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羽走本大好きとは、はばしりぶっくめーかーと読みます。えぇ、こんな名前は付けるのはふざけているとしか考えられません。

 本。

 本。

 本。

 右を見ても本。左を見ても本。上も下も本。どこを見ても三百六十度、紙で出来た束が(つら)なるばかりで、脚を踏み入れると言う発想にならないくらいの紙の絨毯(じゅうたん)が私の心を(むしば)んだ。

 そんな閉じようも無い家に生まれてしまったのが、生涯(しょうがい)の運の尽きだったと言える。


 私の両親は、子の目線から見ても異常だった。本で得た知識ばかりを集約しているせいで考え方が普通では無く、見た本の内容を頭に入れてそれを実行した。ダイエットの本を見れば三十キロ痩せ骨みたいになり、健康趣向の本があれば顔に梅干を貼り付け生活し、駄洒落(だじゃれ)の本を読めばアメリカンになり、教育本を読めば毎日八時間私に勉強させた。挙句(あげく)ほうきにまたがって空を飛ぼうとした事があるが、それは骨を折るだけの事態で済んだのが(さいわ)いだった。


 そうして捻くれた教育を受けて育ってきたのが、羽走(はばしり)本大好き(ブックメーカー)と言う名を与えられ生を受けた私だった。こんな名前に仕立て上げてくれたおかげで生粋(きっすい)の本嫌いへと成長した。

 小さい頃から絵本は投げ捨て、小説は紙飛行機に、漫画は楽しく読ませていただいて、エッセイ本は密かに下に追いやり本の絨毯(じゅうたん)へとリサイクル。親不孝と散々言われたが一体どの口が言っているのか、その時私は本に入れた(しおり)を抜き取られた時の様な不快(ふかい)な気持ちになった。


 そんな(けわ)しい人生であっても、雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫な体を持ち欲は無く、決して怒らずいつも静かに笑っていたそんな私は、殺人的な本の雪崩(なだれ)遭遇(そうぐう)し意識を飛ばした。

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