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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第2章 蒼天大瀑布編
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第23話【空路の戦闘:対深碧竜】

 

「悠貴、ミア…!」

 俺が船内に入って二人を呼び出そうとした時、ミアはともかく悠貴までもが三時のおやつタイムに突入していた。


「どうしたんだ? 陽凪(かげなぎ)

「お前もおやつが欲しい時間帯に突入したのか?」

 はぁ… こいつは本当に食べ物が関わると、完璧超人が転じてバカになる。


「バカ、そんなんじゃねぇーよ」

「武装して早く甲板に出ろ! 飛竜とやらがこっちに向かってきているんだ」


「飛竜? なんかカッコイイな」

 はぁ…神様… 早くコイツをいつもの完璧イケメン君に戻してください。


「何言ってるんですか、ユウキ」

「飛竜はAランクのフロンティアでも苦戦する程の強力な魔物達なんですよ」

「速く、甲板に出ましょう!」

 予備知識もある分、この時ばかりは悠貴よりミアの方が状況判断が的確で速かった。


 その後、俺は2人を連れ甲板で待っていたフィオナの元へと駆けていった。


「やっと来たか、飛竜はもうすぐそこまで迫っているぞ」

 そう言いながらフィオナは飛竜を指差しす。


 フィオナが指差した方向に視線を向けてみるとそこには緑がかった色をしており、体長5〜6メートル程で先端が鋭利に尖った翼を羽ばたかせた生物が50匹程の群れになって浮遊していた。

 その飛竜は翼のみならず、爪や尻尾、背中までもが鋭利に尖った外殻(がいかく)に覆われている。

 分かりやすく言うのであれば、モン○ンのリオレイアがもっとスマートで刺々しくなった竜とでも言っておこう。


「あれは五大飛竜種の一角『深碧竜(しんぺきりゅう)』ですね」

「『深碧竜』の特徴は五大飛竜種の中でも一番俊敏で風属性の魔法を行使してきます」


「今回の戦闘は私が指示を出す!」

「ユウキは私と共に前衛で近接戦闘を、ミアは後衛で私達の支援攻撃をしてくれ」

「あぁ… カゲナギは危ないからとりあえずミアのさらに後方で待機だ」



「了解だ」


「了解です、フィオナさん」


「あ… はい… 頑張ってぇ…」

 フィオナの指示に対して悠貴とミアが瞬間的に反応する中、俺だけは一瞬躊躇い鈍い返事を返した。


 程なくして再び拡声された声が先遣隊中に響き渡った。

「『先頭の飛空艇『深碧竜』と接触、総員戦闘へ移行せよ」


「あの群れの過半数は先頭にいる大国の猛者達が引き受けるだろう」

「私達、少人数のパーティーは残りの半分を手分けして引き受ければいい」

「せいぜい、多くて3匹だろう…」


「わかりました、僕は魔法がいつでも発動できるよう詠唱を始めますね」


 詠唱、それは魔法が行使できる者がある一定の領域に達した場合にのみ行えるモノだ。

 俺も実際に見るのは初めてだが、絶大な魔力を消費する代わりに自身が形にしたい魔法を言葉によって具現化する手段。

 詠唱者が形にしたい魔法をイメージすれば、具現化可能な魔法の威力や精度を個人の力量に応じて詠唱の時に放たれる言葉は(おの)ずと思い浮かぶらしい。


 この世界のこう言う所はファンタジーぽくっていいよなー。

 まぁ、俺は詠唱を行える域に達していないんけどな。


「我射手の名手なり、我が()たる魔力を(もっ)て、万物を残滅せし大いなる旋風(せんぷう)を聖弓に(まと)わせ!」

 詠唱が終わった瞬間、ミアの持っていた弓に視認できる程の空気の流れが出来ており、弓を持っていないもう一方の手には小さな竜巻のような物に覆われた白色の矢が握られていた。


「待機完了です、いつでも()てます!」


「じゃ、私も魔力を使うか…」

「『サテライト』!」

 フィオナがその一言を発した瞬間、彼女の周りを無数の淡い光の粒が取り囲み始めた。


「綺麗だ…」

 俺は誰にも聞こえぬよう、小さな声で呟いた。

 そのあまりにも幻想的で今にも世界に溶け込みそうな彼女の発光する美しい姿を見て俺は『衛星の戦姫(サテライトプリンセス)』という二つ名に抱いていた疑問が全て解けた。

 彼女の今の様相はまさに世界中の誰もが羨望(せんぼう)する(アイドル)そのものであり、周りを取り囲むその光の粒は彼女を照らす衛星なのだ。


「久しぶりだな、この姿になるのわ」

「皆にアイドルとか女神とか言われ、過度に敬われて気持ちが悪いから余りこの魔力を使いたくなかったんだけどな…」


「凄すぎますよ…」

 俺の前にいたミアは少しだけ肩を揺らし、かすれた声で言葉を放っていた。


「ミア、どうして泣いているんだ?」

 フィオナはミアの感情の揺らぎに気づき、振り返って問いかけた。


「だって…… ずっと憧れていたフィオナさんの力を本当に生で見れるなんて…」

 ミアの中の押さえきれない感情が溢れらしたのだろう、少しだけミアの目が(うる)んでいる。


「泣くなミア、本番はこれからだ」

 そう言ってフィオナはミアの方へ近寄り幻想的な発光した姿のままミアの頭を撫でた。


 これが師弟愛ってやつか… なんか俺も泣けきたぜ。


「3人とも、そろそろ『深碧竜』がお見えのようだぜ」

 悠貴は愛刀『夕薙(ゆうなぎ)』を片手で構えたまま、俺達に呼びかけた。


「ミア、準備してくれ」


「はい!」


 次第に深碧竜が2匹俺達の乗った飛空艇に接近し、甲板に降り立った。


「今だ! 射て!」


「『デストロイ フワァールウィンド レイ』!」

 フィオナの指示に従い放たれたミアの矢の風圧は凄まじく、放たれた瞬間、後ろにいた俺までもが吹き飛ばされそうだった。

 なのに矢の進行方向にいた悠貴とフィオナは平気そうな顔をして立っている。


 片方の深碧竜目掛けて一直線上に飛んだ矢は深碧竜の翼に直撃し、その瞬間飛空艇を大きく揺らすほどの暴風が巻き起こり、頑丈そうな翼の外殻をえぐった。

 それに伴い深碧竜は大きな唸り声を上げた。


「すみません… 魔力切れです」

「僕の仕事はここまでです、後は任せました」


「想像以上の威力だ、頑張ったな」

 フィオナは後ろを振り向き、ミアに優しく微笑んだ。


「ありがとうございますぅ…」

 そう返事を返した後、ミアは甲板に(ひざまず)いた。


「おい、大丈夫か?!」

 ミアの後ろで待機していた俺はその状況を見てとっさにミアの方へと駆け寄った。


「大丈夫ですよ、魔力が枯渇(こかつ)しただけです」

 俺はミアを背負い元いた位置まで後退した。


「次は私達の番だ、ユウキ!」


「おう! ミアが弱らせた方は任せてくれ」

「いくぜ相棒!」

 悠貴は改めて両手で刀を構え、切先を深碧竜へと向けている。


「『ウォータープリズン』!」

 その魔法を唱え瞬間、ミアが弱らせた深碧竜を球状の水の檻の中に捉えた。


「『エンチャント バーニング』」

 剣に(まと)わりついた炎は前見た時のモノより小さいが、その分とても強いエネルギーを感じる。

 おそらく剣の周りの小さな範囲にそのエネルギーを集約させているのだろう。


 次の瞬間、水の檻で閉じ込めた深碧竜に向かって、愛刀『夕薙』を投げたのだ。

 すると水の檻の中で大きな爆発が起こり、爆発が収まった頃には中にいる深碧竜は息絶えていた。

 これは水蒸気爆発か… 流石(さすが)学力面でも秀才な悠貴だ、しかも飛空艇に影響が無いように威力調節までしてやがる。

 おそらくウォータープリンズンの中心部分の水だけを爆発に使い、外界と接する部分の水は膜として使うことによって外に被害を出さないようにしているのだろう。


「後一匹は任せたぜ、フィオナ」

 そう言って悠貴は息絶えた深碧竜に刺さっていた愛刀を抜いていた。


「じゃ… 今回はこの子でいくか」

「『疑似精霊作成:大精霊シルフ』」

 フィオナの周りを漂っていた光が次第に集約し結合していった。

 そして、その結合した光は一人の美しく清廉な女性を形作っていく。


「あれは…?」


「あれはフィオナさんの魔力のひとつ疑似精霊作成、おとぎ話に出てくる四大精霊を始めとした多様な精霊を擬似的に具現化して使役させる力です」

「大精霊シルフは風の魔力を司る大精霊で均整の整った美しい女性の姿をしていると…」

 俺の背に乗っていたミアが魔力切れなど気にせず、興奮した声色で說明してくれた。


「久しぶり、シルフ」


「久しぶりです、我が主様」

 シルフの声は知的で大人っぽくて、女性としての魅力がとても感じられる声だった。

 てか、疑似精霊って意思があるんだな…


「シルフ、呼び出してそうそう悪いがあの竜倒してくる?」


「承知しました、我が主様」

 シルフの両手の上には高密度に圧縮された球体型の大気の塊が。

 次の瞬間、俺の目では確認することが出来なかったがシルフは深碧竜の目の前まで移動していた。


「安らかに清く眠りなさい」

 そう言って、シルフは深碧竜の胸にその球体型の大気の塊を当てた。

 次の瞬間、深碧竜の胸元に風穴が空き悲痛の叫びを上げること無く倒れた。


「任務遂行完了です、主様」


「ご苦労だった、戻ってくれ」

 フィオナにそう言われシルフの体はフィオナの周りを取り囲む光の粒へと還っていった。


「これで討伐完了だな」

 悠貴は満足げな表情でフィオナの方を見ていた。


「『深碧竜』全ての討伐を確認、このまま目的地までの飛行を続行せよ」

 俺達のパーティーが深碧竜を討伐をするや否やすぐさま、拡声された声で先遣隊中に指示が響いた。


「どうやら、最後だったみたいだな」

 俺達の周りの飛空艇に乗っていた者達は先に討伐を終え、ミアや悠貴の力か、久しぶりに前線復帰した『衛星の戦姫(サテライトプリンセス)』の力のどちらを見物しようとしたかはわからないが、俺達の飛空艇には沢山の視線が向けられていた。


「このパーティーでの初の飛竜種との戦闘にしては、とても良かったぞ」

「後少しで中継基地のある島に着くはずだ、それまで船内でゆっくり休んでくれ」

 休むも何も俺はただ、傍観していただけなので魔力消費は(おろ)か、疲労も(ほとん)ど溜まっていない。

 

 俺は一体何の為にこんな大空にいるのだろう?

 そんな疑問を抱きながらも俺は最前線へ向けた空路を進み続けるのだった。


 御一読していただき、ありがとうございました。

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