希望を求めて
街の外まで逃げて来たルージュ達、ヨルムは負傷して万全の状態ではない、しかし一旦家まで逃げればレムリアは騒ぎになり守備を固める可能性がある、ルージュは悩みそして決断する、それが正解なのかはまだ先の事……。
「傷は大丈夫……ヨルム君」
ルージュが心配そうに見つめると、ヨルムは肩を回してみせる。
「こんなのかすり傷だ! 心配いらねぇ」
しかしヨルムの肩から血が流れている、それを見たルージュが覚悟を決める。
「わかった、ヨルム君は私の中にいて私に考えがある」
真剣な顔でヨルムを真っ直ぐに見つめるとヨルムがその考えを聞く。
「ルージュ……わかったまずその考えを聞かせてくれ」
「うん! まずブレンディングをしてみよう」
それを聞いたヨルムは驚いた顔になる。
「前に言ったよな、それは本当にピンチになった時に使うって、強大な力には人が集まる、それは憎しみをためる可能性が高くなるから慎重に考えなければいけない」
「それが今だよ! これをやめればもうチャンスが無くなるかもしれないから」
ルージュが必死に訴えるとヨルムがため息をつきこう聞く。
「こうなるともう止まらないんだろ、ただひとつ約束してくれもし憎しみをためるような事が起きればすぐに逃げる事、魔力石はどうにかなるがルージュはどうにもならない、俺はルージュを守りたい」
そう言われたルージュは頷き更に続きを言う。
「わかった約束するだから続きを聞いて、前に言ってた影の軍団を召喚して騒動を起こすの」
するとヨルムははっとした顔する。
「そうか! そうすれば軍はそっちに注目がいく、そのスキに魔力石を探せばいいのか」
「そうだよ、だからブレンディングしてヨルム君」
ヨルムは少しだけ考えてそしてこう答える。
「……わかった、でもさっきの約束は忘れないでくれ」
「うん! ならいくよヨルム君」
そして二人は手を繋ぎ叫ぶ。
「ブレンディング!」
するとヨルムの体はルージュと融合しルージュの戦闘服が黒く変化する。
「成功……なの」
(ああ成功だ、これで魔王の魔力を使う事が出来る)
頭の中からヨルムの声が聞こえると魔力の確認をする。
「本当だ凄い魔力を感じる」
(よし、なら次は召喚魔法だ、俺の声に合わせて詠唱を唱えろ)
ルージュは頷き右手を前に出す。
「魔王ルージュが命ずる、古のガルド兵達よ我が声に応えよ!」
唱え終わるとルージュの周りに魔法陣が現れてそこから影の軍団が姿を現す。
「これが……旧ガルド王国の兵達なの?」
(そうだ、ルージュの命令なら何でもする)
そう聞いたルージュは決意をしてこう命令する。
「なら……魔王ルージュが命じます、レムリアの前で騒ぎを起こして下さい、絶対に人を殺したりコアを奪う事は禁じます」
そうすると影の軍団はゆっくりと動き出す。
(はは、ルージュらしい命令だな、まあこれでスキを見ていけばいいだろう)
「うん……それじゃあ行こうレムリアに」
そしてまたレムリアに戻っていくルージュだった……一方レムリアでは大変な騒ぎになっていた。
「な、謎の黒い軍団がレムリアに向かってきています!」
「なんだとー くっ、まず住民をシェルターに避難させろー」
慌ててる軍人達その中にローゼ達の姿もあった。
「シルヴィア! 私達も確認しに行こう」
「そうだな、謎では対処の仕方もわからぬからな」
「私はここに残っているよ何かあれば連絡出来るように」
そしてローゼとシルヴィアが確認しに行くと街の近くまで接近していた。
「あれが……黒い軍団」
ローゼが見ているとシルヴィアが驚いた表情をする。
「ありえぬ! あの旗印は旧ガルド王国の物だ、何故今ここにあるのだ」
「ガルド王国って昔に滅びた国だよね、どうして」
二人は悩んでいると通信機が鳴る。
「あっ、シルヴィア今討伐の部隊が編成されて、グレイス少佐の部隊に入るみたいだから一度戻ってきて」
「わかった、今戻る」
通信を切りシルヴィアとローゼは軍の本部へと戻っていった。
「シャーロよ、グレイス少佐はどこににいる」
「あっ、シルヴィアここの部屋の中にいるよ」
そしてシルヴィアはノックをして部屋に入っていく。
「失礼します少佐、私はシルヴィア・セフィルスと言います、この作戦に参加すると聞いて参上いたしました」
シルヴィアは敬礼しグレイスに敬意をみせる。
「ああよろしく頼む、それでお前の所はこれが初めての事件か」
「はい! 軍学校を卒業して初めての事件です」
硬く真面目に話すシルヴィアに、グレイスがこう言う。
「まあお前の家からして俺の方が下みたいなものだからな、そう硬く話すな」
「それでも上官なので……やはり父から何かあったのですか」
シルヴィアの顔が少し変わる、シルヴィアの父はグレイスよりも上の階級である。
「はは、娘に手柄を作れだとよ、まあ俺は家とかなんだは気にしない、実力で手柄を作れいいな」
「はい! ありがとうございます、それでは失礼します」
シルヴィアが帰ろうとした時声をかけられる。
「ちゃんと待て、ローゼはちゃんとやっているのか?」
「それはきっと今回の事件で見れると思います、説明するよりご覧になった方がわかりますよ」
そう言ってシルヴィアは部屋を出る。
「言うじゃねーかなら見せてもらうぞ、作戦決行だ」
そしてグレイスは外出て部隊の指揮をとる。
「よし作戦を言う、敵はレムリアの正面からあまり動いていない、他の部隊はまず俺らで様子を見ているだろうが関係ねぇ、この部隊だけで事件を解決するいくぞー」
「おー!」
全員の声が響くなかローゼは安心していた。
、
「良かった、久しぶりに元気なお父さんを見れたよ」
「どう言う事だローゼよ」
シルヴィアが疑問を抱くとローゼがこう答える。
「うん……お父さんね最近何かを調べてばかりだったの、だから現場働いているのは久しぶりなんだ」
「差し支えないのなら何を調べていたのか聞いて良いか」
こう聞かれたローゼは少し考えながらもちゃんと答える。
「私も詳しい事はわからないけどパソコンの履歴とか図書館の貸し出しを見ると魔王の事を調べているみたい」
「魔王? 何かの歴史か伝説でも調べているのか」
そう聞かれると困った顔するローゼ。
「ごめん、そこまではわからない聞いたこと……ないから」
ローゼがうつむいてしまうとシルヴィアか申し訳なさそうにこう言う。
「すまない、家の事情をそこまで聞くものではないな」
「大丈夫だよ、だから今日は嬉しいし、お父さんのためにも頑張りたい」
シルヴィアは慌てて謝るが何を思い出す。
「そう言えば、ガルド王国にも魔王がいたな」
「どう言う事?」
ローゼが聞くと続けてシルヴィアは答える。
「イザーク・ヨルムガルドと言う王が魔王の異名を持っていたのだ、残忍な戦い方でその名が付けられた」
「そうなんだ、なら私も調べてみようかな」
「ねぇ二人共、作戦始まるよ」
シャーロに注意されると話しをやめて街の外に出ると黒い軍団は動かずにこちらを見続けているだけだ。
「何が目的かはわからないが、やるしかねぇぞいくぞー」
「おー!」
すると一斉に部隊が動き出し戦いが始まる。
「はぁぁぁぁぁー」
ローゼ達も戦うが思いの外手応えがない。
「ねぇシルヴィア、何かおかしくない」
「ああ私もそう思っていた、こいつらには人を殺す気もなければ傷つける事も躊躇っている」
「と言う事は他に目的があるって事?」
三人が話しているとシルヴィアがはっとした顔をする。
「そうか! これは陽動だ目的は街の中にある、そして私達は昼間にあやしい二人を知っている」
そう言うとシルヴィアはグレイスの所に走り出す。
「ちょっと待ってよシルヴィアー」
「すいませんグレイス少佐、少しお話があります」
持ち場を離れても駆けつけたシルヴィアの判断をグレイスは了承し話しを聞く。
「どうしたんだ、何かあったのか」
「はい! こいつらは陽動の可能性があります、なので私達に街の中の調査を命じて下さい」
シルヴィアが必死に説明するとグレイスは少し考える。
「そこまで言うとは……わかった、シルヴィア・ローゼ・シャーロお前らは街の中の調査命ずる。」
「お父さん! ありがとう」
ローゼは喜ぶがグレイスに注意される。
「こう言う時は少佐だろうが」
「この事件が終わったらちゃんと謝るから今はごめんなさい」
そう言うと三人は走り出し街の中に入っていく。
「どこににいるんだろうあの二人」
「わからぬ、たが探すしかない」
そして三人は探し続けるとドンと大きな音がする。
「なに? この音は」
シャーロが驚いた様子だが、シルヴィアは冷静に判断する。
「こっちか、いくぞ二人共」
そして音の鳴った方に向かうと無理やり開けられた地下へと続く階段があった。
「この階段はいったい何?」
「多分、昔の王族が使っていたシェルターみたいな物だろう」
「そうゆう話しは後にしよう、先に進むよ」
ローゼを先頭に進んで行くと、突然遠くに光りが見える。
「あの光りは……行ってみよう」
ローゼは少し戸惑いましたが、先へ進むと一つの部屋の前に止まる。
「ここの部屋だよね、開けるよ」
そしてローゼは扉を開けると一人の少女がいた。
「やはりお前だったか、そこで何をしている」
「探し物をしていただけ……もう見つかったからそこを通してくれませんか」
この少女はやはりルージュだった、手には魔力石が入った箱を持っている。
「あなたに何か事情があるかもしれないけど、皆に迷惑かけてまでしたら駄目だよ!」
「何か悩み事があれば私達で力になれるかもしれないから、お話聞かせてくれないかな」
ローゼとシャーロが説得するがルージュは首を横に振る。
「アームズを持っているって事は軍人さんだよね、なら捕まる訳にはいかない」
そしてルージュは剣を構える。
「やはりこうなるか……シャーロよこの部屋に結界をはれ、絶対に逃がすな」
「うん、わかった」
シャーロは結界魔法を唱えてルージュを逃げれないようにする。
「ローゼはシャーロを守っていろ、この子の相手は私がする」
「シルヴィア……わかったよ、何かあれば私も戦うよ」
シルヴィアも剣を構えルージュと対峙する。
「いくぞ、はぁぁぁぁ」
シルヴィアが前に出ていき戦闘が始まる。
(この部屋じゃ大魔法は使えない……私の剣の技術でなんとかしないと)
ルージュはそう思うと魔力を身体能力アップに使う。
(技術ではあの人の方が上手いけど、魔力量で押す)
二人は一進一退の攻防を繰り広げらる。
「はぁはぁ、お前がやっている事は立派な犯罪だ、子供だからといって許されるものではない」
そう言われたルージュの表情が変わり、少し怒った様子だ。
「だったら……軍は何をしても許されるの!」
「どう言う意味だ」
「私は軍に裏切られたから……あなた達の言葉はもう信じない」
ルージュは力を込めて剣を振り下ろすとシルヴィアが吹き飛ばされる。
「くっ、こいつの魔力量はいったいどうなっているのだ」
「シルヴィア! 大丈夫、私も戦うよ」
ローゼはアストレアを構えるがシルヴィアに止められる。
「来るな! もう一人の男がいない、消えてシャーロを狙っているに違いない、そこにいろ」
そう言われてローゼは下がっていく。
(ヨルム君、この人強いよ今の私の力じゃ倒せない)
ルージュはブレンディング中のヨルムに話しかける。
(ルージュ……わかった俺に任せろ)
(何をする気なの)
ルージュが聞くとヨルムがこう答える。
(ルージュはそのまま戦っていろ、俺がタイミングを見て解除して切りかかる)
(……殺さないでね)
(わかっている)
そう言うとルージュは再び剣を構える。
「いくよ、はぁぁぁぁぁー」
「今回で決めるぞ!」
二人は剣を交えている最中にルージュが動き出す。
「今だよ、ヨルム君ブレンディング解除!」
「よっしゃー、もらったー」
不意を突かれたシルヴィアは腕を切られてしまう。
「くっ、しまった」
腕を押さえるが血が流れてくる。
「シルヴィア! 今回復するから」
シャーロが前に出ようとするとヨルムがそうさせない。
「させねぇーよ、闇の力よ爆ぜよ、ダークネスボム」
黒い球体が二人の前で爆発する。
「きゃああああ」
二人は吹き飛ばされてしまうとはられていた結界が解かれる。
「本当はこんな作戦したくないけど、あなた達は凄く強かったから……」
「おいルージュ、さっさと逃げるぞ」
そう言うと二人は逃げていった。
「大丈夫シルヴィア、回復するよ」
シャーロが立ち上がりシルヴィアに回復魔法を唱える。
「すまない、ローゼも無事か」
「うん大丈夫だよ」
ローゼも立ち上がる。
「一旦本部へ戻るぞ、グレイス少佐に報告だ」
そして三人は戻りグレイスにルージュの事を話す。
「ルージュだと……あいつ何をしているんだ!」
グレイスは机をドンと叩くと、その様子を見たローゼが聞く。
「お父さん……あの子の事知っているの」
我に返ったグレイスは困り顔になる。
「何も見てなかった事しろ……と言ってもお前らには無理なんだろうな」
「お願いお父さん、教えてあの子の事を」
グレイスはハァーとため息をつきルージュと出会った事そして研究所の事を話す。
「そんな事があったなんて」
三人は驚き言葉を失っていた。
「俺はその研究所でやばい実験をしてたと睨んでいるが証拠がない、それに上層部が絡むと無闇に動けない」
「だからあの子軍に裏切られたって言ってたんだ……」
三人はうつ向いているとグレイスがこう言う。
「だからお前らは何もするな、危ない橋は俺が渡る」
「けど……何か手伝える事があったらするよ」
「うむ、我らがルージュと合うかもしれぬからな」
「うん!私も頑張る!」
三人は決意する。
「わかったよ、何かわかれば報告するから今日は帰って休め、これは命令だ」
グレイスは笑って命令すると三人もされに従う。
「うんわかった、お父さんもほどほどにね」
「おう! ありがとな」
そして三人は自分の家へと帰っていった。
次話に続きます。