の上で一夜を過ごしてもらう」

 そう俺達『前線連合隊(フロント・ユナイツ)』は前線浮遊都市レコードグラムを発って2日目、つまりは今日の夕方には『蒼天大瀑布』に到着する予定だったが、先の戦いで多少足止めをくらい時間をロスしていたのだ。

 その結果、3日目の早朝に時間がずれ込んだのだろう。


「わかりました」

 俺達は揃って頷いた。


「ここまではただの連絡事項として、先程他の隊の者とも少し話してきたのだがあの異様な数の魔物大軍、君達はどう思う?」


 突然のブリューゲルさんの問に場には少しだけ沈黙の空気が広がった。


「そもそもあの数の魔物の大軍は珍しいんですか?」

 どうやら悠貴はすでに食事を済ませご満悦のようで、いつもの冷静沈着な身のこなしと落ち着いた雰囲気の声に戻っていた。


「あぁ… あの数の魔物と戦った事が無い訳では無いが、その時は浮遊島の中、陸上でしか戦った事は無かったんだ」

「その時は植物系や陸上で活動する魔物なども含んでいたが、しかし今回は飛行できる魔物ばかりだ」


「魔物達が飛来してきた方角や数から考えるに『蒼天大瀑布』で何か異常が発生し、そこに生息して魔物が一斉に島から離れたと言うことでしょうか?」

 ようやくフィオナが答えらしい答えを返した。


「やはりそう思うかい、僕も同じ意見何だけど… 今『蒼天大瀑布』で発生している異常の原因はあの島の主、九つ首の魔物『ハイドラ』の覚醒じゃないかと睨んでいる」

 ブリューゲルさんの表情はいつにも無く少し強張っている。


「「『ハイドラ』の覚醒?!」」

 この場に少しだけざわついた空気が流れ始める。


「あぁ… 『蒼天大瀑布』は常時温暖で常緑広葉樹林が存在する生物が生息するにはこの上無い環境だ、もちろんそれは魔物だって同じことだ」

「そんな環境を魔物が何の理由も無しに放棄するとは考えにくい… つまり魔物がその環境を捨ててまであの島から逃げ出さなければいけない程の命の危機が魔物達に迫ったと言う事だ」

「あの島でそんな状況を起こせるのはアイツしかいない…」


「でも何故、このタイミングで?」

 フィオナが席を立ち上がり緊迫した表情でブリューゲルさんに質問する。


「理由までは僕にも分から無い」

 ブリューゲルさんは本当に僅かな時間沈黙した その際、彼は一瞬だけ俺のと悠貴の方を目で追っていたような気がした。


「だが『蒼天大瀑布』に異常が起きている事は確かだろう」

「正直、飛んで逃げることが出来無いあの島の陸上生物が今どうなっているかも想像がつかない」

「どちらにせよ『蒼天大瀑布』に『ハイドラ』がいる以上、これから進むのは決して平坦な道では無いだろね」


「大丈夫ですよ、俺達は負けません」

 悠貴は緊迫したこの空気を変えようとしたのか、不敵に笑って見せた。


「君は本当に頼もしいな…」

 ブリューゲルさんもそれに合わせて少し頬を緩ませた。


「僕は一旦、外の様子を見てくるよ」

「昼食ご馳走さま」

 ブリューゲルさんは立ち上がり、ゆっくりと扉を開けて船内から出ていった。


「ところでフィオナ、『ハイドラ』ってそんなに恐ろしい魔物なのか?」

 俺は残った昼食を食べながらフィオナに質問した。


「アイツは大瀑布の下に出来た大沼に巣食い、たった一体だけで『蒼天大瀑布』に地獄を顕現させる厄災の巨獣、3年の前の大探索で師匠以外の人類は誰一人として叶わなかった」

 流石(さすが)は人類の最前線で待ち構えている魔物だ、フィオナのセリフはまるでRPGの魔王の事でも語っているかのようだった。


「やっぱり帰ろうぜ…」


「はぁ…またそんな事を言って…」

 フィオナは俺のうなだれぶりに頭を抱えていた。



 ♢ ♢ ♢



 飛空艇の甲板で一人、整然と進行方向を見つめている男性がいた。

「あの大蛇は本物だ」

「彼を守る為にもやはり『前線連合隊(フロント・ユナイツ)』を組んで良かった…」


 御一読していただき、ありがとうございました。

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