17 姿見鏡
「これがマワシっ!」
明美は上下ピンク一色のスポーツウェアの上から黒いマワシを締めている。股を閉じれば足の付け根に固いマワシの感触、そこだけでは無い。
下腹、腰、お尻の間、触れる場所の全ては締め付けられている。
ぎゅうっ、と。
ぎゅううううううううううっと。
ぎゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううう、っと。
「締め付けがキツくて姿勢が変になっちゃう」
「明美、姿見鏡を見るんだ」
弓弦に言われるがままに姿見鏡を見る。
自分が足を開いて、がに股となり、マワシが足の付け根に触れるのを嫌がっている姿が映っていた。
「あっ、やっ、だっ。これは駄目だねっ」
自分の姿勢が酷く不格好に感じて、両足を閉じて気をつけの姿勢となる。
『明美くん。君は姿勢がいいようだね。顎を引けているし、それでいて背筋も伸ばしている。姿勢が自然体だ。高い潜在能力を秘めている事の表れだ』とは遥の言葉であったが、今の明美はソレを体現出来ている。
そして、先程までは出来ていなかった。
遥華の教えをしっかりと守り、足を閉じて、手は足の横にピッタリとつけている。
明美の気を付けを見た弓弦は、「ほぅ」と感嘆の声を洩らした。
「なるほど。この士道、どうやらスポーツウェア、マワシの恰好が似合っているぞ、と褒める必要はなかったようだ」
「ええっ~。嘘をつこうと思っていたのぉっ?」
「これでも一応、士道武具店店長なのでな。しかし、訂正しよう。この士道、やはり本心から明美にマワシが似合っていると褒めてやる」
「もの凄く上からの言葉だけど、褒められていると思っていいのかなぁ?」
明美は抗議の声を上げる。
弓弦は大きく息を吸い込んで、胸を反らして声を腹から出す。
「明美はその恰好で家まで帰るといいっ!」
「えっ、それはヤダッ」
気合を入れた弓弦の言葉に対し、普通の反応で返す明美。
「勘違いするな。この士道、別に着用して帰ってくれとは言っていない」 『流石にそれは出来ないよな』と心で愚痴る。
「そのマワシ、上げる事は出来ないが……割引してあげようと言っているのだよ。この士道、店の売上も大事だが、それ以上にお客様の笑顔も大切だ」
「ふふっ、笑顔って、なんか嬉しいな」
大きい瞳を細めて、より一層笑顔になる明美。
その笑顔にやられそうになりながらも、冷静になった弓弦は電卓を取り出して計算を行う。
「お値段、これほどとなっておりますが? この士道、伺ってみる」
「もうちょっと、なんとか……お小遣いが……」
「では、これでどうだろうか?」
「ブドウジュースが毎日買えなくなっちゃうかも……」
「ダイエットしているのでは?」
「そこ、言っちゃう?」
明美は顎に手を添えて、う~んっ、と暫く考え込む。
「……」
「…………」
「わかったっ! ダイエットもしているんだし、ブドウジュースは暫く休むことにするよっ」
「その心意気やよしっ! この士道、お釣りを取ってくる」
明美から受け取ったお金を持って試着室から出ていく弓弦。
一人になった明美は試着室の中で、「この恰好で四股を踏むとどうなるんだろう?」と腰割を行う。膝に手を置いて、鏡を見ながら足を上げていく。
「このままじゃ、壁にぶつかっちゃうけど……これならっ」
ここ数日の稽古で柔らかくなった足腰。上げた足の裏が天井を刺す様に上がる。
「すごいっ、出来ちゃった」
「お釣り取って来たぞっ!」
明美がバランスを崩し始めるのと、弓弦がカーテンを開いたのは同時。
「んっ、あっ」
崩れゆくバランスの中で、士道と向かい合わせになった明美。
弓弦は明美と正面から向かいあって。
小銭を床にばら撒くように投げながらも身体を受け止めていく。
「明美大丈夫かっ!」
「うんっ。ありがとう。弓弦ちゃん」
抱き合う形の二人、必然的に弓弦のまな板に明美の胸が触れていく。
「やはり巨乳は貧乳の敵の様だな、この士道、今一度理解した」
弓弦はそう言うと、結局は明美を受け止めきれなかった。
胸の重さで押し倒されてしまい、小銭が床に落ちたのと、弓弦の身体が背中から床についたのは同時だった。




