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朱殷の刃 (しゅあんのやいば)  作者: 友の威を借る俺
第1章 逃走編
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第五話 「交錯」

「何なんじゃこれはっ!」


 目の前に広がる光景に対してガウロスが叫び声を上げていた。



 時は半日ほど遡る。


「ガナ高原へ行きましょう」

 修道女の男です発言から暫く思考停止に陥っていた俺とガウロスだったが、俺は気を取り直してそう言った。

 すっかり敬語の立場が逆転している。

 修道女改め修道男兼情報屋サライと別れた後に俺は敬語に戻した。

 先程は正体がバレていたから舐められる訳にもいかず元のタメ口に戻していたが、こういう演技というのはなるべく常日頃から徹底すべきであろう。

 どこで誰が聞いているか分からない。

 これは影武者時代に学んだことだ。

 まぁ地下のあの部屋では誰も来ないから適当だったが。


「それはやめるんじゃ、危険すぎる。何故わざわざそんな所へ行く。行き先の選択肢は他にもあるじゃろう。」


 しっかり弟子へのタメ口が板についた白髪初老の男が理解できないとばかりに言う。


 それもそのはず。

 ガナ高原はいくら膠着状態が続いているとはいえ二カ国の戦争真っ只中の戦場地。

 我がルーディニア王国の北部に位置し、北の大国エリスラー王国との国境線にて戦争の最前線。


「今手を打つチャンスはあそこにしかありません」

「どういう事じゃ?」

「もはや王都には味方と呼べる勢力はありません。かと言って国内の他の街では戦力的に話にならない。しかしガナ高原ならどうでしょう。あそこにはルーディニア王国民からなる民兵、更には王国騎士団がいます。仮にも戦争中ですから無傷とはいきませんが確実に戦力となる味方です。クーデターで壊滅、ということはないでしょう。だから宰相の手が回る前にあそこに行きましょう。なんなら戦争は一旦取りやめ、軍を率いて王都に攻め入ってもいい。こっちはクーデターの鎮圧軍となるわけです」


 まぁ敵国がそう都合良く静観していてくれるとも思いませんが、と続けておく。


 ザウルスは会得したとばかりに頷く。しかし暫く思案に暮れたあと、急に血相を変えた。


「それだとまずいに事になっておる!」

「なんだと?」


 俺の疑問にザウルスは続ける。


「よく思い出すのじゃ情報屋の言葉を」


 サライはなんと言っていたか?

 えぇと、本来死んだはずの国王が戦場へ向かっているというデマを宰相ボイスラー側が流しているって.........


「まさか」


 俺にも思い当たることがある。


 頷く仕草をした後ザウルスが答え合わせをするかのように言う。


「国王を戦場で死んだ事にするんじゃろう。自分で手を汚しておいて、責任は敵国に押し付ける気じゃろう。どさくさに紛れて敵兵に殺されたと言えば良いのじゃから」


 国の中でも随一の魔力を持つ国王(それゆえに王族なのだが)が護衛もついていてそんな簡単に死ぬなんて、どれほどの人間が信じるのか、さらにはそんな事をしたら余計に軍の士気が下がりかねないじゃないかと思わなくもない。

 だが向こうも戦地にいる王国騎士団と接触を図ろうとしているのは事実。

 考える事は俺達も宰相も似たようなものか。


 くそっ、こうなるとサライを待つまでに使った半日がもったいなかった。

 なぜもっと早く気付かなかった。

 自分の大局の見えてなさが恨めしい。


「時間が無い、今すぐ出るぞ!」


 つい声を荒らげてしまう。

 しかしこの時間差は大きい。出遅れてしまった。

 一日以上の差がある。


「ふふっ、そう焦るでもない。弟子よ、ワシの得意魔術が何じゃったのか忘れたのかな?」



 俺は老人ザウルスにお姫様抱っこをされた状態で戦場ガナ高原へと向かった。

 せめて背負ってくれと言ったが何故か譲らなかった。

 王子だから王子様抱っこであった。

 コイツマジでふざけたジジィだな。


 ジジィは身体強化の魔術により2、3日かかるであろう距離を半日で進んだ。

 しかしあくまでジジィはジジィ。

 魔力よりも先に体力が尽きた。

 折角の生まれ持った力もジジィとなれば宝の持ち腐れ。

 今俺達がいる場所はガナ高原手前の森林地帯の中。

 時間は真夜中。

 合戦地から少し離れてはいるが、戦闘の音がしないことから今は両軍ともに休息中なのだろう。

 俺は地下の部屋にいた時から着ているボロ布の上から、ザウルスはボロボロのタキシード服の上から茶色いローブを羽織り、それについたフードを被る。


 ルーディニア王国側とは言え急に敵兵と出くわす可能性も無くはないので慎重に進む。

 こういう時は暗殺者達から学んだ立ち居振る舞いが役に立つ。

 疲れ切った老人を逆に後ろに背負い、俺は警戒心を持って歩みを進める。


 暫く進むと暗い森の中に、明かりがあるのに気付く。

 警戒心を更に上げて徐々に近づくと、十人くらいの集団だと分かる。

 ジジィを下ろす。


 気付かれないように近付き、木陰に二人揃って身を隠す。


 男達の声が聞こえてくる。


「どうやらそちらさんは上手くやったようですね」

「あぁあっちの方はほぼ問題無い。ただ例の死体がまだ見つかっていないと言っていたのが少し気になるが」

「もうここまで来ればそんなことは小事に過ぎないでしょう」

「まぁそうだな。それよりも後衛に居た魔術師団が全員殺されていたんだがアレは一体どういう事だ?」

「それはこちらの指示ではありません。まぁ戦場ですから何が起きるか分かりませんよ」

「まぁいいだろう。所詮は下級貴族。どうせ後で切り捨てられていたか養殖にでも使われていただろう。俺としては騎士団さえ無傷ならそれでいい」


 俺とジジィは相手の顔を見ようとのぞき込む。すると


「なんと!」


 ジジィが声を上げやがった。

 向こうに気付かれた。


「馬鹿野郎、逃げるぞ!」


 俺たち二人は走り出す。

 相手も追ってくる。

 こっちは暗闇の中にいたから顔は見られていないだろう。


 暗さ、そして森の中ということですぐに撒けた。

 俺はジジィを睨みつけようとすると、申し訳ないからなのか、それとも疲れ切っている上に更に走ってヘトヘトだからなのか分からないがずっと下を向いている。

 街からここまで運んでくれたことには感謝しているが、この余計な消耗は自業自得だぞ。


 だがジジィが声を出してしまったのは無理もなかったともいえる。

 アレには俺も驚いた。

 なんせあそこにいたのは半分敵国エリスラーの騎士、、そしてもう半分は王国騎士団長やその側近達だった。

 なんだって絶賛戦争中の敵同士が密会しているんだ?

 しかも協力的な雰囲気ですらあったぞ。


 これはやばいんじゃないのか。


 俺は焦燥に駆られジジィを置いて一人で先へと走った。


 そして最後に森を抜けると、そこは崖下に広けた場所を望める崖の上だった。



 目の前に広がっていたのは、ルーディニア兵ばかりの死体の山だった。




 --------------------




 あとから遅れてやって来たザウルスも言葉を失う。

 戦線は膠着状態じゃなかったのか。


 暫くしてザウルスが口を開く。


「民兵ばかりで王国騎士団の死体はほとんどないですね」


 確かにそうだ。


 戦争では主力は近距離戦では王国騎士団、遠距離戦では魔術師である貴族だが、人数的には普段は農家などの平民が一番多い。

 王国騎士団はルーディニア王国のトレードカラーである緑色をした鎧・兜を身に付けているが、民兵は装備を自費で用意せねばならないため装備が統一されていない。

 そのため味方か敵か分からないので区別するために兵は何かしら緑色のものを身に付けている。

 緑色の布を腕に巻いたりとか。

 ちなみに敵のエリスラー王国の兵は赤である。


 転がる山のような死体はどれも地味な色の貧相な装備ばかりで、王国騎士団兵のまとっている鮮やかな緑色のそれでは決してない。


「まさか」


 俺は先程の光景を思い出す。

 敵国の兵と親しげだった騎士団長。

 敵対心の無い敵騎士。

 彼らの会話。

 そして民兵ばかりの死体。

 さらには死んだはずの国王の参戦というデマ。


 最悪の事態が頭に浮かぶ。


 言っても宰相ボイスラー側と王国騎士団の繋がりまでしか考えてなかった。

 だがそれだけじゃない。

 エリスラー王国とも繋がっている!


 待てよ?

 王は死んだ。

 行方不明か、それとも死んだことにされているのか分からないが王位継承権第一位の王子は不在。

 王族の有力な直系は今王都に誰もいない。


 そうなると今回の王都でのクーデターの黒幕は.........


「エリスラーだったのかっ!」


 すると狙いはこの国を侵略することか。

 中心となる王権がなければ戦いにおいてまとまりに欠ける。

 さらには国家滅亡のあとの祖国復活を狙う反乱軍のリーダーとなり得る存在も現れない。


 となると、国王がエリスラーに殺されたことにするのはこちらの兵士の士気を本当に下げるため。

 そして最高の魔術師とも言える国王さえ殺すという敵国の力を知らしめるため。


 この戦争は初めから負けることが目的だったのか。

 だからクーデターを起こすまでは膠着状態を維持。

 そしてタイミングを見計らって一気に攻撃に出た。

 頼れる戦力となるはずの王国騎士団は被害を出さないように戦わず。

 こうなるとさっきやられたと言っていた、戦争に参加していた貴族もグルだったかも知れない。


 宰相のボイスラーはエリスラーのスパイだったのか、それとも買収されたかは分からない。

 それは王国騎士団にも言える。

 だが確実なことは、そいつらがルーディニア滅亡後も高い役職が約束されているということだ。



「もはやこの国に味方はいない。いや、それだけじゃない。この国自体がすぐにでも無くなるかもしれない」


 国の中枢は国を守る気がないのだから。


「なんという事じゃ。宮廷はここまで腐っておったのか!」


 分からない。

 ここまで敵が多く、ここまで計画的、圧倒的にやられたとなると、国王側が腐っていた、無能だったのではと思えてくる。

 そんな印象を受けたことは今までに無かったが。


 どうすればいい。

 もう出来ることは何もないんじゃないのか?


 死んだ王子の言葉が思い出される。


『今からお前がミカエル=ルーディニアだ』


 あいつに思いを託されたが、あいつがこの状況に直面しても同様に何も出来ないのではないか。


「王子、ここは一旦ルーディニアを離れましょう」


 ザウルスの口調は元に戻っている。


「国の滅亡まで時間はないでしょうが、この国にいたって何も出来そうにありません。何より王子の命が危険です。生きていれば反撃の余地もありましょう」


 確かにその通りだ。

 だが国に危険が迫っているのが分かっていながらみすみす逃げ出すのも.........


 そこでふと思う。

 そもそも俺がこの国を救う責任があるのか。

 俺は第三次計画(サード)やらナンシーやらといったもののせいで長い間クソのような人生を歩まされたんだぞ。

 それは王子を守るためでありひいてはこの国が俺にそれを強制した。

 しかもアイツすら国のクソ野郎に殺された。

 むしろこの国の滅亡を俺が望んだっていいのではないか。


 俺が黙っていると、国を見捨てることにも躊躇いを感じていると思ったのかザウルスがこんなことを言ってきた。


「幸いルーディニアの南の国グアロキには王子の妹君ステファニー様が嫁いでおります。匿ってもらえるやもしれません。それにグアロキとしても隣国が占領されるというのは面白くないでしょう。必ず思うはずです。次は自分達なんじゃないかと」


 ザウルスはなおも続けるが、そんなことは耳に入ってこなかった。

 俺の頭に残ったのはステファニーという言葉だった。


 しばらく俺は口を閉ざしていた。

 そしてそれから口を開き、心ここにあらずといった様子で小さく言った。


「あぁそうしよう」

 と。




 --------------------



 その後しばらくすると俺はやっと我に帰った。

 時刻は2、3時といったところか。


 そして現在、死体を漁っている。


 死体の中から金になるものをあさっている追い剥ぎを見て、


「僕達もやりましょう」

「王族がやるものではありませんぞ」

「背に腹はかえられません」


 という会話を経て今に至る。


 俺は武器になりそうなものを探す。

 なんせ今はボロ布とローブだけの丸腰だ。

 これでは心許なさすぎる。


 今さら死体の山そのものに何の感慨も湧かない。

 見慣れすぎている。


 探していると軽そうな細身の剣を見つけた。ついでだから甲冑や兜も頂く。

 安物だろうがないよりマシだろう。

 それに兜を付けていれば王族だという顔バレも起きないだろう。


 装備をすぐにでも身に付けてその上からローブを纏う。

 ジジィも同様な格好となるが兜はつけていない。

 まぁ両方が兜を被っていたら変な勘ぐりもされるかもしれない。

 ザウルスの髪は白髪だから大丈夫だろう。

 目が青いだけだったら結構いるし。


 俺は更に折れた剣先を幾つか拾うとローブの中に潜ませる。

 ジジィは金目のものを探し始めた。


 俺達はそうやって死体の山ををウロウロしていた。



「ぎゃああああぁぁぁ」



「なんだ?」「何事じゃ?」

 急に聞こえた悲鳴に対しほぼ同時に言う。


 悲鳴のした方に目を向けると、遠くの方で俺達と同様に死体を漁っていた追い剥ぎたちが殺されていた。

 残るは俺達のみ。


 そこには銀色の仮面をかぶった男が立っていた。


 仮面には目の部分に穴が開いているのみである。

 その男は背中に交差された状態で刺さっている二本の剣を鞘から抜き両手に持っている。


 長年の直感が告げる。

 オーラが普通の奴とまるで違う。

 一人とはいえ個人の能力だけを考えれば、城で対面した魔術師たちよりもやばいかもしれない。

 そして相性が悪いと感じる。

 コイツはゴリゴリのアタッカータイプだ。

 影武者時代に俺を殺しに来た暗殺者たちはコソコソ命を狙ってくるような奴らだった。

 俺がいくら影武者だったと言えど周りは護衛に囲まれていた。

 こんなバリバリの武闘派が正面切って襲いに来たことは一度も無い。


「し、師匠っ!僕では相手になりません。逃げましょう」

「むっ、すまない。そうしたいのは山々じゃがさっきの移動で魔力もほとんど残っておらん」


 くそっ、城で王子を救おうとした猛々しさはどこにいった。

 守っているのが俺だから駄目なのか。

 無意識のうちに命をかけて守るべき相手ではないと感じているのか。

 これこそが本物の王族と偽物の俺の違いなのか。


 やるしかない。

 俺はさっき拾った一本の剣を両手で持つ。

 これでも俺はルーディニア王国正統の剣術を教育されている。

 その辺の民兵にはやられんぞ。


 銀面の男が二本の剣を構えた状態で動かない。


「あいにく俺達を襲っても持ってるもんはさっきこの辺で拾ったものばかりだぜ。お宝が欲しけりゃ他をあたるんだな」


 俺の軽くに対し仮面男は口を開く。

 と言っても仮面のせいで実際に開く様子は見えないが。


「欲しいのは情報だ。金色の仮面をした男について何か知っていることはないか?」

「さぁ知らないね」

「ならお前達に用はない」


 そう言うや仮面男は走り出す。


 俺は姿勢を真っ直ぐに保ち、体に余計な力を入れずあくまでリラックスされる。

 足を止めず足を動かし続ける。

 そして呼吸を繰り返す。スハスハスハスハと。

 これが影武者として生き残るために考え、暗殺者から学んだ技だ。余計な筋力は必要ない。


 遂に仮面男が突っ込んで来る。俺はその場で足踏み。

 剣は右手、それから時間差で左手と来る。

 かなりの剣速。


 月明かりだけだがそれで十分。

 狙われる時は決まって暗闇だった。


 俺は敵の攻撃を剣で受け止める....のではなく剣の腹で受け流す。

 右左の攻撃に対し二連続で。


 攻撃の力を前方に流された相手が前のめりになる。

 俺はその懐に潜り込もうとする。

 敵は剣を受け流されて交差するようになっている両手を元に戻すようにX字状に振るう。


 俺はとっさに上にジャンプして相手の右肩の方に抜ける。

 そして地面に一回転。

 すぐさま両者が振り返る。

 俺達の間にやや間合いができる。


「なかなかやるな」

「お前もなっ!」


 お互いに短く受け答えをすると、またしても仮面の男の方が走り寄ってくる。

 さっきと違い今度は左右同時にくる。

 斜め上から俺の体を交差するように切りに来る。

 俺は体の前で受け止めようとする。

 が、威力が二倍となったことで勢いを止めきれずに後ろに吹っ飛ばられる。


 俺は何連続も後転する格好となり最後に尻もちをつく。

 相手はすかさず突っ込んでくる。

 くそっ。コイツは猪か。


 今度は最初と同様に右、次いで左と剣を振るう。

 俺は右上から両手持ちで剣を振るい、相手の攻撃を受け流そうとする.........

 が、相手の右手は俺を切りに来るのではなく俺の手前、真下にベクトルが向けられていたので叩きつけられた相手の剣により自分の剣を落とす。

 右斜め後ろに体がよろける。

 丸腰になった俺に向かい仮面男の左手が斜めに振り下ろされる。


「ミカエル様!」


 ザウルスが叫ぶ。


 敵の剣が俺の鎧と兜の間にある首に向かってくる。


 まずいっ。


 今にも切られそうな間際、とっさに俺は空いた両手を使って懐から4、5個の刃物を取り出しそのまま敵に投げつける。

 それはさっき拾っておいた折れた剣先。


 その時お互いはかなり接近している状態だった。


 敵は顔を後ろに反らして刃をかわそうとし、それだけでなくそのままバック転。

 その直前、敵が顔を反らした時、敵の剣は振り下ろされ切っていた。

 が、余計な動作が入ったため軌道が俺の頭へと逸れる。

 俺は刃物を投げたあと、敵の剣の威力を流そうと重心を下げる。

 まともに顔面に食らっていたら兜ごと頭を割られていただろう。


 もしくは相手が俺の刃を避けようとせずに切りかかってきていたら。

 俺は首をはねられていたが、向こうは食らうのが小さな刃物だったし仮面も被っていたから絶命まで持っていくのは難しかっただろう。

 結果的に向こうの反射神経が良かった事に助けられた。


 敵の剣を受けた俺の兜は俺の頭を守る役目を終え砕け散る。


 逆に敵の仮面も刃を受け左右に割れる。


 残りの刃は肩まで伸びる敵の髪の一部を裂き、数本の赤い髪が宙に舞う。


 お互いの顔が月光の下にさらされる。


 敵は言う。


「その無駄のない剣さばき、そして金髪碧眼、さらにはもう一人の方が言ったミカエル=ルーディニアという名前。お前まさか、ルーディニアの行方不明という王子か?」


 敵が何か言っているのに、俺は一瞬前に死にかけたのに、今違う事を考えていた。

 が、一日に二度目、しかもさっきのが強烈な驚きとして俺の記憶に残っていたのでそうなってしまったのも仕方がない。

 またはアドレナリンが出まくり変にテンションが上がっていたのかもしれない。


 とにかく俺は心の中で叫んでいた。



『お前の方は女かよ!』


 と。

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