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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第2章 蒼天大瀑布編
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第29話【魔空域の旅路①】

 世界連盟地下


「先程、先遣隊の中から精鋭部隊を組織して『蒼天大瀑布』に向かったとの連絡があった」

「その部隊は前線浮遊都市レコードグラムにいたブリューゲルが指揮をとっているとのことだ」


「なんと、此度の大探索クエストはあの男が動くのか」

「3年前の『雲海大渓谷』の攻略の時はあの男が不在で大変苦戦を強いられたと聞く」


「あの男も我々の思い通りに動けば助かるのですが、どこの国にも属さず、誰にも従わず、困ったものですな」


「しかし、あの男の力はこの世界が生んだ()()のようなモノ、我々の目的達成の為には欠かせない」


「『七星樹(セブンズオーダー)』の各国からも選りすぐりを大探索クエストに行かせてある、後は朗報を待つだけだ」

「そうだろ、モンテリオール公国の…?」


「あぁ… 安心しろ」

「この大探索が成功しても失敗しても奴は確実に情報を持って帰るだろう」



 ♢ ♢ ♢



 俺達は約上空4000メートルに浮かぶ『蒼天大瀑布』を本格的に目指す為、前線浮遊都市レコードグラムから離陸してすぐに上空3000メートル以上の空域に入っていた。

 ちなみに『蒼天大瀑布』まではおよそ2日間、再び空の旅を楽しまなければいけないようだ。


「ここからは魔物の強さの次元が少し違うぞ」

「この前戦った『深碧竜』などの五大飛竜種もざらにいる」

「それに出現頻度も高いからいつ戦闘になってもいいように備えはしっかりしておくことだ」

 この世界に来て3ヶ月ちょいが経ったとは言え、バベリアについてまだまだ知らない事だらけの俺と悠貴は船内でこれからの事についてフィオナに訪ねていた。


「どんな強敵だろうが望むところだぜ」 

 悠貴はまたラノベの主人公のようなセリフは言いながら不敵な笑みを浮かべている。


「そんな…せっかくの空の旅が…また命がけかよ」

 俺は今回の空の旅が元いた世界に居た時に憧れていた優雅な空の旅路では無い事は以前からも知りつつも、やはり少しだけ落胆した。


「当たり前だ、出会ったばかりの頃にも言ったが最前線付近ではAランクフロンティア以上の実力で無いと命の保証はほぼ出来ないと言っていい」

「だが、今回はブリューゲルさんもいるし私の魔法があればカゲナギとミアの護衛は可能だ」

 確かにミアは魔法も使えるし、なんと言っても固有スキル『一発必中』を持っているから連れ行く価値はあるのだろうが、俺は魔力なしの一般人だから足でまといに成るといけないし船内でずっとイモっててもいいよね? うんきっといいに違いない。


「もちろんカゲナギも『蒼天大瀑布』の地に降りてもらうぞ」


「いやでもね…ね…」

 俺は笑った表情を一切崩すこと無く、フィオナに行きたくないとあえて言葉を発さずに訴えかけた。


「なにせこのパーティーは小規模だからな、君が行かないとアイテムサポーターが居ないんだ」

 フィオナは俺の事をアイテムサポーターと、ちょっとかっこよいい響きで言ってるけど、簡単に意訳すれば荷物運びってことだよな。


「はぁ…」


「それに……カゲナギは私の側に居てくれないと困る」

 フィオナの声は小さくなり、もじもじと恥じらいながら言葉を発した。


 なんだよ、その反応にそのセリフは勘違いしてしまうじゃないか。


「なんて情熱的なアプローチなんだ! 陽凪(カゲナギ)もついにモテ期到か…」

 俺の隣にいた悠貴は俺とフィオナを煽り始めた。


「勘違いするなー!」

「どうせ船内に居てもこの空域の凶暴な魔物は襲ってくる、ここまで来たら安全な場所なんて無いんだ」

「私はカゲナギを守ると誓ったんだ、だから飛空艇の警護は他の者に任せて、私の近くに居たほうが護衛がしやすいって意味だ」

「私は貴族ユースティア家の当主として一度した誓いを破るわけにはいかないからな…」


「悪かったよフィオナ、分かったからそんなに迫って来るなよ」

 フィオナは余程焦ったのか、席を立ち悠貴からの誤解を解こうとしていた。


 ここまで焦るってことはワンちゃんあるのでは。

 いやいや、フィオナはただ単純に俺にみたいな冴えに男に好意を抱いていると勘違いされたく無いだけなのだろう。

 俺は異世界とかに憧れてはいるが、対人関係に置いてはかなりのリアリストなのだ、叶わぬ夢を見て恥をかくのは御免被りたい。


「盛り上がってるね、3人とも」

 甲板から戻ってきたブリューゲルさんとミアが俺達の方へ近づいてきた。

 ミアは頬を膨らませ少しだけ不機嫌そうに悠貴を睨んでいる。


「もうさっきの話はいいのかい? そのモテ期やらなんやらの」

 この二人は一体いつから俺達の会話も聞いていたのだろうか。


「それはいいんです!」

 悠貴のみならずブリューゲルさんにまで煽られたフィオナは少しだけ頬を膨らませている。


「それじゃ、僕がさっきのフィオナの説明の続きをしてあげよう」

「バベリアの上空3000メートル以上の今僕らがいる空域は『魔空域』と呼ばれている」

「フィオナも言った通り、五大飛竜種などの強力かつ凶暴な魔物で溢れかえっている場所」

「その理由はもちろん人類が未踏の浮遊島が多数存在し、そこを住処(すみか)にしている魔物達が近隣の空域を飛び回っているからなんだ」


「だからこそこの魔空域は修行にはもってこいの場所だ、皆戦闘には積極的に参加してもらうぞ」

 フィオナはさっきの慌てた様子とは取って替わって真剣な声色になっていた。


「よっしゃー!」


「フィオナさんとブリューゲルさんにいい所を見せられるよう頑張ります!」


「俺は荷物持ってますんで… 戦闘はよろしくです〜」

 戦闘への意欲が高く気合十分な悠貴やミアとは対象的に俺は戦闘への意欲が低いですよアピールの意味を含んだ発言をした。


「ユウキとミアはいいが…カゲナギのそのやる気の無さはなんだ?」

「そんなんでは過酷な魔空域では生き残れないぞ」

 案の定、その意志はフィオナにはしっかりと伝わっていたようだ。


「だって、俺弱いもん…」


「カゲナギはバッカスさんが打った魔剣があるはずだ」

「『蒼天大瀑布』につくまでの約2日で必ず数回戦闘が起きると思うから、その魔剣を使いこなして五大飛竜種を1匹は倒せ、その剣が真価を発揮すれば五大飛竜種など目じゃないだから」

 そんな事言われても、現状俺一人でこの魔剣を使って倒せるのはハイゴブリンとかそこらの雑魚モンスターだけだ。

 何せ俺はまだこの魔剣に蓄えられている魔力の出力がほぼ出来ていない状態なのだ。


「今、カゲナギの携えてる剣がバッカス工房の剣って言ったのかい?」

 ブリューゲルさんは興味津々な様子で自らの顎を押さえながら、まじまじと俺の腰に携えている魔剣を見ている。


「えぇ… この剣はモンゼンに居た鍛冶屋の親父さんに作って貰ったものですけど…」

 俺は腰から剣を外し、手に持ってブリューゲルさんに差し出した。


「へぇ〜 これが噂に聞く名工の作った魔剣か…」

 ブリューゲルさんは差し出された魔剣を鞘から抜くと透き通った青色の刀身を掲げ船内の照明に照らしていた。


「あの親父さんってそんなに凄い鍛冶屋なんですか?」


「何言ってるんだカゲナギ、バッカス=クロムウェルはフロンティアなら誰でも知っている全世界でも指で数えるぐらいしかいない魔剣職人の一柱なのさ」

「彼の魔剣が一度市場に出回れば最低でも一振り金貨1000枚以上、時には金貨5000枚いったと聞いたこともある」

 あの親父さんもそんなに凄い人だったのか、てか俺達って異世界転移序盤から中々やばい人達と出会っていたんだな。


「見た所によると水属性の魔剣だね、それに魔力を持たないカゲナギが所持している所から察するにこの魔剣は魔力をストック出来るんだろ」


  「はい、一応魔力なしの俺でもこの魔剣を使えば疑似魔法的な感じで氷を生成出来ますけど」


「素晴らしい! まさか彼の魔剣を生で触れる日が来るなんて」

 しばらくの間ブリューゲルさんは俺の魔剣にべったりくっついて離れなかった。


 ドカン


「なんだ今の音は?」

 いきなり飛空艇が突発的な爆音と共に激しい揺れに見舞われた。

 悠貴やミアも少しだけ慌てふためいた様子になっている。


「甲板に出るぞ」

 俺達はフィオナの呼びかけて爆音の大きかった甲板へ向かう事にした。


「なんだあの竜は…?」

 甲板に出た俺達の目に即座に写り込んで来たのは白銀色に光り輝く竜だった。

 身長は『深碧竜』と同じ5〜6メートルぐらいだろうか、体格も先の竜とさほど大差は無い。

 あまり尖った外殻では覆われておらず、腹や背の部分はとても肉厚そうで頭部や翼だけが少し尖っている。


「あれは五大飛竜種が一角『銀翼竜』だ、さぁカゲナギその魔剣の真価を見せてくれ」

 俺はブリューゲルさんに肩を叩かれ、『銀翼竜』の近くまで飛び出しってしまった。


 いやいや、ハイゴブリン止まりの俺にどうしろと言うのだ。


 ガロォーー

 俺の目の前では『銀翼竜』がもの凄い唸り声をあげていた。

 いよいよ魔空域最初の戦闘が幕を開ける。


 御一読していただき、ありがとうございました。

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