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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第1章 異世界来訪編
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第16話【白縹の夜】


 央都センターについた日の夜、俺達は食事をするため一旦宿舎から出て繁華街に来ていた。


 「綺麗だなぁーーー」

 俺は世界樹から放たれる淡い光に当てられ輝く、白い都市の姿に感動していた。


 「何度見ても綺麗ですね、ここは」


 「陽凪(カゲナギ)、俺達の世界なら世界遺産レベルだな!」

 きっと悠貴も、この都市が美しすぎが(ゆえ)に世界遺産という言葉が出てきたのだろう。

 いや待て、今俺達の世界って口走ったよな、コイツ…


 「悠貴ちょっとこい…」

 俺は悠貴を繁華街の路地の端へと引っ張り出した。


 「いきなりどうしたんだ?」


 「おまっ、今俺達の世界とか、世界遺産とか言ってたよな?」

 「俺達が異世界人である事は、この世界ではフィオナしか知らないんだから…」

 「ミアにさっきもバレかけただろうが、ちょっとは気を付けてくれよ」

 

 悠貴は常時は頭も抜群にキレる完璧超人なのだが、いいヤツ過ぎてたまに天然なところがある。

 特に飯の前と食事中、食事に目が無い悠貴は気分が高揚し少しだけ知力が低下している気がする。


 「あ、ごめん」

 「俺としたことが、気が付かないうちにそんな事を言ってたんだな」

 悠貴は申し訳なさそうに、頭を掻きながら謝罪の言葉を述べてきた。


 まさかの無自覚…?!

 たった今、俺の予想は確信へと昇華した。

 こいつは食事関連の事に夢中になるあまり、その時だけは脳内が食に支配されているのだ。


 「俺、飯の事考えると他の事をよく考えられなくなるんだ…」

 確かに悠貴が静かに食事を取っているのを見たのは、バベリアに来る前のしみじみとした雰囲気になったあの夜だけだ。

 それ以外の時は、食べる量はエグい、食べるスピードは速い、そしてよく喋る、いつもの完璧超人の面影はほとんど残っていない。


 「まぁ…今後は気を付けろよ」

 

 「おう…」

 

 悠貴に軽い説教をした後、すぐさまフィオナ達の(もと)へ戻った。

 

 「君達どこに行ってたんだ?」

 「もう着いたぞ、ここが私が師匠とよく通ってた店 」


 そこは繁華街のメインストリートから少し奥の細い路地に入り、少し階段を登った小高い場所にあった。

 なんと言えばよいのだろう、そんなに大通りからも離れておらず、かと言って店の入口には小さなランプが置かれているだけで目立つわけでも無い、そして少し小高い場所にあるため白縹に染まる都市の景観を伺う事が出来る、大人の最高の秘密基地の様な店構えだ。

 

 チャリン

 「いらっしゃい」

 店のドアを開けると心地よいベルの音と同時に、優しそうな女性の声が耳の中に響き渡る。


 「フィオナちゃんーーー! 久しぶり!」

 店のカウンターにいた女性はフィオナを見るとすぐさま、こちらに駆け寄ってきたフィオナにハグをした。


 その女性は王道ゆく綺麗な金髪の持ち主で、髪型はポニーテールだ。

 身長はフィオナと同じくらいの160〜165センチ程だろう。

 そのたおやかで優しい声と(あで)やかな顔立ちから歳はおそらく20代半〜後半程だと推測できる。

 そしてエプロンの上からでも(うかが)える豊満な胸がそれらと相まって、とても母性本能のような何かを感じさせる。

 まぁ、俺は別に胸なんかには興味ないんだけどなぁ……… 嘘です…

 


 「アリアさんお久しぶりです」

 フィオナはその女性との再会が余程嬉しかったのだろうか、とても声を弾ませていた。

 

 「元気だった?」


 「はい、おかげさまで」


 「まぁ、とりあえず座って、座って」


 そう言われて俺達はカウンターの前のテーブルに腰掛け、料理を注文した。

 幸いな事に今日の客は俺達しかいないようで、すぐに食事が運ばれてきた。

 その後、フィオナはこの店の店主のアリアさんにバベリアに戻ってきた経緯や俺達の事について話した。

 

 「そうだったのね、サヤちゃんがいなくなってもう3年が経つのね…」

 「でも、フィオナちゃんが新しいパーティーメンバーと旅することになって少し安心したわ」

 「サヤちゃんがいなくなった時は一人でも捜しに行くって言ってて飛び出しちゃって、色んな所に怪我して帰ってきて…」


 「アリアさん、恥ずかしいから止めてくだい!」

 フィオナは頬を赤らめながら、アリアさんの話を止めていた。


 「フィオナさんにもそんな過去があったんですね、ちょっと可愛いです」

 ミアはなんだか嬉しそうに呟いた。


 「とにかく、3人ともフィオナちゃんをよろしくね」

 

 「任せてください!」

 

 「カゲナギ、お前は守られる側だろうが…」


 「アッハッハッハ…」

 勢い出た言葉に正論をぶつけられ俺は苦笑するしか無かった。


 「それにしても、ユウキ君はよく食べるのねぇー」

 アリアさんも流石(さすが)に悠貴の食べっぷりには驚いたのだろう。


 「アリアさん、ここの飯まじで美味しいです!」


 「はい、僕もそう思います」


 確かにここの食事はこの世界に来てから色々な物を食べてきたが、この世界に来て一番最初に食べた金貨1枚の料理とためを張るぐらい美味しい、いやそれ以上かもしれない。


 「可愛いお客さんとイケメン君にそんな事言われてたら、お姉さんもやる気出ちゃうな」


 あぁーあ、俺はこの世界に来て何度こいつの固有スキル「ザ・グッド・インプレッション」で生み出される展開を見ればいいのだろうか。


 チャリン


 「アリアさん、いつものある?」

 心地よいベルの音と同時に赤髪の女性が店内に入ってきた。


 「あらスカーレットちゃん、いらっしゃい」


 アリアさんがスカーレットと言った瞬間、フィオナは席から立ち上がり入り口の方を見ていた。


 「スカーレット………?!」

 次の瞬間フィオナはその赤髪の女性を見て、目を大きく開け名前を呼んだ。


 「フィオナ…?!」

 相手側の赤髪の女性もフィオナを見て、驚いた様子を隠しきれていなかった。


 「なぜあんたがいるのよ?」


 「それはこちらのセリフだ」


 この雰囲気はさっきのような感動の再会という訳ではなさそうだ。

 この二人の表情や口調から、何やら一波乱起きそうな険悪な雰囲気が感じ取れてしまう。

 女どうしの戦い程怖いものはない、どうか何も起きませんように!

 

 この美しい都で、俺が寝床について快眠出来るのはもう少し先のようだ…。


 御一読していただき、ありがとうございました。

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