便theエース
コンセプトはこだわりシェフの便所の落書きです、最近疲れてる方、スッキリしたい方、便秘気味の方にお勧めの痛快アクションエンターテイメントです。
嘗てこの世界に三人の英雄あり
一人は己の覇道と世界の発展を求め
一人は自然と世界の平和を求め
一人は手っ取り早く用を済ませる場所を求めた
やがて三人はこの世界のリーダーとなり
一人は力こそが全てだと主張すると
もう一人は平和の重要さを基に反論し
残る一人は議論の間平均10回はトイレに行った
そして三人はそれぞれの道を歩む
一人は力で支配する覇王帝国の至高皇帝として
対して一人は愛で治める平和王国の究極聖王として
最後の一人は究極至高の便座を求めるトイレの神様として
この激動の時代を生き抜くのであった
平和王国と覇王帝国国境にある町ザマーハ
平和王国でも首都トッシュに次いで栄える町だが同時に覇王帝国との小競り合いが絶えない危険な町でもある
ザマーハ大型商業施設イモカーノ、休日ともなると大量の客で賑わう施設だ
しかし今、この施設の案内所は異様な光景に包まれていた
”あの~、この建物のトイレ全部使用中なんですけどどっか他にトイレありませんかね~”
そこには異形の姿をした怪物・・・もとい男が受付嬢にトイレの場所を聞くという光景があった
冬が近いにも関わらず半袖短パンのいで立ちの猫背のその男は身長2メートル近く・・・いや、猫背を正せば2メートルを超える巨体、そして最大の特徴としてボサボサの長髪、肌の色、そして全体的に醸し出すオーラがやたら茶色いのだ
”も・・・申し訳ございません、ただいまお手洗いは満席状態で御座います”
男の茶色さに呑み込まれそうな恐怖に震えながら必死に笑顔を取り繕う受付嬢
”ファッ、糞施設やんけ”
そう捨て台詞を残し去っていく男の背中を怯えながら見ていた受付嬢がふと横目で見ると
”嘘でしょ・・・空が燃えてる”
次の瞬間外の庭園の比較的人が少ないエリアに巨大な火の玉が降り注ぐ
”灼熱呪文第13章・・・踊れ、炎奴隷守”
火の玉が降ってきた先には真っ黒なローブを着た集団、そしてその先頭には赤髪の少女が古びた本を片手に立っていた
”てっ・・・帝国軍だぁ!!!”
誰かが叫ぶと同時に民衆は一瞬でパニック状態になる
”ザマーハは本来我々の領土だ、降伏しろ・・・さもなくば今度は威嚇では済まさない”
今度は逃げ惑う人々の上空に巨大な火の玉が現れる
”流水呪文第6章・・・守れ、傭水櫓”
突然現れた大量の水柱が一瞬で火の玉を包囲する
”皆さん、指示に従って避難して下さい。皆さんの事は我々王国軍が守ります、安心して下さい。”
水柱が現れた先には真っ白なローブを着た集団、その先頭にいる青髪の少女が古びた本を片手に民衆に指示を出す
”エン姉さん・・・貴方達帝国軍は間違ってる!力による支配なんて誰も幸福にはならない!”
”黙れスイ!貴様らの甘言は聞き飽きた・・・退け、さもないと妹とはいえ貴様ごと焼き尽くすまで”
”姉さん・・・戦いは避けられないのですね・・・”
そう呟くと青髪の少女の足元に大量の水が集まる
”そういう事だ、勝者こそが正義!”
赤髪の少女が掲げた掌の上には炎の核が急激に膨らんでいく
”流水呪文第17章・・・貫け、水鎗!”
”灼熱呪文第19章・・・轟け、炎刃!”
巨大な炎の刃と水の鎗が上空で衝突としたまさにその瞬間
”五月蠅いんじゃボケぇ!!!”
猛ダッシュで駆け込んできた茶色い男が勢いのまま赤髪の少女の顔面にグーパンを叩き込んだ
”はげらっぷ!!!”
この世のモノとは思えない断末魔を残し赤髪の少女は空の彼方に消えてった
”だっ・・・団長!よくも団長をっ!”
黒ローブの集団が剣を抜こうとする
”お前等死ねぇ!!!”
茶色い男の蹴りの風圧だけで50人の黒ローブが一瞬で宙を舞う
”オセロ!!!”
口々に断末魔を残しながら黒ローブが思い思いの形で地面にめり込んでいく
”あのぉ・・・ご協力感謝致しますが少々やり過ぎでは?”
青髪の少女が茶色い男に恐る恐る近づくと
”テメェもじゃー!!!”
男はそう叫びながら青髪の少女を掴むとそのままパイルドライバーをかます
”イヌガミケ!!!”
その言葉を残し少女の上半身は地面と一体化した
”たっ・・・隊長ぅぅぅ!!!”
白ローブの集団が長鎗を持って駆けつけてくる
”フンガー!!!”
白ローブを掴んでは投げ掴んでは投げという光景が繰り広げられる
”ウンドウカイ!!!”
白ローブの声は空の彼方へと消えてった
”ひっ・・・ひぃ、地獄絵図じゃぁ!!!”
残った黒ローブと白ローブ、それに民衆の絶叫が響く
一方この惨状は帝国、王国の双方の首都に急報として入った
”皇帝!遊撃軍団が壊滅状態です!!!”
”聖王!護国軍完全に沈黙です!!!”
この報にも全く動じる事なく寧ろ呆れた様に至高皇帝は呟く
”所詮この世は弱肉強食、力こそ全て・・・賊に遅れを取るとは帝国の面汚しよ”
この報を受けて席から立ちあがる究極聖王
”兵達は・・・民は無事なのか!!!これ以上誰も傷つけさせてはならん!!!”
そして双方の伝令が思い出した様に付け加える
”犯人は茶色い男だそうです”
たったその一言が二人の王のプライドを崩壊させた
”ふぇぇぇぇ、便theエース無理だよぉ、怖いよぉぉぉ・・・たちゅけてよぉ!!!”
”便theエースマジ半端ないって!!!もう駄目だ、お終いだぁ・・・”
各々が絶対の忠誠を誓った主君の崩壊とも呼べる醜態に唖然とする配下達
”あ・・・あのぉ~皇帝、便theエースとは何者で?”
絶対皇帝の側近が恐る恐る口を開く
”はわわ・・・便theエースは嘗て我と聖王と共に活動した三英雄の一人ら”
冷静を取り繕いつつまだ恐怖が抜けない皇帝が呟く
”その便theエースと聖王達の間に何があったのですか?”
聖王の側近が尋ねる
”あわわ・・・あれは嘗て私と皇帝が袂を分かち遂に決闘する事になった時の話にゃ”
混乱気味の聖王が語る
”あっ・・・あのジハードと呼ばれる世紀の頂上決戦の事ですか、無人の地とは言え辺り一帯が7日7晩焼け野原になったという・・・”
動揺する側近が尋ねると
”いや・・・真実はちょっと違うんにょ”
最早キャラ崩壊した皇帝が答える
”私と皇帝のオーラの衝突が偶々近くのトイレを破壊してそこで用をたそうとした便theエースの逆鱗に触れてしまったのにゃ”
震えながら聖王が話す
”その場で我と聖王は腹に風穴開けられて戦闘不能、あ、これその時の傷跡ね”
傷跡を見せる皇帝
”瀕死の私達を尻目に便theエースが7日7晩暴れまくった、それがジハードの真実ら”
魂が抜けきった声で語る聖王
”まさか・・・最強の皇帝を瞬殺なんて便theエースとは何者なんですか?”
側近が恐る恐る尋ねる
”他に何も考えず、ただ己の快便を求める男、ただそれだけバイ、ただその強さは災害級・・・いや、ハルマゲドン級ズラ”
”奴の纏うオーラは便気、トイレに行きたいイライラが具象化したモノじゃん、そのオーラは純粋、故に最強かつ最凶ナリ”
最早諦め気味の皇帝と聖王の解説に絶望する側近達
”そんな・・・お終いじゃないですか、何とかその男を止める方法は無いんですか”
”無い・・・いや一つだけあったか”
暴れまくる便theエースに恐る恐る近づく一つの影、他でもない先程の受付嬢である
その受付嬢が大声で叫ぶ
”お・・・お客様ぁぁぁ!!!従業員用のお手洗いならお使い頂けます”
その瞬間、嵐がピタリと止んだ
”さよか、さっさと案内してクレメンス”
その40分後、晴れやかな顔で従業員用トイレから出てきた便theエースは
”おおきに、ほなさいなら”
と言い残し何処かへと消えていった
伝説の漢、便theエース、その姿を知るモノは少ない。
大体トイレに籠ってるから
忘れずに水に流して下さい