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好い君  作者: 青子
3/7


ーー訳がわからない。



ーーーほんとうに訳がわからない。



何故こうなってしまったのか、私は何かしてしまったのだろうか。それで訳のわからない場所に連れられて、こんな仕打ちをされてしまったのだろうか。

ファンタジーな空間とは裏腹に、心には、不安ばかりが募った。



「ほんとうに訳がわからない。‥‥これからどうしたらいいんだろう。何処にいけばいいの。」



考えても何も答えはでてこない。知らない土地にいきなり現れたのだ。答えなんであるはずもない。

しかし1人悶々と考えることしか今の私にはできなかった。心臓がバクバクと音を立てる。息苦しくて仕方がない。

しかし歩みは止めない。止めて仕舞えば、諦めたのと同じ。今を諦めてしまったらそれこそ生死に直結する。こんなところで諦めるつもりは無かった。

あてもなく歩き続けていくらかの時間がたった。景色は変わらずに石畳が続くだけだし、やはりキラキラとした魔法のようなものが、長さ30センチくらいの棒の端からは見受けられる。

しかし、わたしはまだこんなところで野垂れ死ぬわけにはいかない。帰らないと。


そうだ、裏路地からもう出てしまおう。こちらから見える人々は、見慣れた黄色い肌の人種とは全く違う。いわゆる白人種の人たちばかりだ。ここがどんなところかもわからない。昔の地球のように、違う肌の色をしていれば差別を受けるかもしれない。もっと酷い扱いだってありえる。それでももう出て行く他にいい案が思いつかない。


私は大通りへと歩き出した。裏路地よりは太陽が眩しく照らし、少しだけ心を落ち着かせた。

フラフラと左右を彷徨う私を変に思うのか、はたまたこの格好や外見が珍しいのか、周りの人々の視線はジロジロと私を探るようだった。

あたりを観察しながら歩いていると、人々はやはり魔法使いのそれだった。映画で見たことのある宝石がついた枝木のようなものから、キラキラと何かを出して、その先のものが浮いたり、はたまた色が変わったりしている。

何か夢を見ているような気分だ。

やはり、人種だって私より身長が高い人ばかりで、肌は白い人が多い。しかし少し歩いていると、幸運にも私のようなアジア人(ここではアジアなどあるのかさえわからないが)も何人か見つけた。やはり少数派のようであるが、同じ見た目の人がいることに少し安堵の息を吐いた。

1時間ほど辺りを捜索したが、やはり私の元いた日本という国に繋がりそうなものはなに一つなかった。文字でさて英語なのかアラビア語なのか、判別もつかないヘンテコな文字だ。

しかしながら、いい収穫もあった。あの変な白い布集団と同じような布を見つけたのだ。もちろん、薄汚れて穴が開いてしまっているところもたくさんあり、何だか変な臭いもする。それでも少しでも周囲に溶け込めるこのボロ切れが、クタクタで棒みたいな足と引き換えに得た今一番の収穫であるといえるだろう。


少しして、ひらけた場所に出た。行き止まりだろうか。まだまだ泣くわけにはいかない。

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