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Beyond the front line 〜弱キャラよ人類の最前線を超えろ〜〈プロト版〉  作者: トワイライトGoodman
第1章 異世界来訪編
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第9話【巨塔の入り口】


 


 「フロンティアの皆さん見えましたぜ」

 御者の親父にそう言われ、俺達は窓の外を見た。


 「なんだあれは……」

 俺を含め、他の新米フロンティアも目の前の光景に驚きの声を出した。

 

 「あれがバベリアの入り口だ」

 「巨塔バベリアの根本にはアーチ状の門が塔を一周するように等間隔で存在している」

 「今、私達が目にしているのが通称『真南の大門』だ」

 フィオナにとっては見慣れた光景なのだろう、この壮大な建造物を見ても顔色一つ変えていない。

 

 この馬車に乗っているフィオナ以外は皆その壮大な光景に見惚れ、しばらくの間馬車から身を乗り出していた。


 その後、程なくして真南の大門のすぐ下までやって来た。

 すると、またしても驚くべき光景が広がっていたのだ。


 「これが塔の入り口なのか?」

 俺達は真南の大門に近づいて、塔の外壁の厚さに気付かされた。


 「そうだ、馬車で駆け抜ければ10分程だ」

 「しばらくの間は暗いが、道の両端にはしっかり明かりがあるから大丈夫だ」

 フィオナの言うとおり、バベリアの外壁はあまりにも厚すぎるため途中からトンネルの中にいるような感覚になる為、道を照らす明かりがなければ進路が定まらない。


 バベリアの規模の大きさはモンゼンの町から見えていた外観から理解していたつもりだったが、改めて入り口に来てみてそのスケールの大きさを実感した。


 ガタッ


 「うわーーー」

 岩にでも踏んだのだろうか、馬車が大きく横に傾いき、俺はその衝撃で体が傾いた方向に倒してしまった。


 「どうした?」

 車内は薄暗く状況把握もろくに出来ない今、突然の起きたこの出来事に悠貴や他のパーティーのフロンティアは慌てた様子の声を出していた。


 「なんだ?」

 倒れた俺は顔が何か柔らかい物にぶつかった感触がした。

 

 「なんか、いい香りもするぞ」

 俺はこの香りを嗅いだ時点で大体の察しがついてしまった。

 

 次の瞬間、顔を上げると薄暗くてはっきりとはわからなかったのだが、フィオナらしき女性が目の前にいた。

 そう、俺の顔がぶつかっていたのはフィオナの胸だったのだ。

 

 「おい…」

 「その声はカゲナギだな、お前は女性がとても苦手じゃなかったのか?」

 

 これは完全にやばい状況になってしまった。

 俺が待ち合わせ時間を破った時より強い殺気がフィオナの声から感じ取られた。


 俺は現実世界でも何度かこのオーラに満ちた女性の声を耳にしたことがある。

 これこそが俺が女性嫌いになった要因の一つ、女性が本当に怒った時に感じられる、底知れない不穏なオーラに満ちた何かだ。

 言葉では上手く言い表わせ無いのだが、とにかく現実世界で俺はこんなオーラを放つ生物とは共存できる気がしなかったのだ。


 「フィオナさん、いやフィオナ様、先に謝っておきます『本当にすいません』」

 薄暗くておそらく、フィオナには見えていないだろうが俺は謝罪のセリフを言いながら盛大に土下座をかました。


 「つきましては、遺言を残させて頂いてもよろしゅうございますか?」

 あぁー、これはまさにアニメやドラマの中に絶対一回は出てくるであろう展開、いわゆるラッキース○ベというやつだ。

 まさか女性嫌いの俺がこの展開の当事者となる日が来るなんて、しかも加害者で。

 いやまぁ、ー男の俺が被害者になることなどもとより無いのだがな。


 「あぁー、遺言を許可しよう」

 なんと棒読みで冷たい声だろう、俺の体の芯まで凍え果そうなぐらいだ。


 「これは不可抗力だ、よって俺は悪くない、ノーカウント、ノーカン、ノーカン」

 俺はこの修羅場でなぜカ○ジの大槻班長のセリフがでてきたのだろう。

 

 「遺言はそれだけか?」


 「はい、我が生涯に一片の悔い無し」

 この後の展開は大体予想がつく。


 パッチ

 俺が返答をした瞬間、指パッチンの音が車内に響き渡った。

 どうやらフィオナがなんだかの魔法を使ったようだ。

 すると車内に明かりが灯り、俺の土下座姿が(あらわ)になる。

 

 「明かりがついたぞ、皆無事か?」

 悠貴が車内の安否を確認する声を発した。


 「うちのパーティーは無事だ」

 同じ馬車に乗っていた別のパーティーのフロンティアは特に何もなかったらしい。


 「陽凪達は大丈夫か?」


 パチーン

 悠貴が俺達の安否確認の声を発した瞬間、俺はフィオナに顔を思いっきり平手打ちされ、その音は車内中に響き渡った。

 俺はそのまま深い眠りについた。


 「カゲナギが大丈夫じゃないー」

 「フィオナ、どうして陽凪に平手打ちを?」

 

 「あいつが私のむ…いやちょっとした事があってな」

 

 「何となく理解した」

 「てか、女の平手打ちで気絶するなんて陽凪も相変わらずだな」


 俺は生きているのだろうか?

 ここは天国なのか、それとも新たな異世界?


 「おはよう、カゲナギ君」

 俺は死んだはずなのに俺が上を見上げると何故かフィオナがいる。


 「なんで、俺が生きてて、まだフィオナが」


 「私のようなか弱いレディーの平手打ちぐらいで人が死ぬものか」

 フィオナは俺と目が合うと頬を赤らめていた。


 いやあんたSランクのフロンティアなら常人よりは力あるだろ、(げん)に今でも俺の頬はヒリヒリしている。

 まぁそれは置いといてこの状況はなんだ、フィオナの膝の上に乗ってるのか?

 

 俺はフィオナに膝枕されている事に気づいてすぐに体を起こしその場を離れ、そしてこれ以上痛みを味わわない為に謝罪をしなければ。


 「本当にごめんなさい」

 俺は深々と頭を下げた。


 「顔を上げろ、私もやりすぎた」

 「カゲナギにも悪気は無かったのだし、、、それに男の子に触られたの初めてでつい……」

 フィオナは顔を背けて、後の言葉はもぞもぞと言っていたのでよく聞き取れなかった。

 ともかく今のフィオナにはさっきのような冷酷な殺気は一切感じられない。


 「まぁいい今回は許す」


 「ありがたき幸せ」

 俺は再び深々と頭を下げた。


 「お、陽凪起きたか」

 御者台の方からいつものように明るい悠貴の声が聞こえてきた。


 「光が見えたぞ」

 御者の親父が大きな声で馬車に乗っている皆に呼びかけた。


 「陽凪、フィオナいよいよバベリアに着くぞ」

 悠貴は新天地へ行くのが余程楽しみなのだろう、満面の笑みでこちらを向いてた。

 俺達もそんな悠貴を見て頷いた。


 俺も早くバベリアの光景が見たくなり、御者台の近くへ歩み寄った。


 光がどんどん大きく、濃くなっていく。

 次の瞬間、俺と悠貴の目には想像を絶する異世界の光景が映し出された。


 「いよいよ、俺達の異世界ファンタジーの本番が幕を開けるな」

 俺と悠貴は共に不敵な笑みを浮かべた。

 

 御一読していただき、ありがとうございました。

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