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さよならにはまだ早い(仮)  作者: 岩本ヒロキ
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6月18日 柊也の危機

 僕がこの学校に来て2ヶ月が過ぎ、大分もう一度の16歳に慣れて来た頃。中間考査前の部活休みが始まった。

 と言っても、休みなのは吹奏楽部だけで、新聞部に関しては自分たちだけでの活動のため、昼休みはいつも通りPC室だった。


 6人で昼食を取りながら、たわいもない話をして、次の取材と言う名の遊びに行く予定を立てる。先週は取材でテニス部に同行したし、その前は演劇部について行った。

「試験が終わったら、吹奏楽部の取材になる。だから、3人以外で割り振りするよ。演奏会あるんだよな?来月頭に。」

 そう夏樹が話始めた。いつも新聞部の活動の際はみんなでいることが多かったため、3人だけで行われる打合せは新鮮だった。



「柊也。間に合ってるか?」

 いきなり話題が変わった。今まで静かにパソコンを見つめていた秋月だった。

柊也が伏せっていた机から起き上がりこちらを見る。

「お前まさか、間に合ってないのか!?」

 いきなり夏樹が立ち上がり、端にいた柊也の所へ歩いていく。

「どうしたの?何?」

「いや、こいつ、試験範囲まで課題終わってないみたいだ。」

 再度振り返ると秋月は再びパソコンに向かっていた。

そんな中、ニコニコ笑う柊也は「みんな、協力してくださーい」とヘラヘラと笑いながら一瞬だけ緊張したその場を和ませた。


「こいつ、遅刻ばっかりだろ?そのぶんの課題が終わってないと、試験後に出る成績が表示されないんだよ、要は欠課扱い。だから、こいつは試験前に課題が終わっているのは絶対で、それから試験勉強になる。だから、今からって絶対的に時間が足りない…よな?柊也。」

 目の前で手を合わせる柊也は「ご協力お願い致します」と5人に頭を深々と下げた。


 その日の放課後から始まった自家製の補講は、夏樹を先生役に授業のおさらいが中心となった。

 それから数日の休み時間を課題に費やし、そこにも夏樹が柊也に付きっきりになってはいたが、3日もかからず何とか課題を終わらせ、やっと本格的な試験勉強が始まった。


 実は最近知ったことだが、新聞部というのはクラスの中で頭のいい順に上から3人を抜いて部活にしたようなものだった。夏樹、森岡、秋月。ヒナちゃんは上ではないが、森岡がどうしてもと誘い、柊也はそのヒナちゃんが連れて来たそうだ。そして、秋月が新聞部に入ったのは一番最後、雪が降る時分だったそうだ。


 雨でジメジメとする教室で始まった夏樹先生の補講。近くのコンビニで買って来たお菓子をたくさん並べて、スナック菓子を食べる音に気が散り夏樹が怒りだす。

 そんな夏樹を柊也とヒナちゃんが大笑いして、怒ろうとする夏樹を森岡がなだめて。秋月がそれを少し離れたところから静かに見守っていて。この時間に来て2ヶ月がたって、このメンバーでいることが多くなり、自分が一体何のためにここに来たのかを忘れるときが多くなった。自分の高校時代と比べたりなんかもした。二度目とはいえ、こんなにも居心地の良い場所に、少しこの時代を過ごした先輩が羨ましくなった。



 その後で知った話。

 無事に中間考査を欠課ナシで終われた柊也だが、実は1年の頃からずっとこの考査1週間前の危機感を乗り越えているそうだ。そのたびに新聞部メンバーが手を貸していた。柊也の課題の進捗状況は、秋月にはお見通しのようだ。

 普通に生きることは、案外難しいのかもしれない。


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