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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第1章 異世界来訪編
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第14話【央都への旅路 終幕】

 

 央都センターへの旅路を開始してから約50日、ミアがパーティーに加入した町を()ってから20日程が経過した。


 今、俺達は果が無いかのように広大な平原地帯を進んでいる。

 平原と聞くと今まで旅してきたジュナの大森林や砂漠地帯に比べたら、安全で平和な場所のはずが……


 「やべぇー!悠貴さん、フィオナ様、ミアちゃん助けてくれーーー」

 俺は今、大きく口を開け、牙を剥き出しにした人型植物に食われそうになっていた。


 「『バーニング』!」


 「『ウィングス アロー』!」

 

 俺が慌てて三人の方へ走り寄ると、悠貴は灼熱を、ミアは矢に疾風を乗せ放った。

 次の瞬間、体の横を一瞬だけ高温の風が通り過ぎた。

 後ろを振り返って見ると、矢が通り過ぎた場所は草が焼け小道が出来ており、その道の終わりでは人型植物は(うな)り声を上げて、燃え尽きようとしていた。


 「(おとり)ご苦労さまです、カゲナギ」

 「僕の矢で火傷されませんでしたか?」


 「火傷はしてないが、俺は囮じゃねーよ! Fランクの最弱フロンティアなんだからしっかり守って欲しいんですが…」


 「それにしてもユウキの炎の威力は絶大ですね!」


 なんだよこのボクっ娘は、自分から質問して置いて俺の返答には無視しやがって。

 まぁ…可愛いから許すけど。


 「二人とも連携攻撃は上々だな」


 「フィオナさん、ありがとうございます!」

 ミアは憧れのフィオナに褒められて花が咲くように嬉しそうな表情になる。


 「カゲナギは大丈夫か?」


 「あぁ、問題ない…でもなんで後衛の俺の方に魔物が湧くんだよ…」


 「陽凪(かげなぎ)、今回は運が悪かっただけだ」

 「いつかいい事あるって!」

 そう言って俺の肩を優しく叩いてきた。

 

 そう言えば、こいつ運もAランクだったよな、それに引き換え俺はEランク…

 はぁ… 俺は落胆の声を上げる。


 「『クレイジープラント』を抜ければ、央都は目前なので気を落とさず頑張りましょう」

 ミアも俺に励ましの言葉を掛けてくれた。


 そう、今俺達がいるのは平原地帯でも央都に近い場所に位置している。

 央都の近く、それは世界樹の近くであるという事を意味する。

 必然的にあの天をも突き抜けるバカでかい木が生きていく為には、大量の栄養と魔力が入った土壌が必要だそうだ。

 その為、世界樹周辺の大地は栄養や魔力が多く、その影響でこの辺り一帯は『クレイジープラント』と呼ばれる植物系の凶暴な魔物が出現しやすい危険地帯なのだ。


 その後も、俺達は先程戦った人型植物の大軍や色合いも形も国民的ゲーム「マ○オ」に出てくるパックンなんたらに似ている、人食い植物を次々と討伐していった。

 まぁ…俺達と言っても実際に倒しているのは悠貴とミアで、フィオナは高みの見物、俺は囮になって逃げ回っているだけなのだが。


 というか、こんなに長くフィオナと旅をしていてフィオナの戦闘シーンを一度も見たことがない。

 野宿の時はいつも一人でどこかに行って、メインディッシュを獲ってきてはいたが、いつもは俺と悠貴の修行の為だと言って高みの見物をしているもんなぁー


 「ミア…」


 「なんですか? カゲナギ」


 「フィオナって本当に強いのか?」

 俺はフィオナと旅をしてきて、率直に疑問に思った事をフィオナの大ファンであるミアに尋ねてみることにした。


 「何言ってるんですか!フィオナさんは現在このバベリア内でも5本の指に入るとも言われている実力者なんですよ!」

 「二つ名『衛星の戦姫(サテライトプリンセス)』に見合った、戦闘中の……」

 俺がフィオナについて尋ねると、ミアはまるで俺が悠貴にアニメやゲームについて話す時のように熱弁しようとしていた。


 「カゲナギ、私はSランクフロンティアだ、実力に関しては信用してくれていい」

 フィオナは慌ててミアの熱弁を遮る、俺に話しかけてきた。


 「もちろん信用はしている、でもずっと前からフィオナの『衛星の戦姫(サテライトプリンセス)』っていう二つ名が気になってて…」


 「それは前にも言ったが時期に分かる…今は私の事より自分の鍛錬に集中しろ!」

 「だいだいお前はまず、自分の身を自分でだなぁ…」

 フィオナは顔を赤くして、少し早口で何かをはぐらかそうと俺に説教を始めた。


 「わかったから、もう聞かないから」


 「そうか…ならいい…」

 俺が二つ名の事について聞かないと言うと、フィオナは安堵の表情で説教を止めた。

 

 

 ♢ ♢ ♢



 央都センターへの旅路を旅路を初めて55日が経過した、俺と悠貴がこの異世界に来てからおよそ2ヶ月が過ぎた。

 俺達は約5日間かけてクレイジープラントを抜け、いよいよこの旅路も終わりが見えてきている。


 「皆さん、見てください央都センターが見えましたよ」

 ミアは俺達よりも少し先に駆け出し、子どもらしい声を上げ、遠くの方を指差した。


 「うぉー! すげーーー!」

 「あれが央都センターか…」

 俺と悠貴は初めて見る央都センターの姿に感銘を受けた。

 今、俺達は少し小高い崖から央都センターを斜め下に見下ろしていた。


 世界樹の前方に都市を取り囲むように円形の真っ白い外壁が建てられている。

 また都市の後方、世界樹の側面には、外壁と同じ色のばかでかい城が堂々と建っていた。

 更に都市の上空には青白い光を放つ超巨大な正八面体のクリスタルのような物がいくつか浮遊しており、そこから結界のような物が世界樹を包み込む形で張り巡らされている。

 その姿はまさに創作物語に出てくる魔法都市そのものである。


 「あのクリスタルみたいなのから出てるの何だ?」

 

 「あれ水晶結界、世界樹の光を緩和したり、浮遊島からの落下物から都市全体守っている」


 「じゃ、あのばかでかい城は?」

 フィオナが俺の質問への返答が終わるのを待っていたかのように、続けざまに悠貴もフィオナに質問した。


 「あれは世界連盟の本部だ、あの中にフロンティアギルド本部もある」

 「ここバベリアは完全中立地域なんだ、どこの国の何者であっても、このバベリアでは自由に探索することが許されている」

 「この話を話し出すと長くなる、続きはまた話す」

 「とりあえず央都センターの中へ向かうぞ」


 こうして俺達はこのバベリア内、最大の都市である央都センターへと到着した。


 この旅を終えて良かった事、それはボクっ娘のロリ『ミア』がパーティーメンバーに加入してくれた事だ。

 別に俺はロリコンではないのだが、単純に可愛い!まさに天使!まさに神!


 そして、いくつもの波乱に巻き込まれ、パーティーメンバーのあまりの強さに心を折られそうになった事も、人生で一番走り続けた事も、囮になって逃げ回った事も、フィオナに何度も説教をくらった事も、今となっては俺の青春冒険譚のいい思い出………なわけ無いだろうが!!! 


 異世界人からすればフィクションに見えるこの世界も、そこで生きている人々からしたらこの世界はノンフィクションなのだ。

 そしてまた、この世界で生きる事になった俺と悠貴はどこまで行っても現実の延長線上にいるのだろう…


 『現実とは過酷であり、つらいものだ』と俺は再びこの事を今回の旅の教訓として心に刻み、約2ヶ月続いた央都への旅路に幕を下ろすのだった。


 御一読していただき、ありがとうございました。

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