第2話【フロンティアギルド】
「おぉーーーーー!すげぇー」
俺と悠貴は二人揃って、フロンティアギルドの規模の大きさと、外見の荘厳さに思わず感嘆の声を上げた。
今俺達はフロンティアギルド前にある広場にいた。
その広場には様々な店が並んでおり、鎧やローブを着た冒険者らしき人たちで大勢賑わっていた。
「じゃあ、フロンティアギルドの中に行くぞ」
俺たちはギルド入り口前にある大階段を登り、大きな門をくぐってギルドの内へと足を踏み入れた。
ギルドの中に入った途端、ギルド内の視線が一斉にこちらに向いた。
まぁそれはおそらく、俺達の格好がこの世界では異彩を放ていたからだろう。
しばらくどうしたら良いかわからずに周りを見渡していると、こちらに案内人の女性がやってきた。
「フロンティアギルド兼モンゼン行政府へようこそ、今日は何の御用でこちらに来たのですか。」
「あぁーフロンティアになるための手続きをしに来ました」
俺が要件を言おうとする前に悠貴が先に話し始めていた。
「フロンティア申請登録なら10階で行っていますので、ご案内しますね」
俺と悠貴は言われた通りに案内人の後をついていくと、エレベーターらしき乗り物に乗って上の階へ上昇して行った。
「案内人さんこの上に上がっていくやつは何です?」
「これはエレベーテという乗り物です。今のギルド長さんがバベリアから持ち帰った技術で製作した優れものです」
「なんでも重力魔法を応用した超高等な魔法技術を使って稼働してるらしいですよ」
俺たちはこの乗り物の名称が現実世界のエレベーターとあまりにも似ていた為驚きを隠せなかった。
「悠貴、この乗り物の名前余りにも現実世界のあれに似てないか?」
「きっと、たまたまだろ」
「どうかされましたか?」
俺たちがひそひそ話をしていると案内人が不思議そうに声をかけてきた。
「あぁーいえ、なんでもないです」
ちょうど返答し終えた時にエレベーテが止まった。
「着きました、10階のフロンティア申請登録所になります」
「エレベーテを出られましたら、目の前の受付にお声がけください、では私は失礼します」
俺たちは早速受付の若い女性に声をかけてみた。
「あのー、俺たちフロンティアになりたいんですけど」
「フロンティアの申請登録ですね、承知しました」
「ではいくつか質問させていただきます」
別に大した事は聞かれないだろうが少しだけ緊張してしまう。
「まずお名前を教えてください」
「俺は小野田陽凪、でこっちのイケてるやつが神夏磯悠貴です」
「歳はいくつですか?」
「二人とも17歳です」
「身長と体重はどのくらいですか?」
「俺は身長172センチ、体重は55キロです」
自分でも思うが痩せているというよりはモヤシだ。
まぁースタイルがいいといえばそうなのかもしれないが。
「俺は身長179センチ、体重は71キロです」
流石は現実世界では野球部だった悠貴さん。
鍛えられた筋肉質で男らしい体つき、そして足も速い。
受付の若い女性は手慣れた手付きで、手続きの操作をしていた。
「では出身地はどこですか?」
俺たちは簡単な質問に淡々と答えていたのだが、この質問にだけは悩まされた。
正直に答えてはこの世界の人が知らない国の名を言ってしまい、身につけてる物もおかしいのに身元も不明となると、いよいよ不審人物として連行される可能性もある。
とわいえ俺たちはこの世界の国や地域など、ここモンゼン以外何一つ知らない。
「俺達、流浪人なので特定の出身地などはありませんよ」
悠貴がまさかの返答をした。
「わかりました、ではこれで口頭による登録は以上になります」
まさかの流浪人と言ってなにも言われなかった事には内心驚いた。
だがとりあえずナイスという意味を込めて、俺は悠貴に向けて指でグットマークをした。
「では今からあなた達のフロンティアとして能力値をを測らせていただきます、私と一緒についてきてください」
俺たちが連れてこられたこの建物の地下だった。
そこは薄暗くひんやりとした空気に包まれていて、部屋の床全体には魔法陣のような紋様が刻まれていた。
「おいおい大丈夫かよと」俺は小さな声で独り言を呟いた。
「お二人共不安そうな顔ですね」
「ここフロンティアギルド兼モンゼン行政府の地下には大きな魔力霊脈がありまして、皆さんの能力値を測る魔法陣を起動する為の魔力供給に適した場所なんですよ」
その言葉を聞いて俺達は少し肩の力を落とした。
「ではどちらからでもいいので魔法陣の中央に移動してください」
「じゃ俺から先に行かせてもらうぜ」
そう言って俺は駆け足で魔法陣の中央へと足を進める。
いよいよ、ここから俺の異世界冒険譚が始まるんだと、胸を踊らせていた。
「では魔法陣を起動します」
受付の若い女性は床に手を置き、小声で何かを言った。
すると床に刻まれた魔法陣が薄い青色の光を放ち浮び上がってきて、俺の身体を覆い始めた。
その光は5〜6秒程経過して俺の胴体のあたりに集まり石版のような物に変化した。
そこには見たこのない文字が書かれている。
だが何が書かれてあるのかは、何故か理解することができた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
項目 数値 ランク
筋力 98 F
知力 652 B
耐久力 89 F
魔力 EX
俊敏性 203 D
練度 0 F
運 174 E
魔力属性 不明
スキル 未発現
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「今手にしている石版にはあなたのパラメーターが記されてあります」
受付の若い女性は俺の手元にある石版を覗き込んだ。
「カゲナギさんのパラメーターは魔力の数値が無記入でランクEXの所が気になりますが、後は平均以下の物が多いですね」
「まぁこれから頑張ってくださいね」
俺は期待してたような大した数値が出なくて、少々物足りない気分になったが、しかし最初はこんなものだろうと思い込むことで、自分を納得させた。
「じゃ次はユウキさんお願いします」
そう言われて悠貴は魔法陣の中央に向かって行く。
すれ違いざまに俺は悠貴から「ドンマイ」と一言声をかけられた。
悠貴が魔法陣の中央に立ち、その後は俺の時と同じ流れ進んでいく。
一連の行程が終了し、俺と受付の若い女性は悠貴の石版を覗き込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
項目 数値 ランク
筋力 512 B
知力 702 A
耐久力 531 B
魔力 462 C
俊敏性 520 B
練度 0 F
運 712 A
魔力属性 火、水、風、土、力
スキル 固有『英気繁栄』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「練度以外全パラメーターC以上で固有スキル持ちだと、、、」
俺は石版を見た瞬間自分と悠貴のパラメーターの差に愕然とし、その時ばかりはいつも半分死にかかっているやる気のない目が大きく開いた。
「しかもユウキさん、初めから魔力属性を5つもお持ちだなんて、、、始めてみましたよ、こんな人」
「練度さえ上げればバベリオでも有数の戦力になりますよ」
受付の若い女性とても興奮気味になっていた。
「陽凪すまん、チート能力持ってたの俺みたいやな」
悠貴が申し訳無さそうに苦笑いして俺に向かって手を合わせてきやがった。
『英気繁栄』というスキルあれは固有と書いてあるしおそらく主人公補正みたいな物だろう。
陽キャに補正までかけたら、更に磨きが掛かって光すぎて陰の部分が消失してしまうではないか。
異世界に来たら普通弱キャラにこそ補正がかかり、強キャラの奴らと対等以上の力を得るというのが定跡のはずだ。
「それはそうとお二人の能力値も分かりましたし、今からフロンティアになる前の軽い講習を受けてもらいます」
俺の沈んだ表情を見て、受付の若い女性は明るい声色で俺達に呼びかけた。
♢ ♢ ♢
コンコン
「どうぞ」
「ギルド長至急お耳に入れたいことが、」
そういってギルド職員の男性はギルド長の耳元で小声で話をした。
「やっと来たか、待ちくたびれたぞ」
御一読していただき、ありがとうございました。
よろしければブックマーク登録、評価をお願い致します。