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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第2章 蒼天大瀑布編
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第21話【夜明けの港】

 

 俺達がフロンティアギルド本部を訪れてから1週間後、ギルド本部より大探索クエストが正式に発注された。

 大探索クエストの発注は人類の最前線を塗り替えた、あの戦い以降一度も発注されていなかったらしく、実に3年ぶりの事らしい。

 そして、その3年ぶりの大事の情報は(またた)く間に世界中へと広がっていった。

 そのせいか、この央都センターには各国の軍や各地で名を挙げる猛者たちが続々と集い始め、ものものしい雰囲気に包まれている。


 そして央都センターはものものしい雰囲気に包まれたまま、1ヶ月の時が流れた。

 時は今、大探索クエスト【『蒼天大瀑布』の攻略】に向けて、先遣隊が旅立つ日だ。

 先遣隊に参加している俺達、央都センター内にある飛行場に来ていた。


「ここが『夜明けの港(ブレイクポート)』か…」

 世界連盟本部に隣接する広大な緑の芝で覆われた敷地にその場所はあった。

 ここにはバベリアの第一線で探索を行う世界中のフロンティア達の飛空艇が停められている。

 王族や皇族、貴族、士族、一般人、はたまた社会的階級の低い所の出自であろうと後に英雄と呼ばれる人々は皆、この飛行場から大いなる空へと旅立っていくそうだ。

 そんな人類の歴史を切り開き、古き常識を壊し、新たな時代を創る者達が地を離れ旅立つ、この飛行場をこの世界の人々は『夜明けの港(ブレイクポート)』と呼んでいる。


「なんだ? あのバカでかい飛空艇は…」

 俺の横で驚いた表情になっている悠貴の指差す方向に顔を向けた。


「これこそがファンタジーってやつなのか…?」

 俺が視線を向けた先にあったのは、ファイナルフ○ンタジーで何度も見た、大空を翔ける巨大な飛空艇だ。

 元いた世界で例えるなら、世界一周旅行で使われる豪華客船をそのまま空を飛ばす乗り物にした感じだ。

 その飛空艇は二つの巨大な石塔と、その真中に少し赤みがたったレンガで作られた城を乗せ、その城の頂点には赤色の獅子の旗が掲げられている。


「あの炎獅子の旗はルーペスト帝国の飛空艇だ」

「あの飛空艇を含めバベリアに駐在しているルーペスト帝国軍は指揮権は特使たる第1皇女が持っている」

「しかし… 実質的に現場の指揮権を行使しているのは、あの爆殺女、第2皇女ルーペスト=フィア=スカーレットだ」

 フィオナは顔をしかめながら、帝国の第2皇女様の名前を口にしていた。


「あぁ、1ヶ月前ぐらいにアリアさんの店で会った気の強そうな皇女様かぁ…」

「もう、俺は会うのは勘弁だぜ」

 あの皇女様みたいな、怖い女性とはなるべくお関わり合いを持たないようにしよう。


「今はそんな事はどうでもいい、あっちの格納庫に私達の飛空艇が収められている」

 俺達は飛空艇が収められいる、格納庫へと向かった。


「あら、『衛星の戦姫(サテライトプリンセス)』じゃありませんの」

 俺達が格納庫の中に歩みを進めていると、背後から聞き覚えのある高飛車な女性の声が聞こえてきた。

 恐る恐る振り返って見るといかにもお偉い雰囲気を出した赤髪の麗人と、その隣に白色のマントを羽織った騎士の様な姿をした左目に傷のある黒髮の中年男性が立っていた。

 背丈は悠貴よりも高く180センチ以上は確実にあるだろうが、体格はとてもコンパクトで顔色がなぜだか悪そうでやる気が無さそうな雰囲気を出していた。


「スカーレット様の話をするから、本当に来ちゃったじゃないですか」

 ミアは俺の近くに寄り、小さな声で呟いた。


「これは、ルーペスト帝国第2皇女『裂爆の戦姫エクスプロードプリンセス』様ではありませんか」

貴女(あなた)も先遣隊に?」

 フィオナは社交辞令なのだろうか、丁寧な言葉とにこやかな表情で話している。

 まぁそれもそうか… 貴族家の当主と大国の皇女様だもんな。

 しかしながら両者とも腹の底ではきっと笑ってなんかいないのだろう。


「いいえ、(わたくし)は後に続く本隊の指揮を任されておりますわ」

「先遣隊の指揮はこちらのゼスタが一任いたしますわ」

 スカーレット様に紹介された、その中年男性は一歩前に進み俺達に近づいてきた。


「お久しぶりでございます、『衛星の戦姫(サテライトプリンセス)』…」

「我が主に代わりルーペスト帝国の先遣隊の指揮は不肖ながらこの私めが務めさせて頂きます」

「姫君の従者殿達もどうかお見知りおきを…」

 その中年男性はフィオナの前で深々と一礼をして歩みを一歩戻した。


「3人はパーティーメンバーだ、決して従者などでは無く私と対等な関係ですよ」


「これはとんだ無礼を働いてしまいました、どうかお許しを」


「別にいいですよ、こちらこそよろしくお願いします」

 こんな年上の騎士風の人にも軽いノリで話せるなんて、悠貴のコミュ力はどうなってるんだよ。


「まぁ、ゼスタが同行しますので先遣隊は安心だと思いますが、せいぜい死に急がない事ですね」

 そう言って、スカーレット様は高飛車に笑い始めた。


「もしかしたらスカーレット様達、本隊が到着する前に決着が着いてるかもしれませんね」

 そう言うと、フィオナも微笑まように静かに笑い出した。


「それは頼もしいお言葉ですわ」

 フィオナとスカーレット様の間にはアリアさんの店で会った時のようなバチバチのオーラが出ている。


「スカーレット様、その辺りで…」

 ゼスタさんは自信が無さそうにスカーレット様の肩に手を当てた。


「分かっていますわ、ではその威勢の良さでせいぜい私達本隊に楽をさせてくださると嬉しいですわ」

 スカーレット様は最後までフィオナに皮肉った発言を投げかけながら去って行った。


「それにしても帝国は(えら)いな大物を引っ張り出してきたな」


「あの騎士みたいなおっさんの事か? 見た目はあんまし強く無さそうだったけどな」


「見た目はな… だが彼はルーペスト帝国最強と名高い剣士、その強さの根幹にあるのはこの世界でも1000万人に一人しかいないと言われている魔力属性『空間』の持ち主だからだと言われている」


「私もゼスタさんの噂は聞いたことがあります、何でもフロンティアになれば確実にSランク級の実力があるとか…」


「彼が本気になった時、彼の一太刀は千の斬撃になる…」


「どういう事だ?」


「私にもゼスタ殿の技を一度見たことがあるだけで詳しい事は分からない」

「何せ、特異2属性と呼ばれる『時』と『空間』の魔力属性は未だにその(ほとん)どが解明されていない未知の魔力属性で、(わず)かに分かっている事は特異2属性のどちらかを魔力属性と得た者はその他の魔力属性を得る事が出来ないと言うことぐらいだ」

「もしゼスタ殿と『蒼天大瀑布』の主ハイドラが対峙する事があれば、あの剣技を見れるかもしれんな」


 一件落着した俺達は再び格納庫に向かい始めた。

「着いたぞ、この格納庫だ」


「これが俺達の乗る飛空艇…」

 格納庫の中に入り、俺達の視界に入ってきた飛空艇は実に美しい姿をしていた。

 大きさは中型漁船程で船体は木製で作られており、船体の側面には左右対称に虹色に輝く美しいヒレ、後方には同じく虹色の輝きを放つ尾ビレのような物が付いている。

 また船体の上部には真っ白い帆が取り付けられていた。

 そして船体の上には古風な日本屋敷のような物が建てられていた。

 その飛空艇は虹色に光り輝き天を泳ぐ魚を模しているのだろ。


「この飛空艇は昔、私の師匠が乗っていた飛空艇だ」


「これがあの有名な… 伝説のフロンティアを乗せた七色の飛空艇」

 俺の隣りにいたミアはこの飛空艇を見て泣きそうになっていた。


 しばらくして、この飛空艇を格納庫の中から出す作業が終了し大地を離れる準備が整った。

 辺りを見渡すとルーペスト帝国を始めとした大国の巨大な飛空艇や屈強なフロンティア達の飛空艇がずらりと並んでいた。


「いよいよ、ここまで来ちまったか」

 俺は少し、気だるそうに感じで呟いた。


「カゲナギ諦めろ、これより先は後戻りできんぞ」


「ミアはどこまでもフィオナさんと伴に…」


陽凪(かげなぎ)、世界の歴史を塗り替えようじゃないか」


 程なくして、全飛空艇の前に立つ老人より出陣の合図が聞こえてきた。


「先遣隊、総勢約1000名の精鋭の諸君… ギルドマスターのガレスじゃ」

「これより諸君らは人類の新たなる夜明けの第一陣としてここより遥か南方の上空4000メートルに浮かぶ『蒼天大瀑布』の攻略に向けて旅立ってもらう」

「諸君らは進むべき道を切り開き、第二陣である本隊と合流しハイドラを討ち倒し必ずこの地に帰還してくれ」


「これは?」


「力属性の応用魔法だ、音を拡声させているのだろう」

 魔法ってのはほんと便利だな、こんな力が現実世界であったら世界経済めちゃくちゃだぜ。


「先遣隊、離陸開始!」


「オォォォーーーー!!!」

 その日『夜明けの港(ブレイクポート)』では後に英雄と呼ばれるであろう数多(あまた)の勇士達が大いなる空路を駆け上がって行った。


 御一読していただき、ありがとうございました。

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