第13話【央都への旅路 邂逅②】
「僕、浮遊島から落下して、落ちた先があの砂漠地帯だったんです」
ミアは席に座り、頬を赤らめながら恥ずかしいそうに言葉を発しった。
「はぁーーー!」
俺達はミアの衝撃的な発現に思わず、驚きの声を上げた。
「あの遥か上空に浮かぶ島から落下して、なんで生きてるんだ…」
「あの高さから落ちれば、普通の人間なら全身の骨が砕けるはずだろ」
ましてやロリっ子の体、いやいや訂正しよう。
ましてや幼い子どもでは、助かる確率なんて万に一つもないだろう。
「ミアはもしかして、力の魔力属性を持っているのか?」
フィオナは冷静さを取り戻しミアに質問をした。
「はい、確かに僕は力の魔力属性を持っています」
「ということは重力操作も出来るんだな?」
「はい、その重力操作魔法に僕の魔力を全部使って、なんとか無事着地しました」
「とわいえ、どこかも分からない砂漠地帯で何日も彷徨っていたら携帯していた食料と水が底をついて、倒れてしまったというわけで…」
「それで、気づいたら皆さんが近くにいて…」
「本当に助けて頂いて感謝しています、この御恩はいつか必ずお返しします」
俺達はその後、食事を済ませ宿の部屋へと戻った。
「てか、昨日から思ってたんだけどなんで、男女同じ部屋なんだよ」
俺にとって女性は恐怖の化身、いや恐怖だ、恐るべき夜の実態なんてものを見てしまった時には俺の命が今度こそ危うい。
「そんなに怯えなくても何も起こらんさ、この宿でも一番広い部屋だし、この部屋だったら割引してくれるって言ってたから…」
「今はそんな事よりも、ミアはこれからどうするんだ?」
「央都センターへ向かって、再び浮遊島で探索をしようかと思います」
「丁度、俺達も央都へ向かう途中だったんだよ、央都まで一緒に行こうぜ、ミアちゃん」
「ホントですか、嬉しいです!」
ミアは悠貴の満面の笑みの誘いを、嬉しそうに受けた。
今ひとつ分かった事がある。
悠貴の固有スキル「ザ・グッド・インプレッション」は女性なら全年齢対応らしい。
「じゃ早速、明日の朝出発だ」
「ミアのパーティーメンバーも心配してるだろうしな」
「私にパーティーメンバーはいません……」
ミアはさっきの嬉しそうな表情とは取って代わって、とても寂しそうな表情になっていた。
そして、その表情のまま口を開いた。
「私はある一人の女性フロンティアに憧れて、このバベリアに来ました」
「その女性フロンティアは元は貴族出身らしいのですが家が没落して奴隷の身になって、でも伝説のフロンティア『シノザクラ・サヤ」と出会って人類の最高到達地点を塗り替えて、没落した家の名を再び世界に轟かせた」
「僕は孤児だったので、大切なものを失って独り身の奴隷になっても底から這い上がった、そんな女傑にとても憧れを抱いてました」
「だから、僕はそんな憧れの人のパーティーにいつか加えてもらいたくて、貧弱な僕は日々強くなるために一人で戦い続けました」
まてまてまて!それ俺の隣にいるこの女性のことだわーーー
どうやら、俺の隣にいる女性も神妙な面持ちでミアの事を見ているようだ。
てか、こいつってそんなに凄いフロンティアだったのかよ…
「ある日、そんな僕にひとつのスキルが発現しました」
「それこそが僕の二つ名『狩猟の聖弓」の由縁、固有スキル『一発必中』です」
「最初は数多くのパーティーから声をかけてもらって一緒に探索をしていました、しかし固有スキル『一発必中』には弱点がありました」
「それはスキル名の通り一日一発しか使えないこと、つまり僕の一日分の全魔力を消費して行使できるスキルなのです」
「スキルを使った後の僕は魔力が底を尽きた、ただの少女、いわばお荷物というわけです」
「次第にバベリア内のフロンティアにその事実が広まり、いつの間にかどのパーティーにも受け入れてもらえなくなりました…」
この子もそれなりに辛い思いをしているんだなぁーと涙腺が緩みそうになった。
「こんな話の後ですまんが一つだけ聞いてもいいか?」
この冷たく、哀愁漂う空気の中フィオナが真っ先に声を上げた。
ミアは寂しげな表情のまま、コクリと頷いた。
「君の憧れている女性フロンティアの名前って……」
「『衛星の戦姫』ユースティア=フィオナさんです、今はなんだかの理由で第一線から退き、暫くの間モンゼンという町のギルド長をされているらしいです」
「奇遇にもあなたと同じ名前ですね」
そう言いながらミアは、明らかに取って付けてような笑顔でフィオナの方を見た。
次の瞬間、フィオナはミアの近くに行き、小さくて華奢な体を優しく抱きしめた。
「どうしたんですか?フィオナさん」
「私が師匠と出会った時、師匠はこんな事を言っていた『私は世界中の奴隷を開放したい、しかしそれは無理なことだと、それじゃせめて私の目の前にいる人達は出来る限り救ってあげたかった』と」
「私がユースティア=フィオナだ、そして私が救うべき人は目の前のミア、君だ」
「でもユースティア=フィオナさんは今バベリアには…」
「戻ってきたんだよバベリアに…」
フィオナはミアの耳元で、まるで美しい花を愛でるような優しい声で囁いた。
そう囁かれるとミアはフィオナに抱きしめられたまま、無邪気な子どものように大声で泣き崩れた。
その光景を見た俺も思わず涙腺が緩み、一雫の涙を落としてしまった。
「あぁー、なんかお腹空いたなぁー」
「陽凪、ちょっと飲みに行こうぜ!」
そう言って俺の手を強く引っ張り、部屋の出口へと向かった。
「いや、飯さっき食べたし、俺達は未成年だからー…」
ガチャ
「今は二人にしてやろうぜ」
悠貴はナイスな気配りの出来る、なんていいやつ何だと再び感心させられた。
これは悠貴が陽キャになっても仕方ないな、いややはり陽キャは俺の敵だ。
御一読していただき、ありがとうございました。
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