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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第2章 蒼天大瀑布編
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第32話【魔空域の旅路④】

 

 今日も又、世界樹の光は塔の中を満たしバベリアは朝を迎えた。

 前線浮遊都市レコードグラムの地を飛び立ってから2日目の朝だ。

 予定では世界樹の光が消える、今日の夕方頃には目的地である『蒼天大瀑布』に到着する予定だ。


「おはようございます、今日は意外と早起きなんですね」

「夜遅くまで補修作業をしていたと聞いてたのでちょっと意外でした」

 俺は昨日、ブリューゲルさんに教えて貰ったジンジャエールもどきの『ライトエール』を片手に船内の食卓に座り気持ちの良い朝を迎えていた。

 そうしていると寝室から出てきたミアが目を擦りながら、挨拶をしてきた。

 小柄でまだまだあどけない彼女の日常的な姿を見ているとなんだか心が癒やされる。


「おはよう、なんか逆にちゃんと働いたら早起きしたくなってな」

「もしかしたら、俺の睡眠時間が長いのは自堕落な生活を送っていたからかもな…」


「そうですよ、適度に動いてちゃんと働けば、(おの)ずと規則正しい生活も送れるはずです」


「そうだな、でもあんな夜遅くまで起きて上空3000メートルで肉体労働なんてもうしたくないぜ」

 俺は苦笑いしなが、やれやれと言う感情を顔に出した。


「それより、『ライトエール』はいるか? 朝に飲むこいつも最高だぜ」


「僕は結構です、炭酸飲めないですよ」


「こんなスカッとする飲み物を飲めないなんて、人生の半分は損してるぞ」

「まだまだガキだなぁ」

 俺は炭酸を飲めない、まだまだ幼いミアをからかってやろうと少しだけ煽り気味の口調で話しかけた。


「別に炭酸が飲めないからってガキってわけじゃなくないですか?」

「確かに僕はまだまだ子供ですけど、そんな子供よりも戦闘力の無いカゲナギって子供以下、つまりガキ以下ってことですよね?」

 ミアは俺の煽りに反応して少しだけむきになって反論してくる。


 まぁ確かに彼女をからかう事に集中してきて俺の理論は余り筋の通っていないものだったしな。


「しょうが無いだろ、魔力も無いただの一般人なんだからよ」

「俺だってフロンティアの端くれとして魔物を倒せないわけじゃないんだぞ」


「本当ですか?」

「昨日だって『銀翼竜』が目の前に来た途端、泣きそうな勢いで叫びながら僕たちの方に慌てて逃げてきたじゃないですか」


「そりゃそうだろ、五大飛竜種なんてAランクフロンティア以上で討伐できるレベルの魔物なんだろ」

「それじゃ、ミアは一人で『銀翼竜』を倒せるのかよ?」


「まぁ、一匹ならなんとか策を練れば倒せない事も無いですが…」

 央都センターで見たミアのパラメーターが書かれた石版によれば彼女はAランクフロンティア程の力は持っていなかったはずだ。

 それを把握していた俺はミアの返答の意外さに少しだけ驚いた。


「ミアってCランクフロンティアぐらいのパラメーター値だよな?」


「はいそうですけど」


「本当に昨日のあの竜を一人で討伐できるのか?」

「フィオナから聞いた基準によれば、五大飛竜種ってAランクフロンティア以上じゃないと相手にならないって…」


「あれは単純なパラメーター値の目安がAランクフロンティアぐらいが丁度いいパラメーター値って事で実際には各々で使える魔力属性や発現しているスキルも違いますから、各々の工夫次第でパラメーター値の壁は超えれるんですよ」

「それに仮にもフロンティアとしてフィオナさんのパーティーにいる以上、自分の身ぐらい自分自身で守れないと恥ずかしいですよ!」

 ミアは得意げな表情で俺の方を向いてきた。


「すごい、すごい、五大飛竜種を一人で倒せなんて」

 余りの正論に俺はミアに対抗する術をなくし、棒読みで褒める事によって更に煽り続けた。


「図星のようですねカゲナギ?!」


「お前達は何を朝から言い争っているんだ?」

 俺達の口論で起きたのだろう? フィオナも寝室からこちらの部屋へと出てきた。


「あぁフィオナさん聞いてください…」

 ミアは起床してから俺と会って起きた出来事について事細かにフィオナに説明した。


「つまりはお互いを煽っていたら、それが口論まで発展したと…」

「フッフッフ!お前ら、二人揃ってまだまだガキじゃないのか?」


「フィオナさん…」

 ミアはフィオナが味方してくれると思ったのだろう。

 フィオナが俺達両者ともの事をまだまだ子供だと笑い、ミアは少しだけしょんぼりした顔をしている。


「それにしてもカゲナギもちょっと子供ぽい所を見せるようになって、少しだけ安心したよ」

 フィオナは成長した我が子をを見も守る母親の様な優しい眼差しで俺の方を見ている。


「どういう意味だ…?」


「私達に少しだけすきを見せてくれるようになったて事だよ」

「私が君に出会ったばかりの頃は弱いくせに人に頼ろうとはせずに、すきを見せない様にと自分自身さえも偽っているたちの悪い捻くれ者に見えたんだ」

「でもここに来るまでの旅路を通して君は私達パーティーメンバーを信頼してくれるようになって、素直に自分の弱い所も見せてくれるようになった」

「私達に混じり気の無い素直な感情をそのまま、ぶつけてくれるようになった事が嬉しくてね」


「なんか、照れ臭くなるような事をいきなり言い出すなよ」


「いいや…私は本当にそう思うし、私は君自身が少しずつ変わっていると言う事を君に伝えたかっただけだよ」


「まじで止めえくれよ…」

 俺は自分がどんな人間であるかと言う認識、いわゆる自己同一性と言う奴では自分はもっと淡薄で寂しい人間だと思っていた、しかし今のフィオナの言葉を聞いて自分が他人の目にどう写っているかを知り、そのギャップに少しだけ恥ずかしくなった。

 俺は自らが照れている事を悟られぬように『ライトエール』を片手に持ったまま甲板へと飛び出していった。


「出ていちゃっいましたね」


「まぁ…カゲナギも思春期真っ(ただ)中の普通の青年だって事だよ」

「結局の所私も含めて、フロンティアなんて人種はまだまだガキなのさ」


「今なんて言いましたか?」


「私の独り言だ、別に気にしなくていい」

「さぁミア、朝食の準備をしよう」


 一方、俺は甲板で悠々と大空に浮かんでいる浮遊島を見ながら物思いに耽っていた。


「くそぉ… らしくないな」

 この世界に来たばかりの俺なら決して感情などで言葉を発するような奴ではなかった。

 確かに今までの旅路でパーティメンバーから他人を信じる事の意義は少なからず教えてもらい、それを理解したはずだ。

 だが俺は今でも捻くれていて、冷めていて、いつも感情の外側に立ち、客観的な事実から言葉を選び取っているはずだったと思っていた。

 しかしいつしか、周りにはそんなふうには映らなくなっていたのだ。


 俺はどう処理していいか分からない自分とは何なのかと言う途方も無い問の答えを考え始めたいた。


「まさか、異世界に来てまでこんな事を考えるなんてな」

 俺は『ライトエール』を飲み干した勢いで思わず、独り言を吐露していた。


 御一読していただき、ありがとうございました。

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